KEIRIN SIDE STORY

 誰もいない整備場。整然と並ぶ自転車が穏やかな光を浴び、まもなくウォーミングアップに訪れる選手を心待ちにしている。
 ここは競輪場。20 代前半から50 代の選手がファンの期待を背負い勝利を目指す舞台だ。醍醐味の一つは、ベテラン選手の老練の走りと若手選手の気鋭の走りが織りなす勝負の行方。さまざまな思いが交錯する舞台裏を写真で紡ぎます。
2018年10月 取手競輪場
「もう、俺このまま終わるんだなと思って」
長期欠場明け、何をやっても勝てなかった。
「もう、俺このまま終わるんだなと思って」
伝説の選手、滝澤正光の練習法が頭に浮かんだ。
「悔いの残らないように、ひたすら長距離を乗り込みました」
「歳だけど一戦一戦大切に、
開催中は最低でも一回は車券に貢献したいと思ってます」
和泉田 喜一
千葉  59期
50歳  A級1班
「S級に上がれなかったのが残念」
引退勧告ギリギリ、もう一人の自分にスイッチが入った。
「ダメならダメ、最後まで一生懸命やろうと。
若い頃にない、厳しいコースを突くようになりました」
自転車で風をきることが好きだった青年は50歳に。
「S級に上がれなかったのが残念。もうちょっと頑張っておけば」
「100人以上の同期も今は10数人。ここまでやれて幸せです」
安藤 雄一
福岡  59期
50歳  A級3班
「試行錯誤が面白いと思うんです」
デビュー以来、ひたむきに競輪と向き合ってきた。
「課題を持って練習して、その結果が競走で出る。
いい時も悪い時も、試行錯誤が面白いと思うんです」
影に日向にと、地元新潟を牽引してきた。
「当時S級選手が少なかったんでとにかく頑張ろうと。
世代交代ですかね。最後まで選手を続けたいと思っています」
阿部 康雄
新潟  68期
51歳  A級1班
「やばい世界だと思いました」
美味しいものを食べ、いい車に乗る父がいた。
「憧れというわけではなかったが、選手になっちゃえと思った」
しかし、一筋縄では行かない現実が待っていた。
「始めた当初想像以上にきつくて、やばい世界だと思いました」
デビュー半年で味わった左鎖骨骨折が癒えてきた。
「力を出し切り、ビッグレースで活躍する選手になるのが目標です」
川越 勇星
神奈川  111期
21歳  A級2班