『第76回高松宮記念杯競輪・第3回パールカップ(GI)レポート』 5日目編

配信日:6月21日

 伝統の東西対抗。岸和田競輪場を舞台に開催されている大阪・関西万博協賛「第76回高松宮記念杯競輪(GI)」は、6月21日に5日目が行われた。東西に分かれ、それぞれの準決で決勝進出をかけて激しいバトルが展開された。西日本では、脇本雄太が4連勝、地元の古性優作も白星で優出。東日本は補欠から繰り上がった末木浩二が1着で、好配当が飛び出した。6日間のシリーズもいよいよ大詰め、6月22日の最終日には、シリーズを勝ち上がった東西の雄が決勝で激突。優勝賞金5090万円(副賞含む)を巡り、白熱のバトルを繰り広げる。
 GIシリーズ最終日の6月22日も、岸和田競輪場では、みなさまのご来場をお待ちしております。競泳の瀬戸大也選手のトークショー、元プロ野球選手の糸井嘉男さんのトークショー、「日本将棋連盟」トークショー、東西対抗ガチンコ予想会、岸和田グルメフェスティバル、選手会大阪支部ふれあいコーナーなどが予定されています。テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<5R>

渡部幸訓選手
渡部幸訓選手
 6番手から動いた鈴木竜士が先に切って、関東勢に続いた渡部幸訓(写真)が3番手で山口拳矢と併走になる。スローペースのまま打鐘を通過して、3コーナー過ぎに山口がインを突いて主導権を奪う。小川勇介は付け切れず、番手に鈴木が収まり、渡部は5番手。そのまま山口が駆けるが、7番手の中釜章成が最終ホームから踏み上げる。村田雅一がわずかに遅れて、渡部は俊敏に中釜にスイッチ。村田と守澤太志でもつれて、2コーナー過ぎにまくり切った中釜を渡部が追走。ゴール前で追い込んだ渡部が1着。
 「守澤にはいつもお世話になっているんですけど、今回は自分の方がちょっと点数があるので付いてもらう形になりました。ほかのラインがS取り早いので、後ろからの作戦も組んでいた。先に鈴木君が切ってくれて、その分休めたのでそこはラッキーでした。一度、自分で切っても良かったけど、泳がされたところ中釜君に行かれてもっていうのがあった。そのあとは結果的にもう1つ前(のライン)にいるところを後手になってしまった。ニュートラルに入ったところで、中釜君が来てくれた。タイミング的にあそこを逃したらないんで必死でした。中釜君をさらにまくる脚はないので休ませてもらった。今日(5日目)は展開に助けられたけど、そのなかで落ち着いてやりたいことはできた」
 持ち前のダッシュを生かした中釜章成は、最終ホームからの仕掛けで前団をのみ込んだ。
 「(山口がインから主導権を取って)そこは余裕があったんで無理していかなくても、行ける自信はあった。(いま使っているフレームは)9車立てだとめっちゃいい。流れのない7車立ては立ち上げるのにキツかった。それに(前々回)の函館は寒かったし、宇都宮も…。(地元の岸和田は)お客さんが多いのでたぎりますね」

<7R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 南関勢が前団。道場晃規が佐々木悠葵を突っ張り、前団の隊列が短くなったところを赤板2コーナー手前から取鳥雄吾が踏み込む。打鐘3コーナーで取鳥が主導権を握り、松浦悠士(写真)の追走。道場が3番手に収まり、三谷将太は6番手で最終ホームを通過する。取鳥がリズム良く駆けて、外に持ち出した道場を松浦がバックでけん制。道場は不発。三谷のまくりも、松浦がギリギリまで引きつけて追い込んで1着。
 「あれだけ(取鳥)雄吾が頑張ってくれたので、僕が1着だけじゃダメ。なんとか(ワンツーが)決まって良かった。雄吾はいいスピードだった。ダッシュも良かったし、スムーズに加速していった。あの掛かりは、すごく頼もしかった。(三谷)将太さんが外に来てくれたポイントが大きかった。自分は初日に(太田)海也のダッシュに離れて、体の使い方を変えて臨んだら、それが失敗した。(3走目の)昨日はコースを間違えただけで、感触自体は良かった。今日(4走目)が感触のいいまま来られたのが大きい。昨日は収穫があったし、それが生きた。昨日あっての今日だし、(取鳥と)いい連係ができた」
 4日目に続いてのタッグとなった松浦とのワンツーを先行策で結実させた取鳥雄吾は、二次予選をふまえてこう振り返る。
 「(前受けの道場晃規が)突っ張りそうな雰囲気だったので、立ち遅れないようにと思っていました。昨日の夜ですね、太田(海也)君がいいヒントをくれて、それを実戦でやってみようと。そういうテーマが自分にはあった。(乗車フォームを)意識しながらでした。(仕掛けて)行きやすい展開になったし、あとは松浦さんに丸投げだった。それでもワンツーができたんで悪くない。ただ、負け戦でしか出せない自分の弱さもある」

<9R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 太田海也の上昇に合わせて、5番手の松本貴治も動く。前受けの山田庸平が松本を突っ張り、そこを太田が赤板2コーナー過ぎに叩く。車間が空いた清水裕友が打鐘過ぎに追いついて、山田は3番手、松本は5番手になる。一本棒の8番手になった脇本雄太(写真)は、前との車間が空く。先行態勢の太田は後続の隊列を確認して、最終ホームからペースアップ。松本が2コーナーでまくりを打ち、脇本はバック過ぎに踏み込む。清水が松本を止めて、小倉竜二は清水のインを切り込む。小倉、松本に挟まれながらも清水が立て直し、外を強襲した脇本が迫り直線へ。スピードの違いでまくり切った脇本が1着。4連勝で優出を果たした。
 「(周回中の位置取りは)最悪のプランだけは、避けるっていう感じでした。(太田)海也が前で自分が押さえにいって突っ張られるっていうのですね。それだけを避ければ、あとは臨機応変にと思っていた。(赤板過ぎの山田、松本の踏み合いは)あの辺は自分に展開が向いているなって、中団争いをするつもりはなかったんで。ただ、道中が思ったより早くて、その上を仕掛けることができなかったのが反省です。(8番手になって)かなり焦ってました。ああいう並びなった以上、自信のあるところからと。最後まで抜けるかどうかわからなかったくらいキツかった」
 先行策から2着に粘り込んだ太田海也は、結果待ちのラインの清水を気づかいながら振り返る。
 「(先頭に出るまでは)中団から動いてきた選手がいるのを確認したけど、踏むのをやめないで前に出ようと。ジャン前は(清水)裕友さんが追いかけてくれているのもわかった。でも、2年前とかデビューしてから全然、成長してないなって感じられるレースでした。裕友さんのおかげで2着に残れた。もっと強い脚力があれば、脇本さんにも来られず(ワンツーで結果待ちではなく)裕友さんも決勝が確定していたと思う。脇本さんにいかれてしまったのは脚力不足です」

<10R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 森田優弥が赤板過ぎに出ると、前受けの深谷知広(写真)は眞杉匠をすんなり送り出して早めに後方に下げる。4番手の眞杉が、深谷を警戒しながら前との車間を空けて打鐘を迎える。深谷は、森田のペースが上がる前の2センターから巻き返す。車間を詰める勢いで眞杉も、深谷の仕掛けに反応。森田も合わせて駆ける。最終ホームでは深谷、眞杉で並んだが、恩田淳平が眞杉をブロック。眞杉のスピードが鈍り、深谷が1センター過ぎに出る。南関3車が出切り、4番手に森田でバックを通過。5番手から踏み込む眞杉は伸びない。番手、3番手から岩本俊介、松谷秀幸が迫るも、深谷が押し切った。
 「前から突っ張るも、引くのも流れのなかでしっかりでした。いつもはワンテンポ早く行くんですけど、そこを見てためて行けたのが良かったです。(眞杉が中団から踏み込んできたが)そこまで踏み込んでいたら、自分はいくだけなんで後ろに任せていました。最近にないいい掛かりだった。(最終4コーナーからも)しっかり踏めていたと思います」
 南関ラインで上位を独占。3番手の松谷秀幸は、最後のハンドル投げで外から岩本を交わして決勝のキップをつかんだ。
 「自分は3番手で失敗しないように。からまれるなら自分のところかなって思っていた。来るなら森田君だと思っていた。(深谷は)もうジャンで行く気配があったんで、踏み出しに集中していました。(最終)4コーナーまで待って内か外か思いっきり踏むしかないと。外を踏んで抜けなければ仕方ないと。そんなに伸びている感じはしなかったんですけどね。ウィナーズカップの準決で浅井(康太)君にハンドル投げで負けた。師匠(佐々木龍也)にそういう紙一重のところが命取りになるって。ゴール前の必死さがないとダメって言われた。その成果が出ているのかなって思います」

<11R>

古性優作選手
古性優作選手
 6番手から上昇した犬伏湧也がタイミングを取って、赤板1センターで先頭に立つ。が、寺崎浩平の巻き返しが早い。中四国勢を追った単騎の園田匠を制して、前に踏み込む。打鐘手前でカマシ気味に出た寺崎に、古性優作(写真)が危なげなく続き、もう一人の単騎、荒井崇博まで出切る。4番手で立て直した犬伏は、4コーナーから反撃。寺崎は落ち着いて踏み上げて、犬伏を合わせる。最終2コーナーの古性のブロックで、犬伏が力尽きる。7番手からまくった皿屋豊を古性がけん制して直線。ゴール前で寺崎を差し切った古性が1着。
 「(寺崎が)本当に気持ちの入ったレースをしてくれて、助かっています。荒井さんが3番手と言ってくれなかったことで戦いやすくはなった。(荒井が)思いっ切り来たら止めに行くだけなので。寺崎君があれだけ動いてくれて、(別線が来たら)全部止めようと思っていたけど、それをする必要もないぐらい掛かっていた。それで余裕がなくて、寺崎君が強すぎた。寺崎君は味方ですけど、別で戦う可能性がゼロではない。対戦相手として戦う時に、後ろに付いていて自分との力の差を感じている。いまの段階だと助けてもらっている感じです」
 ちゅうちょすることなく積極策で力勝負に出た寺崎浩平が、内容の濃い走りを見せた。
 「しっかり長い距離を踏もうと思っていた。初手で荒井さんが後ろにいたので、流れを見てジャンで行ったら、付いてきてくれると思った。(最終)ホームでどっちが来てもいいと思っていましたし、犬伏君が来てしっかりと合わせてあとはどれくらい踏めるかでした。今日(5日目)はホームの向かい風がすごくて、余裕がなくてバタついてしまった。初日は得意のまくりが不発になって、岸和田は軽くて前が掛かるから後方のまくりは苦しい。しっかり先手を取れば逃げ残れることがわかって、長い距離をいって着も取れている。体調は悪くないし、逃げて決勝に残れているので内容は充実しています」

<12R>

末木浩二選手
末木浩二選手
 小林泰正ライン3番手の諸橋愛が、前受けの松井宏佑に併せ込んだまま周回を重ねる。赤板過ぎに小林が出て、末木浩二(写真)が続き、諸橋がドッキング。今度は4番手で松井と吉田拓矢が併走になる。ペースを握った小林は、中団併走をしり目にマイペース。打鐘を通過して4コーナーから踏み上げた小林の先行で最終周回。4番手の決着はつかず、松井、吉田の後ろを郡司浩平がキープ。1センター過ぎに吉田を張った松井がまくるが、吉田も外併走でこらえる。逃げる小林の番手の末木は、バック過ぎから前に踏み込む。末木に諸橋が続き、郡司は浮いた松井のインを進出。直線で猛襲した郡司を微差退けた末木が金星を挙げた。
 「(諸橋が松井に併せにいったのは、後ろから押さえにいって)突っ張られてしまったら、結局7番手になってライン全体で厳しいかなっていうのがあったと思う。(そのあと自分たちのラインが出て、松井と吉田で中団争いになって)すごく展開が向いた。(小林が)早めに駆けてくれて、(別線に)のみ込まれる前に踏ませてもらいました。ガムシャラに踏んでいたんで、(1着は)わからなかった。(補欠からの繰り上がりで)そんなに期待しないで臨んでいた。あんまり気負わずに、ラインで最低限の仕事はしようと。初日に落車して、万全ではないっていうのもあります」
 外の雨谷一樹をさばいて単独のポジションを確保していた郡司浩平だが、まだ余力のある松井から切り替えるわけにもいかず、苦しい選択を迫られた。
 「(周回中は)想定外ですね。ただ、ああいう展開になったので、(小林)泰正が切って、(松井は)せっかく前を取ったのに全部、引いてももったいないっていう判断だったと思います。(松井)宏佑も中団で負けないように頑張って踏んでいたので、自分も難しい判断だった。(最終)1センターくらいで(松井が踏み勝って)決まったかなって付いていったけど、(松井は)それまでに脚を削られていた。ヨシタク(吉田)も外にいたんで、その外に持ち出しても勝機はないなって。後ろに(和田)真久留もいたし、自分が早めに切り替えれば決まったかもしれない。今日(4走目)は余裕をもって回れたけど、判断だけが難しかった」