『第34回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 3日目編

配信日:2月10日

 19年のGIは九州から。別府競輪場で開催されている今年最初のGI「第34回読売新聞社杯・全日本選抜競輪(GI)」は、2月10日に3日目を迎えた。ファイナル9枚のキップをかけた準決では、波乱の決着もあったが迫力満点のバトルが展開された。中川誠一郎が白星を挙げて、地元の九州地区からただひとり決勝にコマを進めた。シリーズもいよいよ大詰め、11日の最終日には、決勝の号砲が鳴らされる。今年最初にして、平成最後のGIチャンプが決まる。
 本場では11日の最終日も、様々なファンサービスとイベントで、お客様をお待ちしています。柔道家「篠原信一」によるステージ、「ジャグリングパフォーマー富生」の大道芸、先着でオリジナルタオルをプレゼント、未確定車券抽選会、輪界レジェンドによる展望会&トークショー、「スピーチーズ」によるライブ、「全日本選抜『食』選手権」などが予定されています。ぜひ、本場へ足をお運びください。

じゅんいちダビッドソン お笑いステージ
じゅんいちダビッドソン お笑いステージ
マジックバーWAZUMA パフォーマンス
マジックバーWAZUMA パフォーマンス
別府けいりん選手トークショー
別府けいりん選手トークショー

<1R>

朝倉佳弘選手
朝倉佳弘選手
 赤板の1コーナーで野原雅也を押さえた金子幸央が主導権。長い関東4車が出切って、5番手で田中晴基と野原の併走になる。最終ホームを目がけて金子がペースを上げる。田中は2コーナー手前からインを進出して、4コーナーで芦澤大輔を弾く。志村太賀は張られた芦澤のあおりを受けて、関東4番手の朝倉佳弘(写真)が中のコースを伸びて1着。3連単は50万円を楽に超える高配当。
 「初日にぶつかって失敗したから、(3日目は)引っ掛からないようにすり抜けようと。ただ、その前に4番手の仕事ができなかったのが…。アッシー(芦澤)と(志村)太賀に申し訳ない。(田中)晴基を入れちゃったのが」
 野原との5番手の取り合いから、田中晴基は内を押し上げて関東勢の番手まで進出。芦澤を外に張って追い込んだ。
 「もう外には行けないなっていうのがあった。でも、自分だけになっちゃった。一番の理想は(野原と金子で)やり合ってくれることだった。とにかく前々に攻められたんですけど、自分のことでいっぱい、いっぱいでした」

<2R>

桐山敬太郎選手
桐山敬太郎選手
 合わせて踏み上げる稲毛健太から主導権を奪った桐山敬太郎(写真)が、絶妙なペースをつくりあげて逃げる。7番手の池田勇人、4番手の稲毛のまくりを不発にした桐山は、内藤秀久の追い込みを振り切って1着。
 「(逃げ切れたので)まだ、調子が悪くないってことがわかりました。誰か来たら番手勝負だと思っていたけど、来なかったので逃げ残れる距離で踏もうと。内藤さんが連日仕事ができていないって言っていたので、だったら(逃げて)行きますよって。2日間はオーバーワーク気味だったのかな。(3日目は)軽かったです」
 流れ込んだ内藤秀久は、他地区ながら3番手を固めてくれた4着の佐々木則幸を気遣う。
 「桐山が気持ち良さそうに駆けていたのでね。誰も来なかったし、ラインで決まればいいかなと。ワンテンポ早く車間を詰めていけば、ラインで決まったのかな。後ろに佐々木さんが付いてくれたんで、せっかくならラインで決めたかった」

<3R>

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 松岡健介の上昇に吉田拓矢は、赤板過ぎから突っ張る。再度、松岡が仕掛けるも、吉田がダッシュ良く合わせて主導権をキープ。中団で脚を溜めていた池田良のまくりは不発。最終4コーナーでインから堤洋に当たられて態勢を崩した神山拓弥だったが、逃げる吉田をきっちりと交わした。
 「(突っ張られた)松岡さんが俺のところで止まったから、んっていうのはありました。(番手で競りかと)構えました。そのあとは吉田が全部やってくれた。誰か割ってくるのが見えて、堤さんだったんで締めました。吉田も勝手に残った感じだし良かったです」
 3位入線の堤が失格で、結果的に関東ラインで上位を独占。微差の2着も吉田拓矢(写真)は、突っ張り先行で上々の動きを見せた。
 「武田(豊樹)さんのアドバイスをもらって、ハンドルを広いのに戻しました。狭いのが流行っているんで(初日、2日目は)狭いのにしたけど、僕には合わなかった。(体がうまく)連動しない。いつもの広さにハンドルを戻したら、体が沈んで感覚も楽でした」

<4R>

小松崎大地選手
小松崎大地選手
 赤板ホームから前に出た飯野祐太が打鐘からペースを上げる。井上昌己にすくわれて7番手になった取鳥雄吾がホームから巻き返すと、小松崎大地(写真)は合わせて2コーナーから番手まくり。4番手を固めた永澤剛まで連れ込んでラインで上位を独占した。
 「飯野君が頑張ってくれました。(番手まくりは)色んな選択肢のなかのひとつを選択した感じ。それが合ってたかどうかはわからないけど。でも3人で確定板にのれたし、それは良かった。(飯野を)残せたような気もしなくもないし、でも行かれたら…。そういう感じですね。言い訳としては」
 小松崎に続いた守澤太志だったが、逆転はならず。
 「差せそうな感じはあったけど、差しはぐれた。すいません。最後の踏み直しが小松崎さんも強いんで」

<5R>

柴崎淳選手
柴崎淳選手
 長島大介の上昇に合わせて中団から柴崎淳がアクションを起こすと、渡邉一成は赤板ホームから誘導員を下ろして応戦する。再び7番手になった長島が打鐘前2コーナーから踏み上げるが、渡邉もピッチを上げて出させない。別線のやり合いを尻目に脚をためた柴崎淳(写真)はバックまくり。押し切ってラインで上位を独占した。
 「(渡邉)一成さんがやる気でしたね。最終ホームで引くのが遅くなった動きだけが余計でした。バックの風は感じたけど、車の伸びは良かったと思う。今回は戦える状態で入ったし、初日(8着)も脚の感じは良かった。勝ち上がりでも戦える調子だと思うけど、GIは紙一重だし、頭も使ってレースをしっかり組み立てないといけない」
 柴崎のまくりにピタリと続いた金子貴志だったが逆転はならず。
 「僕が1番車だったし、初手は中団から攻める作戦で、その位置が取れた。柴崎君は最終ホームで車を引くのが遅くなったけど、余裕はありそうだったので信頼して。いいスピードでまくったし、最後は抜きに行ったけど踏み直された」

<6R>

芦澤辰弘選手
芦澤辰弘選手
 青板から上昇した坂本貴史は前受けの山崎賢人にフタをして、赤板ホーム過ぎから先頭に立とうとするが、山崎がこれを突っ張って出させない。中団を確保した杉森輝大が2コーナーからまくり上げたが、山崎の踏み直しと大塚健一郎のけん制で不発に。そのまま山崎が押し切るかに、杉森マークの芦澤辰弘(写真)が大外を突き抜けた。
 「山崎(賢人)君の突っ張りは予感していました。坂本君もそう思ったから早く押さえたんじゃないかな。どちらにせよ中団中団でと思っていました。途中でガツンと踏まれた時に離れてしまったけど、緩んだので追い上げていけた。杉森さんに一生懸命付いていって大塚さんのブロックで杉森さんが失速したけど、最後は外を伸びたのでうれしいですね。最近悩んだりしていたけど、(1着を取れて)安心しました」
 終始レースを支配した山崎賢人が2着に粘り込んだ。
 「直線で少し上に自転車が上がってしまったけど、失格しなくて良かった。今日は突っ張り先行しか考えていなかったです。大塚さんが3着に入ってくれたのが何より。体の感じは悪くないけど、もっと脚力を付けないとダメですね」

<7R>

南潤選手
南潤選手
 赤板の2コーナーで先頭に立った南潤は、2車のラインでも臆することなく逃げる。近藤隆司を制して北津留翼が3番手を確保。鈴木庸之が、打鐘の4コーナーから反撃に出るが3番手まで。リズム良く風を切った南潤(写真)が、後続をシャットアウトして逃げ切った。
 「初日も2日目もバーンって下げて、(仕掛けて)行ってるだけなんで。(3日目は)切ってくれるメンバーならって、ああなりました。鈴木さん以外なら(切って)行ってくれるかなと。そのあとは距離関係なしに、流れで叩いた方が楽かなと。きれいなジャン先行ができたんで、あとはまくって来る人を合わせられればと」
 南のダッシュに一瞬遅れた村田雅一は、苦笑いで振り返る。
 「ジャンのところは油断してました。(南が)近藤さんを合わせに行った時(少し離れてしまったところ)ですね。(南は最終)2コーナーでしっかりと踏み直してた。もう僕はいっぱいでした」

<8R>

小川真太郎選手
小川真太郎選手
 先に動いて小原太樹を受けた小川真太郎(写真)は新山響平のカマシに合わせて打鐘から内をすくうと、遅れてきた佐藤博紀をドカして新山の番手を奪う。稲垣裕之は4番手の菊地圭尚とからんだことも影響して巻き返し届かず。小川が直線鋭く抜け出した。
 「4番手を取ってまくってやろうと思ったけど、あれは4番手じゃまくれませんでしたね。すげえかかってた。後ろをチョロチョロ見てたら離れたけど、追いついて良かった。得意の決まり手、差しをつけちゃいました(笑)。でもアレで良かった。勝手に体が反応して(打鐘で)内に行ったし、判断良く動けた」
 敵が番手にはまる展開になった新山響平だったが末良く3着に粘った。
 「(小川)真太郎が残してくれました(笑)。後ろは見えてたし、そこから見ながら踏めた。最後はキツかったけどね。(佐藤)博紀さんがギリギリまで真太郎の脚を削ってくれたから3着まで残れた」

<9R>

根田空史選手
根田空史選手
 打鐘過ぎから単騎で先頭に立った竹内雄作を追った根田空史(写真)は番手で休むことなく最終ホームからすぐさま叩いて主導権を奪う。中団から山田英明がまくるも、松谷秀幸が最終4コーナー手前で強烈ブロック。援護を受けた根田がけん命に粘って、押し切った。
 「竹内さんは単騎だけど、あの動きは想定していた。最終ホームで番手に入ることは考えなかったですよ。叩くまでにある程度は脚を使ったし、全体的に重いコンディションなのでペースに入れられた感じはなかった。松谷さんのブロックがなければまくられていたと思うので、仕事に感謝ですね」
 ホームから仕掛けた菅田壱道が柏野智典のけん制で外に浮くと1センターから内に切り込んだ大槻寛徳は荒井崇博をドカして山田のまくりにスイッチ。山田がけん制されると、今度は内の狭いコースを突っ込む。入線は3位だったが、松谷の失格により2着に繰り上がった。
 「展開が激しくてよくわからなくなったけど何とか突っ込めた。今日から新車に換えたけど、無我夢中だったし感触などはつかめなかった」

<10R>

中川誠一郎選手
中川誠一郎選手
 赤板前から上昇した吉澤純平を渡邉雄太が叩いて打鐘から主導権を握る。前受けから8番手に下げた中川誠一郎(写真)だったが、構えることなくホーム手前から一気のまくり。番手の小倉竜二と2人できれいに出切ると、そのまま力強く押し切った。
 「風がなくて寒くなかったし、コンディションがとにかく良かった。2日目までの状態なら踏み込む勇気がなかったです。顔見せでこの(バンクの)状態ならいつもの感じでいけるなって。なんとか小倉さんにも(決勝に)乗ってもらいたいなって気持ちもあったので。ホームで仕掛けようか迷っていたけど、緩んでいたのでいきました。(優勝した一昨年の)ダービー以来の決勝です」
 マークした小倉竜二は2011年6月の高松宮記念杯以来となる久々のGI決勝へ。
 「もっと(中川は)タメるかと思ったけど、早めに仕掛けていったね。本人は余裕で出ていったけど、付いていくので一杯だった。連日、人の後ろで付いているだけで決勝に上がれるのはなかなかないよね。最近は原田(研太朗)ばっかり決勝に乗っているので、中四国で人数が多く乗れたらいいね」
 中川の仕掛けを追うように2コーナーから踏み込んだ吉澤純平が3着で決勝に駒を進めた。
 「(渡邉が)流していたら飛び付きも狙っていたが、結構流れていたので引きました。みんな脚を使っていたのでなんとかなりました。中川さんにスイッチしたつもりだったけど、どんどん伸びていった。自分だけになってしまって諸橋さんには迷惑かけました」

<11R>

和田真久留選手
和田真久留選手
 赤板を迎えてもレースは動かず、5番手の古性優作が1センターから上昇を始める。その上を狙いすましたように、山中秀将が大ガマシを敢行。打鐘で勢いよく飛び出す。山中、和田真久留(写真)の南関コンビが3番手以下を大きくちぎって最終ホームを通過する。離れた3番手の古性はなかなか差を詰められず、南関勢のセーフティーリードに思われたが、和田がバックで番手からまくる。そのまま後続を大きく離した和田が、2着に大差をつけてビッグ初優出をGIの舞台で決めた。
 「組み立ては全部、(山中に)任せてました。自分がもうちょっと落ち着いてやれて、技量があれば山中さんと(決勝に)乗れましたね。GIの準決でこのメンバーだから、(別線が)追いつき切らないってことはないと思った。全部、山中さんのおかげです。(GIの決勝は)いつか乗れるくらいの感覚でいたけど、そこは甘かった。(GIの決勝に乗れて)ホッとした感じがある」
 最終2コーナーからまくりを打った浅井康太が、近畿勢を乗り越えて前の2人を追いかける。失速する山中をとらえにかかったが、浅井が山中に接触して両者で落車のアクシデント。浅井に乗った吉田敏洋が、2着に入った。
 「あのジャンガマシは予想してなかった。でも、そのあとは浅井が冷静に対処してくれた。あとは浅井がどのタイミングで行くのか、木暮(安由)を使うのかとかでした。自分は周りが見えてました」
 太田竜馬のまくりは浅井に合わされ、香川雄介は中部ライン後位に切り替える。直線ではアクシデントもあって、しぶとく3着に入った。
 「太田に付いていくことだけ。(太田と連結を外した)実績もあるんで。ただ、浅井が先まくりをしたんで、太田は無理やなと。それでも4、5着かなと思ったんですけどね」

<12R>

武田豊樹選手
武田豊樹選手
 赤板前から上昇して誘導員を下ろした郡司浩平を打鐘で原田研太朗が押さえると、そこをすかさず平原康多が叩いて打鐘過ぎ4コーナーから主導権を握る。番手の武田豊樹(写真)は車間を切って後続をけん制しながら直線抜け出した。
 「平原君は勝負強いですね。位置取りだけじゃなく、ああいう競走ができるのが強み。何とか僕も油断せず頑張ったつもりだけど、(平原が4着で)ちょっと残念。平原君と決めたかったけど、松浦(悠士)君も強いですしね。平原君は決勝を走れないけど、平原君にもらったチャンスだし、決勝は吉澤(純平)君と頑張りたい」
 関東ライン3番手を回った佐藤慎太郎がゴール前外を伸びて2着に食い込んだ。
 「準決勝であそこまで思い切り先行できるなんて(平原は)超一流の自力選手だと感じましたね。4コーナーまで待って外を踏んだんだけど、俺が(平原、武田の)間を行くぐらいで踏めば平原を残せたのかな。あれだけ頑張ってくれたから一緒に乗りたかった」
 中村浩士とからみながら4コーナーから内に切り込んだ松浦悠士が最後は平原の内を突いて3着に。見事にGI初優出を決めた。
 「(原田)研太朗が必ず仕掛けてくれると思ってたし、郡司(浩平)を止めて研太朗のコースを作ってからと思った。内に来たのが誰かはわからなかったけど、負けないように体を預けて踏んだら前が空いてた感じ。(同期の)研太朗と一緒に戦って自分だけだけど乗れた。気持ち的にはいい気持ち。研太朗と一緒に戦って乗れたのはデカいですね」