共同通信社杯 春一番
 
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優勝者の横顔
 
 
 


 第24回共同通信社杯春一番が徳島県の小松島競輪場で開催される。今年もお馴染みの最強トリオの連係で輪界をリードしている武田豊樹率いる関東勢が優勢だが、底知れぬパワーを秘めた4回転モンスター・山崎芳仁率いる北日本勢の圧勝劇も十分で、層の厚さで巻き返しを狙う中部勢の台頭や、2月・西王座戦で改めて絆の強さを見せつけた村上義弘率いる近畿勢の一発も侮れない。


鉄壁の関東ラインが優勝争いをリードする!
秋本番に続く山崎芳仁の圧勝劇も期待が十分だ!
 
武田豊樹選手
 平原康多、神山雄一郎との鉄壁ラインで優勝を狙うのが武田豊樹だ。グランプリ09では微差で2着に敗れたが、2月・東王座戦では平原の先行に乗って優勝、最大のライバルである山崎芳仁や海老根恵太の巻き返しを許さない関東ラインの強さを改めて見せつけた。
 もちろん平原との連係がなくても武田の評価が下がることはないし、優勝の最有力候補であることに変わりはない。
 1月・熊本記念を捲りで優勝、東王座戦の勝ち上がりも捲りと逃げて1着、4着と自力脚は好調で、今度は自分がラインの先頭で戦って優勝をもぎとりたいという気持ちもあるはずで、昨年の高松宮記念杯決勝のように、武田の仕掛けに乗って平原が優勝というシーンもあるかもしれない。
 
山崎芳仁選手
 山崎芳仁はグランプリ09に続いて東王座戦の決勝でも関東ラインの仕掛けに後塵を踏んで不発と残念な結果に終わっている。
 それでも東王座戦の初日予選では、最終バック8番手の展開から上がり10秒9の捲りで圧勝しており、元祖4回転男のパワーには底知れぬ凄さがある。
 昨年の共同通信社杯秋本番を完全優勝で圧勝しているのは記憶に新しいところで、決勝は7番手から関東ラインの先行を捲って上がり10秒7の驚異的なタイムを叩きだしており、秋本番に続いて今開催の春一番でも山崎の圧勝劇が十分に期待できる。
 
海老根恵太選手
 グランプリ09覇者の海老根恵太は今年は思うよな成績が残せておらず、連覇が懸かっていた東王座戦の決勝も6着に敗れている。
 しかし、千葉の海老根にとっては今年一番の目標は3月・松戸での日本選手権であり、年明けからそこにすべての照準を合わせて練習を積み重ねてきたと考えれば、その過程での不満足な成績も納得できないものではない。
 本稿執筆時にはまだ日本選手権の結果はわからないが、今年の海老根の本格始動は日本選手権からであり、続く今開催でも本来の力強い走りをきっと見せてくれるだろう。
 

近畿トリオの結束から市田佳寿浩が差し脚を伸ばす!
永井清史が先行を基本に総力戦で勝ち上がる
 
永井清史選手
 S級S班が6名と層の厚さで他地区を圧倒している中部勢だが、2月・西王座戦では層の厚さがアダとなり予選では戦いづらい組み合わせが多くなって、決勝進出は山口幸二ひとりと寂しい結果に終わってしまった。
 今開催も西王座戦と同様に自動番組編成方式だが、西王座戦のように追い込み型が偏ったような番組に仮になったとしても、同じテツを踏まないようにしっかり連係して勝ち上がってくることだろう。
 永井清史は昨年の春一番でビッグレース初優勝を飾ったのをきっかけに大きく成長を遂げ、GIでも決勝の常連となり、2年連続のグランプリ出場を果たした。
 今年の永井はこれまでの先行一本から捲りや捌きも多用する競走スタイルへと変えてきており、1月・和歌山記念では豪快な捲りを決めて待望の記念初優勝を達成している。
 春一番連覇が懸かる今開催も基本は先行に置きながら、番組や展開に応じた総力戦で勝ち上がりを目指していくだろう。
 
市田佳寿浩選手
 鉄壁の関東ラインと同様に、S級S班トリオの強い絆で西王座戦を制したのが近畿ラインだ。
 ラインの先導役となる村上義弘は1月・京都向日町記念で弟の村上博幸とワンツーを決めた会心の走りで地元優勝を達成。弟の博幸は持ち味の鋭い差し脚と捌きにさらに磨きをかけて兄をしっかり援護する。
 そして近畿ラインでは3番手回りが多いが、前を任せる村上兄弟以上に近況好調なのが市田佳寿浩だ。
 2月・奈良記念では目標の稲垣裕之の番手を奪われたが、捲ってきた谷津田将吾の番手を奪い、ゴール前で差し切って優勝。西王座戦では村上義弘が一気のカマシで主導権を握ると、直線鋭く伸びて2度目のビッグ優勝を飾っており、今開催も近畿ラインからの直線強襲での優勝が狙える。
 
荒井崇博選手
 九州は今年はS級S班が不在だが、S級S班にも負けない活躍ぶりを見せているのが荒井崇博だ。今年から3・86のギアを使いはじめて得意の捲りのスピードに本来のキレが戻ってきており、1月・岸和田FI、2月・川崎FIを完全優勝、間にはさんだ大宮記念の準決勝Aでも豪快な捲りを決めている。
 2月・豊橋FIでの落車の影響がやや気になるが、近況の調子とスピードがあれば悲願のビッグレース初優勝が期待できるだろう。


番組は選考順位と着順によって自動的に編成される
推薦枠でビッグ初出場となる若手の活躍に期待
 
 共同通信社杯春一番は昨年度から自動番組編成方式を全面的に導入し、勝ち上がり戦の番組は選考順位や競走の着位により自動的に決定される。初日に特選などのシード番組はなく、12個レースすべてが一次予選で、番組編成は選考順位によって振り分けられる。
 2日目は一次予選で2着までの24名と3着の中で選考順位最上位者の3名が二次予選Aに、3着の残り9名と4着と5着に入った24名と6着の中で選考順位上位者の3名が二次予選Bに出走するが、この番組編成も自動振り分けだ。
 3日目の準決勝3個レースも二次予選の着順によって自動的に振り分けられて番組が決定するが、二次予選Aの5着までの15名と二次予選Bの3着までの12名が準決勝に勝ち上がることができる。
 また昨年と同様に今開催もスポンサーの共同通信社杯の推薦出場枠があり、京都・93期の西谷岳文、茨城・93期の今井裕介、96期・愛知の深谷知広の3人が選抜されていて、3人ともビッグ初出場となる。
 昨年の大会でも3名の推薦選手がいて、牛山貴広は一次予選で敗れたが敗者戦で1着1回、2着1回と健闘、大塚健一郎は一次予選が2着、二次予選Aが3着で準決勝まで勝ち上がっている。
 今開催も2月・玉野FIでS級初優勝を飾った深谷や、スケート出身でポスト武田豊樹の有力候補である西谷と今井の活躍が期待できる。

西谷岳文選手 今井裕介選手 深谷知広選手


共同通信社杯の思い出
永井清史がビッグ初優勝!
 石丸寛之―井上昌己、伏見俊昭―齋藤登志信、平原康多―武田豊樹、浅井康太―永井清史―坂上樹大の並びで周回。赤板から浅井が上昇して前団を抑える。平原が一旦は中団に入るが、すかさず伏見が追い上げて4番手を確保する。浅井が打鐘から先行態勢に入ると一本棒の状態となり、バック手前から永井が番手捲りを打って優勝、坂上が2着、伏見が3着に入った。

09年4月19日決勝(佐世保)
09年4月19日決勝(佐世保)

すぐ隣が太平洋で風の影響を受けやすい
ホーム追い風に乗れば早めの仕掛けで押し切れる
 走路は軽くてクセのないオーソドックスな400バンクだが、競輪場のすぐ隣に太平洋の青い海か広がっているので、海風の影響を無視することはできない。冬場はバック向かい風、夏場はバック追い風の日が多く、バック追い風の日は捲りが決まりやすい。
 そこで06年4月に開催されたふるさとダービーの決まり手を見てみると、全44レースのうち1着は逃げが6回、捲りが12回、差しが26回、2着は逃げが4回、捲りが5回、差しが17回、マークが20回となっている。06年の時は天候にはあまり恵まれず、とくに3日目の準決勝は強風と激しい雨の中で行われ、有力な自力型が次々と脱落する波乱の結果となっている。
 4月頃はまだバック向かい風が多く、先行選手はホーム過ぎから追い風に乗って3コーナーを乗り切る気持ちで仕掛けていくと、捲りを食らう心配は少なくなる。
 逆に捲りは1センターから仕掛けて3コーナーまでに捲りきるか、少なくとも半車身くらいは出ていなと不発になりやすい。

06年ふるさとダービー小松島の決勝ゴール
06年ふるさとダービー小松島の決勝ゴール

周長は400m、最大カントは29度46分27秒、見なし直線距離は55.5m。直線の長さは標準的だが、かつては500バンクだったものを改修したのでカントがやや緩い。2センターの中バンクからやや内側寄りに伸びるコースがあり、2センターから仕掛けると、5、6番手からでも1着に突き抜けることができる。