KEIRIN SIDE STORY

誰もいない整備場。整然と並ぶ自転車が穏やかな光を浴び、まもなくウォーミングアップに訪れる選手を心待ちにしている。
 ここは競輪場。20 代前半から50 代の選手がファンの期待を背負い勝利を目指す舞台だ。醍醐味の一つは、ベテラン選手の老練の走りと若手選手の気鋭の走りが織りなす勝負の行方。さまざまな思いが交錯する舞台裏を写真で紡ぎます。
2018年9月 宇都宮競輪場
「お前、なんのために選手になったんだ」
デビュー当時の甘えた気持ちに師匠が喝
「お前、なんのために選手になったんだ」
コツコツと続けたトレーニングが礎に。
「好不調の波が小さい感覚があります」
ゴール前の厳しいコースどりは影を潜めたが、
「負けても納得の競走を求め、努力を続けます」
市野 茂
愛知  64期
52歳  A級2班
「頑張ったぶんだけ自分に返ってくる」
主導権をゆずらず1着ゴール。
高校卒業後のダラダラ生活にけじめをつけ競輪選手へ。
「身体を使って稼ぎたいと思って。
頑張ったぶんだけ自分に返ってくる」
まだまだ足りない事だらけと自己分析。
「いろいろ身につけS級で勝負したいです」
坂本 拓也
福島  111期
32歳  A級2班
「あれで1着とれたらいいんですけど」
後方から巻き返しを図るが3着。
「あれで1着とれたらいいんですけど、届いてないので」
「目標は、平原康多さんの多彩な戦術です」
デビュー3年目、課題は弱気な精神面。
「この先はレベルが違う、
ハイペースを維持する脚力と強い気持ちで頑張ります」
中村 弘之輔
北海道  109期
26歳  A級1班
「100円でも賭けてください」
1着か9着か、競輪はギャンブルスポーツ。
「満身創痍の僕を見てくれているファンがいる。
まるで運動会のような声援が飛ぶことがあるんです」
反応が鈍くなった身体と向き合い、今一度S級を目指す。
「インタビューでは、100円でも賭けてくださいといいます」
黒木 誠一
兵庫  60期
51歳  A級1班
「練習してない奴には負けたくない」
現実に打ちのめされたからこそ今がある。
「デビュー後10年くらいは鳴かず飛ばずだった。
やれることを精一杯地道にやってきた」
勝負の世界はまず自分との闘い。
「どれだけ努力できるか自分への挑戦。
練習してない奴には負けたくない」
時松 正
熊本  67期
47歳  A級1班
「プロを甘く考えていた」
後方から巻き返すが力及ばず。
「おもいっきり主導権を握ればよかつた。自信がなかったです」
順調とは言えない3年目の走り。
「プロを甘く考えていた。鎖骨骨折も経験しました」
S級を目指し脚力強化が課題だ。
「平原康多さんが理想です。A級で優勝し上位戦を目指します」
長谷部 翔
静岡  109期
24歳  A級2班
「車券の対象でいられることが幸せです」
野球一筋だったが、高校の部の雰囲気に馴染めず退部。
名選手を輩出した自転車部を勧められ競輪への道が拓けた。
「30代で背骨を痛める怪我もあったけど、よく乗り越えたと思います」
S級でなくなっても戦える喜びがある。
ファンあってのギャンブルレーサー。
「どのクラスで戦っても車券の対象でいられることが幸せです」
亀井 宏佳
宮城  74期
45歳  A級2班