『第37回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 初日編

配信日:2月20日

 22年のGIが開幕。取手競輪場を舞台に第37回読売新聞社杯「全日本選抜競輪(GI)」が、2月20日に幕を開けた。メインの特選では、松浦悠士、和田真久留、平原康多が、勝ち星を挙げてスタールビー賞に進出した。また、一次予選では、地元の吉澤純平が1着でファンの声援に応えた。2月21日の2日目には、初日特選を勝ち上がった9人による「スタールビー賞」が行われる。V戦線を占う意味でも豪華メンバーによる一戦は見逃せない。
 なお、開催中の4日間は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、事前抽選に当選された方のみの限定入場となります。ご迷惑をお掛けしますが、ご協力とご理解をお願いいたします。テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

神山拓弥選手
神山拓弥選手
 赤板手前で谷口遼平が押さえると、前受けから7番手まで下げた小原佑太に早めに順番が回ってきて打鐘の3コーナーで主導権を握る。北日本の3車が出切り、門田凌が4番手、長島大介が6番手で隊列は一本棒。最終ホームを通過して1コーナーから長島がまくりを打つ。佐々木雄一のけん制を乗り越えた長島が4コーナーで先頭に立ち、神山拓弥(写真)が交わして栃木ワンツー。
 「長島が直前の練習で仕上がっていたから、離れないようにだけ考えていたんですけどね。並び的には想定していた感じで、そこから長島が位置を取って(最終)ホームから仕掛けてくれた。(長島の)スピードがすごかった。でも、差しちゃいましたね(笑)。自分は直前の練習がダメすぎたので、開き直れたのが良かったのかも」
 6番手から別線の動きを待つことなく、長島大介がロングまくりで逃げる小原を沈めた。
 「終始、余裕はあったので、早めに行ければブロックをもらわないかなって思って仕掛けました。やっぱり宇都宮(のウィナーズカップ)がモチベーションになていますね。若手も成長してきて負けていられないっていう気持ちもいい方向に。状態はすごくいいと思います」

<2R>

小松崎大地選手
小松崎大地選手
 誘導が残ったまま小松崎大地(写真)、佐々木悠葵の順で出て打鐘を通過する。8番手に置かれた上田尭弥は動けず、6番手で車間を開けた大石剣士が反撃に出る。最終1コーナーで大石が佐々木を叩く。前団の隊列が短くなったところを小松崎が2コーナー過ぎからまくりを打って、スピードの違いでのみ込んだ。
 「レース展開が思った以上にスローペースになって想定外だった。でも、落ち着いて仕掛けられた。落ち着きすぎて後ろに迷惑を掛けてしまった。感触は良かったので、詰まった(最終)ホームで踏んでいれば(ラインの)3人で決まったかなと。安定感を求めているわけではなくて、少しでも上にと思っている結果がいい方向に出ているんじゃないかと」
 最終ホームで大きくペースが緩んだこともあり、小松崎の踏み出しにわずかに遅れた山崎芳仁だったが、流れ込んで2着に入った。
 「(小松崎)大地にしっかり付いて行こうと。付け切ることと、アシストをしてでしたね。(最終)ホームでバックを踏んだ分、迎え入れてからだったのでキツかったですね。人の後ろが楽になってきた。乗り方で、体を合わせています」

<3R>

松岡健介選手
松岡健介選手
 渡邉雄太の上昇に前受けの寺崎浩平は、中川誠一郎ラインも入れて後方に下げる。態勢を整えた寺崎は、打鐘手前から踏んで前団に襲い掛かる。4コーナーで寺崎、松岡健介(写真)が出切り、遅れ気味に村上義弘も続く。逃げる寺崎の番手で車間を取った松岡が、別線との間合いを計り余裕をもって追い込んだ。
 「村上さんに任せてもらって、(ラインの)3人で決まったのは大きいです。(寺崎が仕掛けた時は)内藤(秀久)君もヨコが厳しいので、からまれたりっていうのもあるんで準備はしてました。(中川)誠一郎か渡邉(雄太)君が早めに仕掛けてきてくれれば、そこのタイミングをズラしてと思ってました。今回はしっかりと練習もしてこられたので上向きです」
 近畿ラインでの上位独占。2着に粘り込んだ寺崎浩平は、納得の表情で汗をぬぐう。
 「仕掛けどころでしっかりと行けた。内容はすごい良かったんじゃないかと自分では感じています。ラインで決められて良かった。自分は久しぶりのレースだったんで、道中のペースで戸惑うこともあった。最初に踏みすぎたと思って、そのあとがキツかったです。でも、(競輪用の自転車にも)違和感なく乗れているので、明日(2日目)以降もすごく楽しみです」

<4R>

嘉永泰斗選手
嘉永泰斗選手
 菅田壱道に続いて嘉永泰斗(写真)が切ったところを町田太我が出て主導権を握る。末木浩二が巻き返して4番手が取り合いになるが、嘉永が最終ホーム過ぎにキープする。嘉永はじっくりとためて、まくり追い込みで突き抜けた。
 「直前は特別なことはせずに、いつも通りやってきました。(直前の練習の感じが)結構、良かったのでいい状態で臨めたと思います。初手は町田君(ライン)の後ろからで、町田君を出させるか突っ張るかって考えていた。ジャンで来たので1回出させてまくろうと。踏み出しはここ最近で一番良かったですね」
 嘉永マークの中本匠栄が内よりのコースを踏んで、外の菅田壱道が2着に伸びた。
 「町田君の先行が中心になると思っていた。立ち遅れないようにって考えていましたけど、自転車とのマッチングが良くなくてダッシュに不安がありました。(前々回の)高松記念からセッティングを一掃して、(前回の)西武園も日に日に変えていた。それで決勝が一番かなって思ったけど、自力で動いたら感触が違った。主にハンドル周りですね。先輩方にも相談して調整すれば、もう少しキレのある踏み出しになると思う」

<5R>

坂井洋選手
坂井洋選手
 打鐘で伊藤颯馬が勢い良く飛び出して主導権。4番手を確保した根田空史が最終2コーナーからまくって、合わせるように井上昌己が出る。両者が重なったところを坂井洋(写真)が後方からまくって1着。
 「前(九州勢)は2段駆けもあると思ったから、根田さんが仕掛けているところを早めにいかないとって思って外々を行った。踏み出しが軽かったし、仕上がりはいいと思う。いつもは不安で練習をやってくるけど、今回は完全オフを1日取ったり、軽めにもやって疲れも残さないようにした。早寝早起きをして整えてきた」
 逃げる伊藤の番手から前に踏んだ井上昌己は、坂井のまくりにはのみ込まれたが2着。
 「(根田は)飛び付く時に脚を使っただろうし、もっと遅くにくると思っていたんですけどね。もっていっても逃げられましたね。松谷(秀幸)君のところとかいろいろ考えたが、前に踏む形になった。セッティングを変えて乗りづらかったので、元に戻します」

<6R>

園田匠選手
園田匠選手
 山田英明に突っ張られて一度は中団に収まった黒沢征治だが、打鐘から再度仕掛ける。黒沢ラインが出切り、そこを取鳥雄吾が猛襲する。橋本強は付け切れず、援護を失った取鳥を黒沢が追いかける。関東勢の流れかに思われたが、7番手まくりの山田に乗った園田匠(写真)が鮮やかに突き抜けた。
 「どんな展開でもヒデ(山田)はやってくれる。絶対に仕掛けて、行ってしまうと。全面的に信頼してました。(最終)バックでは遠いかと思ったんですけど、思ったよりも伸びました。去年の競輪祭が悔しかったし、今年最初のGIで1勝できた。久しぶりに気持ちよく伸びた」
 番手から詰める黒沢の余力を確かめて、鈴木竜士が直線で中のコースを追い込んだ。
 「展開がすごく良かったし、取鳥君が1人で来たんで(黒沢を)迎え入れながらだった。自分の(踏んだ)感じは悪くないけど、もうひと伸びほしいですね」

<7R>

阿部力也選手
阿部力也選手
 三谷竜生がペースを握り、7番手でタイミングを取った渡邉一成は打鐘手前から踏み込む。齋藤登志信は付け切れず、スピードに乗せた渡邉が最終ホームで主導権を奪い阿部力也(写真)が追走する。森田優弥のまくりに合わせて三谷もまくるが阿部がブロック。村田雅一の中割りをこらえた阿部が1着。
 「結構、山を上っていったのでキツかったですけど、(渡邉)一成さんはさすがっすね。最低限、付いていかないとって思ってたんで、最低限はできたのかなって。後ろに三谷さんが入ったのがわかったので、自分が止められれば良かったんですけど技術不足ですね。ここ最近、落車続きだったのでケアをして、調子は上がってきているのかなって思います」
 さすがのダッシュと思い切りのいい仕掛けを披露した渡邉一成は3着で二次予選に進んだ。
 「想定よりも早い動きでしたけど、森田君も簡単には出ていけないでしょうし、あそこまで上がられるとは思っていなかったですけど。(最終)1センターで森田君が外に持ち出したのが見えたので、3コーナー目掛けて行きました。状態良く動けているので、年末年始の体調不良はもう大丈夫ですね」

<8R>

山田久徳選手
山田久徳選手
 松井宏佑が赤板2コーナーで出ると、山田久徳(写真)はソツなく4番手をキープする。松井のペースアップでレースは流れて、最終2コーナー手前から山田がまくる。小原太樹のブロックで失速した山田だったが、後続のアクシデントもあり勝ち切った。
 「しっかり中団を取れて、(最終)2コーナーから仕掛けようと行ったら、出が悪かったですね。小原君はもってくると思ったが、返せると思ったし、しのげました。そのせいで後ろがこられたので反省もあります。考えた展開通りに走ることはできた。すんなりナショナルチームの松井君が駆ける展開だったけど、最後に抜けて良かった」
 7番手からのまくりになった原田研太朗は、最終2センターでの落車のアクシデントを外に避けて2着。
 「(落車を)避けてからなんとか踏むことができた。前回よりもいいかは、わからない。久々にバンクでモガいた。6日ぶりのモガきだったので、(2日目以降に)弾みしかない」

<9R>

吉澤純平選手
吉澤純平選手
 前受けの山田諒が赤板過ぎに小川真太郎を突っ張り、眞杉匠は落ち着いて仕掛けどころを見極める。2コーナーで外に持ち出した眞杉が加速をつけて踏み込んで主導権を握る。栃茨の3車が出切り、山田が4番手に下げて最終ホームを迎える。6番手からまくった小川は、その前に脚力を消耗して一息。逃げる眞杉の番手の吉澤純平(写真)が絶好の展開から1着。
 「眞杉君がしっかりとレースをつくってくれて、ラインで決まって良かった。山田君が(小川郎を)突っ張ったんで、眞杉君も行きやすかったと思う。(新車は)最近は踏んで出なかったりしたんで、それよりはいいかなと。いつもよりも自転車が出てくれたんで(眞杉を)抜けたのかなと。(前の自転車だと)脚の余裕はあるけど、最後抜けなかったりもした」
 ライン3車での勝ち上がりで内容も伴った眞杉匠は、ホッと胸をなでおろすようにして口を開く。
 「(地元勢が付いて)責任重大だったので、やらかさないようにとは思ってました。(山田は)そこを突っ張って、自分らを出させるんだなと。アップをしている感じが良くなかったんですけど、レースでは良かった。全然大丈夫でした」

<10R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 中団の郡司浩平から先に切って出て、その上を松浦悠士(写真)が押さえる。中四国勢に乗ってさらに踏み上げた山崎賢人が出て主導権。松浦は番手に飛び付いて北津留翼と併走する。最終ホームを通過して、1センターで松浦が踏み勝つ。新田祐大、郡司のまくりは外に浮いた北津留のあおりでスピードが鈍る。番手で絶好かに見えた松浦がバックで外に持ち出すが、山崎にも余力が残っている。両者の直線勝負となり、わずかに松浦が山崎を交わした。
 「郡司君に突っ張られないところで切って、山崎君を待とうと思っていました。番手が北津留さんっていうこともあって、粘りは作戦の1つでした。あのままガツンといってくれれば、3番手でも良かったんですけどね。あそこでバックを踏むと後ろもいきやすくなりますし、北津留さんを飛ばせれば後ろに対してブロックみたいな感じになると思った。ちょっと慌てる感じで行ったので、仕掛けて失敗したかなって思った。けど、最後は郡司君が押してくれる感じでなんとか勝てました」
 後位を松浦に奪われた山崎賢人だったが、郡司、新田を不発にして、驚異の粘りで逃げ残った。
 「ちょっと緩めてしまって、粘られてしまった。しっかりと踏み込まないといけなかったですね。自分の感じとしては良かったです。アップの感じは重かったんですけど、いい感じで走れたと思います」
 外を回された郡司浩平は、最終2コーナーで松浦後位に降りて柔軟な立ち回りで3着に入った。
 「松浦君が粘る雰囲気だった。(最終)1コーナーで踏んでいったんですけどあおりもあって香川(雄介)さんのところにいく感じになりました。外を踏み込んで最後は詰まってしまったんですけど、かなり良かったと思います。ここ最近の中で一番良かったので、今回はすごく楽しみですね」

<11R>

和田真久留選手
和田真久留選手
 7番手で反撃のタイミングをうかがっていた深谷知広が、赤板2コーナーから踏み込む。清水裕友もペースアップするが、南関3車で叩き切る。清水は4番手に入り、人気の吉田拓矢は6番手で野原雅也と併走。吉田は内に包まれて最終ホームを迎える。逃げる深谷の掛かりも良く、番手で車間を空けた和田真久留(写真)が、清水のまくりをけん制。和田が勝機をつかんで好スタートを切った。
 「清水君、野原君もそうですし、吉田君も。ジャンで隙を見せれば(自分のところに)来るっていうのがあった。飛び付かれるっていうのが、半分くらいは頭にあった。(出切って)あとは車間を空けて、なにがなんでも(別線を)止めようと。(番手から)出ていくっていう選択肢はなかった。(ラインの3人で決まって)最高の結果で良かった」
 南関ライン3番手の鈴木裕は、横一線の2着争いを制した。
 「深谷君が強いんで全部、託してました。今回は感じが良かったんで付いていけたのかなと。(2日目のスタールビー賞に進出して)すごい上デキです」
 先行策でラインを上位独占に導いた深谷知広が抜群のパフォーマンスを披露したが、意外にも改善の余地がありそうで、こう振り返る。
 「どこから先行するかって、いつも通り考えて先行しました。自分の距離っていうのを待って仕掛けました。ちょっと感触が良くないので、しっかりと考えたい。3着に残れたことは、すごいビックリです。考えないといけない課題がある。(ライン3人で上位独占で)それが一番うれしいです」

<12R>

平原康多選手
平原康多選手
 上昇した北日本ラインの様子をうかがいながら、太田竜馬が突っ張る。山田庸平は連結を外して、太田の番手に新山響平が降りる。打鐘で平原康多(写真)は5番手をキープ。新山は2センターから太田を交わして、自ら風を切って逃げる。北日本勢に続いた平原が、最終2コーナーからまくって抜け出した。
 「流れが(どうなるか)そこまでわからなかったんで、その時、その時のヒラメキでと思ってました。新山君が番手にはまったんで、すごくまずいなと思ったけど、最終的に(まくりで)行き切れたんで良かった。セッティングを変えてきたけど、なんとか戦えそうな気がします。(前回の)静岡のままじゃ足りないっていうのがあって、自分の思うところを実戦に向けてやってきた。体調を崩さずにこられたんで、悪いわけじゃない。ただ、レースと自転車の新しい部分をマッチさせるのが大変だろうなと思ってた」
 最終ホームで8番手の古性優作が反撃に出る。平原もまくりに出て、諸橋愛と激しくぶつかった古性は、最終的に踏み勝って2着に入った。
 「想定外の動きになって対応できなかった。(山田が)あそこまで遅れてくるとは思わなかった。難しかったですね。自分も踏んだ感触は悪くなかったけど、平原さんがさすがだった。GIなんでみんな調整してきていると思うし、僕以外の選手が強かった」
 佐藤慎太郎は、平原、古性を阻めず離れた3着が精いっぱい。
 「(新山)響平も太田君の動きが読み切れなかったんじゃないかと。自分は平原君も古性君も直線で来てるんで仕事ができなかった。さすがにうまかった。(自分の感じとしては)悪くないと思います」