KEIRIN SIDE STORY

 誰もいない整備場。整然と並ぶ自転車が穏やかな光を浴び、まもなくウォーミングアップに訪れる選手を心待ちにしている。
 ここは競輪場。20 代前半から50 代の選手がファンの期待を背負い勝利を目指す舞台だ。醍醐味の一つは、ベテラン選手の老練の走りと若手選手の気鋭の走りが織りなす勝負の行方。さまざまな思いが交錯する舞台裏を写真で紡ぎます。
2018年12月 小倉競輪場
「どんなことをしても選手でいたい」
潰瘍性大腸炎と診断されたのはデビューして間もなくだった。
「学校を出る頃ちょっとおかしいなって、
デビューして、優勝もしたけど4開催しか走れなかったです」
師匠と練習仲間、境遇の似た選手の頑張りが支えに。
「みんな練習に誘ってくれて、くじけないようにと。
自分だけじゃない、やれるだけがんばろうと思いました」
焦らず、人と比べず自分のペースを貫き弟子も取った。
「いま、競輪学校を受験した高校生を見ているんですけど、
その子と一緒に走りたい。
それまでは、もうどんなことをしても選手でいたい」
宮原 貴之
栃木  67期
48歳  A級3班
「下は見たのでもう上がるだけ」
初戦からプロの洗礼を受けた。
「デビュー戦で落車して次も落車、
けっこう精神的に追い詰められました」
だが、練習は裏切らなかった。
「下は見たのでもう上がるだけと切り替えた。
ちょっとずつ力が付いてきたのが分かって優勝できたので、
やっぱ練習だなと」
競輪選手は子供の頃からの夢。
「親父の背中だけ見てた。今まで通り積極的にやって昇級し、
師匠と一緒に走ってワンツー決められる力をつけたいです」
島村 匠
福岡  111期
22歳  A級3班
「やっぱりかっこいいと思って」
魅力にひかれ5回受験。
「おじが選手だったんです。選手は楽しいだろうなぁと。
競ったり先行したり、やっぱりかっこいいと思って」
だが、そう簡単な道のりではない。
「選手になるまでもなってからも厳しいですね。
レース前の緊張感や練習メニューを組むのも自分。
全部自己管理なのでそこが一番厳しいです」
目標は、G1で闘うこと。
「強い人の走りを見て、技も乗り方も全部盗んで、
粘り脚にスピードをつけてそこからですね」
藤井 將
広島  113期
24歳  A級3班
「人に勝つよりも自分に勝つ」
大病と闘う競輪人生。
「競輪だけで言えば順調だった気はします。
でも、41歳の時に白血病になり半年入院して一年欠場、
それが大きかったですね、苦労しました」
だが、挫けなかった。
「もう一回やりたい、という気持ちが大きかった。
だから病気も治ったのかなと思っています」
2年数ヶ月前には500勝を達成。
「キツイですけど辞めようと思ったことは一回もない。
人に勝つよりもまず自分に勝つ、その気持ちです」
増成 富夫
岡山  66期
48歳  A級3班