『第34回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 最終日編

配信日:10月26日

 ドームの前橋競輪場で開催された「第34回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」は、10月26日に最終日が行われた。S級S班3人をはじめ、地元の恩田淳平も優出をした決勝は、吉田拓矢が先行策。単騎で3番手を確保した嘉永泰斗がまくりで優勝。初めてのGIファイナルでV奪取して、優勝賞金4390万円(副賞含む)を獲得。年末に平塚で行われる「KEIRINグランプリ2025(GP)」の出場権を手に入れた。

決勝競走出場選手特別紹介
決勝競走出場選手特別紹介
決勝1番車古性優作選手
決勝1番車古性優作選手
決勝2番車吉田拓矢選手
決勝2番車吉田拓矢選手
決勝3番車清水裕友選手
決勝3番車清水裕友選手
決勝4番車小倉竜二選手
決勝4番車小倉竜二選手
決勝5番車嘉永泰斗選手
決勝5番車嘉永泰斗選手
決勝6番車恩田淳平選手
決勝6番車恩田淳平選手
決勝7番車松本貴治選手
決勝7番車松本貴治選手
決勝8番車河端朋之選手
決勝8番車河端朋之選手
決勝9番車犬伏湧也選手
決勝9番車犬伏湧也選手

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると、松本貴治が勢い良く飛び出して誘導員を追う。犬伏湧也-松本-小倉竜二の四国勢が前を固め、単騎の古性優作がこの後ろ。中団が清水裕友-河端朋之の中国勢。吉田拓矢-恩田淳平の関東勢が後攻めで、嘉永泰斗が最後方。
 青板1センターから犬伏が誘導員との車間を空けて後方の動きを気にするが、後方からゆっくりと上昇した吉田がバック過ぎに誘導員の後ろに入り、関東勢の後ろに嘉永、古性が続き、中国勢も切り替えたことで、犬伏は7番手まで車を下げる。吉田、清水が犬伏の動きを警戒するが、犬伏の巻き返しはなく、赤板1センターから吉田が一気にペースを上げて先行態勢に入る。最終ホームで5番手の清水が仕掛けるも、車の進みが鈍い。2コーナー手前から嘉永がまくり始めると、2センターで逃げる吉田をとらえて、4コーナーを先頭で回ると、後続をまったく寄せ付けずにGI初制覇。嘉永のまくりを追いかける古性と、吉田の先行に乗った恩田が4コーナーで激しくやり合うなか、バック8番手の松本が2センターで空いた内を突いて、直線も鋭く伸びて2着。恩田のけん制をしのいだ古性が3着。


<1R>

松村友和選手
松村友和選手
 前受けから山田諒も踏み上げるが、末木浩二が青板4コーナーで先頭に立ちペースを握る。7番手になった谷和也は、赤板から仕掛ける。打鐘手前で叩き切った谷に、松村友和(写真)、単騎の橋本強も続いて3車で出切る。末木は4番手に入るも車間が空いて最終周回。末木の余力を見極めて、宿口陽一が自力に転じる。外から宿口が迫るも、番手で好展開を生かした松村がGI初勝利を挙げた。
 「(GI初勝利は)めっちゃ、ホッとしています。谷君がヤル気だった。2場所前の松阪で(初日に)一緒だったけど、僕が(2位入線も失格で)失敗して決められなかった。(単騎の橋本が真後ろにいたんで)気持ち悪かった。空けたらすくわれるかなって。それでしんどかった。(1着で)結果は良かったけど、まだまだ修正するところはある。南(修二)、古性(優作)にもアドバイスをもらったんで、自分ももっとイケると思う。(同期の南が共同通信社杯を優勝した)影響はすごく大きいし、すごい刺激をもらっている」
 谷のカマシに4番手で車間が空いた末木は、なかなか詰まらない。宿口陽一は、最終2コーナーからまくりに出て2着。
 「(末木は)後ろから押さえて、切って飛び付くってやってくれた。あれで追いついてくれれば良かった。けど、追いついていく雰囲気がなくて、(後ろからも)まくりが来たかなっていうのもあって行かないとって。自分のなかでは(1着まで)いける距離かなっていうのがあったんで、脚力のなさを感じました」

<4R>

佐々木豪選手
佐々木豪選手
 栗山和樹の上昇を阻んで、前受けから久田裕也が突っ張る。福永大智は4番手をキープして、突っ張られた栗山は下げる。赤板を通過してそのまま久田のペースかに思われたが、福永が2コーナーで仕掛ける。最終ホーム手前で福永が主導権を奪取。1コーナーで近畿勢に切り替えた佐々木豪(写真)は、2コーナー手前で外に持ち出してまくりを打つ。逃げる福永をとらえた佐々木が1着。
 「久田君が強い気持ちで走ってくれた。車間を切って(福永を)けん制しようとしたけど、スピード差がありすぎた。僕の技量では止められなかった。そのあとは落ち着いて走れました。福永君のすんなりのカマシをスイッチしてまくれたんで悪くないと思います。最近は後ろが増えて、前の子が頑張ってくれるし、自分が自力の時はいろいろ考えていいレースができればって思っている。それを後輩も見てくれれば。(今シリーズは)2日目から感触が良くなってきたんで、初日がもったいなかった」
 最終2センターでは村田雅一に張られた桑原大志だったが、佐々木のまくりに続いた。
 「福永君(の仕掛け)は、僕のなかでビックリした。ここは来ないだろうと。自分も余裕は、そんなになかった。(佐々木のまくりは)初速はそんなでもないけど、(最終)3コーナーの登りのトルクがすごかった。初日、3日目は原田(研太朗)君と走って、トップスピードが追いついていなかった。原田君は見ながらまくっていたみたいだけど、自分は100%出し切っていた。2日目は(1着で)自分でどういう風に進ませたのか覚えてない。これを追い求めてトレーニングしていかないとっていうのがあります」

<5R>

小林泰正選手
小林泰正選手
 青板バック過ぎに東矢圭吾を突っ張った小林泰正(写真)は、ひと呼吸置いてから踏み上げて近畿勢も出させない。内藤秀久が内山慧大を張って、小林ラインが空けた内を東矢が進出。原井博斗は付け切れず、打鐘で先頭に立った東矢の番手に小林が入る。内藤が続いて、4番手が単騎の阿竹智史で最終周回。小林が2コーナー手前で番手からまくり上げるが、先行に出た東矢も抵抗。直線の入口で東矢をねじ伏せた小林が1着。地元の小林は、最終日に今シリーズ初勝利で締めた。
 「(地元で)初日から応援してもらっていたのに、着に絡めていなくて、最終日に絡めて良かったです。近畿は2段駆けだと思っていたし、前をとって全部、突っ張ろうと思っていた。ペースで駆けていく形でしたけど、(東矢が内から来て)距離を詰めていきながらでした。脚にきていたので、(東矢を)抜くのに時間が掛かりましたね。今回は悔しいレースが多かった。練習では仕上げてきていたので結果は悔しいですね」
 小林に付けた内藤秀久が、4分の1輪差まで詰めてラインのワンツー。
 「(小林は)気合が入っていましたね。全部、突っ張る感じでした。自分も(内山を)止めたか、からんだ形にはなったけど(仕事はできた)。(小林が東矢の番手に)ハマれたんでこのままペースでいくかと思ったけど、思ったより先行とまくりでやり合う形になっていて難しかった」

<9R>

眞杉匠選手
眞杉匠選手
 青板3コーナーで青野将大が先頭に立ち、取鳥雄吾は番手に飛び付く。取鳥と根田空史が併走になり、赤板を通過して眞杉匠(写真)は6番手で前団の併走をうかがう。根田がさばかれ浮いた2コーナーで、眞杉はスパート。主導権の青野もペースを上げるが、最終ホーム手前で眞杉が出切って先行策。関東勢を谷口遼平が追いかける。眞杉のスピードが良く、谷口も仕掛けられない。諸橋愛も追走までで、眞杉が押し切った。
 「あそこで行かなきゃってところで行けたけど、体と自転車が思うようにマッチしてなくて、タレていく一方でした。よく1着を取れたなって感じです。開催中に良くなっていくようにいじっていたけど、良くなかったです」
 人気の関東コンビで決着。諸橋愛は2着キープをこう振り返る。
 「ラインは恵まれたけど、自分の体が重くてしょうがなかった。ちぎれなくて良かった。スタートでも脚を使ったし、整ったのはギリギリですね。眞杉は余裕があるんだろうし、どのタイミングでも射程圏に入れているような感じだった。自分がもうちょっと本調子の時なら、ゴール勝負ができるんだけどね」

<10R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 押さえて出た四国勢を受けた岩本俊介は、3番手を寺崎浩平と併走。そのまま石原颯の先行でレースは流れる。寺崎は、外併走から赤板2コーナーで仕掛ける。打鐘4コーナーで寺崎が叩き切り、遅れながらも三谷将太の追走。8番手で脚をためた単騎の山口拳矢(写真)は、最終ホームからまくりを打つ。もう一人の単騎、山田英明が山口を追いかける。好スピードの山口が、あっさりのみ込んで、山田を振り切った。
 「レースの流れは全部見えていたので、併走になっていたところは下げて2番車(佐々木龍)の後ろになってもいいなと。(前が)脚を使っていたので行けるかなと思いましたし、行けて良かった。(最終)4コーナーからもヒデさん(山田)が後ろにいたのがわかったので踏み直せました。ここ最近のGIのなかでは戦えましたね。初日に1着を取らせてもらって(2日目に)ローズカップにいけたのが大きかったです」
 結果的に単騎2人で上位を独占。山口のまくりに流れ込んだ山田英明が2着。
 「(初手の並びで山口)拳矢の後ろになった。それで動いてもしょうがないと思って、他地区のタイトルホルダーのまくりに付いてみようと。鋭いまくりがすごかったです。本当にすごくて、ちぎれながら追っていきました。(今シリーズは単騎が3回あって)自分も自力から追い込み寄りになってきて、これからどうなっていくかですね。ラインというのは難しいなと。頭を切り替えて、ラインとしての役割りをやっていきたいです」

<12R>

嘉永泰斗選手
嘉永泰斗選手
 九州にも待望のニューヒーローの誕生だ。初めてのGIファイナルのキップをつかんだ嘉永泰斗(写真)が、単騎ながらも敢然とまくりを打ち、颯爽とゴールを駆け抜けた。
 「(優勝は)うれしいけど、ちょっとまだ信じられない感じですかね」
 ワンチャンスを逃さなかった嘉永は、あくまでもクールにさわやかにこう振り返った。
 レースは松本貴治がスタートを制して、3車の四国勢が前団に構える。もう一人の単騎、古性優作が最内枠を生かして4番手を確保したが、嘉永は9番手でじっとレースが動くのを待った。
 「(GIの決勝は)初めてですし、単騎だったんで仕掛けどころを間違わずに力を出し切れたらと。最初に行くラインに付いていって、あとは流れを見てでした」
 犬伏湧也が誘導を残したまま下げて、青板3コーナーで誘導の後ろに吉田拓矢が入る。関東勢に続いた嘉永は3番手に入り、後ろには切り替えた古性が続いた。
 「後ろを確認する余裕もなくて、前の吉田さんたちの動きにだけ集中していました」
 清水裕友が5番手に追い上げて、赤板を通過しても誘導は残ったまま。後方の犬伏を警戒しながら、2コーナーで誘導を降ろした吉田が腹を固めてペースを上げて先行策。打鐘で仕掛けるかに思われた犬伏は、迷いが生じたのか動けない。3番手の嘉永は、真後ろの古性よりも先に踏み込んだ。
 「この舞台であんな絶好の位置を回ってくることは、そうそうないと思った。そのチャンスをしっかりとモノにできて良かった」
 天性のセンスと勝負度胸の賜物(たまもの)。デビューからキラリと光るものがあった嘉永が、古性に差されるリスクにも臆することなくまくって関東勢をとらえた。
 「(番手の恩田淳平に)車間を空けて見られていたんで、(仕掛けて)行きづらかった。けど、踏んだら行けるなという感じでした」
 地元の意地で恩田が古性とからんで、短い前橋の直線ではセーフティーリード。空いたコースを強襲した松本貴治を1車身半離して嘉永がゴールした。
 「自分は去年とか、その前も調子を落としたりしてなかなか上がっていかずに苦しい時期があった。けど、なんとか優勝できたんで良かったです」
 デビューからわずか3年3カ月で記念を制覇。一昨年にはウィナーズカップ、共同通信社杯と2度のビッグ決勝を経験したが、落車禍にも悩まされて負のスパイラルに陥っていた。
 「(タイトル奪取までは)長かったと思います。(来年2月に地元、熊本の全日本選抜があるので)それを目標にやってきた。(来年はS級S班になり)責任のある位置なので、これから考えて練習していけたらと思います」
 19年6月に高松宮記念杯を優勝した中川誠一郎以来の熊本からのタイトルホルダー。震災によりおよそ8年の休場を余儀なくされていたホームバンクが、昨年7月に再開。待ちわびたヒーローの誕生が、地元にこれ以上ない活気を与えてくれることだろう。
 前団に構え四国ラインは、犬伏が仕掛けどころを逸して勝負どころでは後方。最終バック8番手の松本貴治は、犬伏が不発で2センター付近から内を進出。直線では空いたコースを強襲して2着に入った。
 「力を出し切れなかった。(打鐘で)詰まったんで(犬伏が仕掛けて)行くかなと思ったんですけど。コースを探したけど、あの段階では遅かったです」
 嘉永のまくりを追走した古性優作だったが、恩田に最終2センターから直線でもからまれて3着がいっぱい。
 「嘉永が強くて、僕が弱かっただけの話です。ただただ弱い。強くなれるように練習したい。(フレームを換えたり)少しでも(良くなるように)と思っているけど、極論、脚力があればなんでもいいんで。自分に幻滅しています」

次回のグレードレースは、四日市競輪「泗水杯争奪戦」が10月31日~11月3日の日程で開催されます。

今シリーズは寬仁親王牌直後ながら、古性優作、眞杉匠、犬伏湧也、松浦悠士、岩本俊介のSS班5名をはじめ、寺崎浩平、深谷知広、山口拳矢ら健脚ぞろいの超豪華メンバー。地元勢はエースの浅井康太を中心に柴崎淳、谷口遼平らが一丸となって強豪を迎え撃ちます。ハイレベルなV争いを制すのは、果たして誰でしょうか?

10月20日時点の出場予定選手データを分析した、四日市競輪「泗水杯争奪戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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