KEIRIN SIDE STORY

 誰もいない整備場。整然と並ぶ自転車が穏やかな光を浴び、まもなくウォーミングアップに訪れる選手を心待ちにしている。
 ここは競輪場。20 代前半から50 代の選手がファンの期待を背負い勝利を目指す舞台だ。醍醐味の一つは、ベテラン選手の老練の走りと若手選手の気鋭の走りが織りなす勝負の行方。さまざまな思いが交錯する舞台裏を写真で紡ぎます。
2019年2月 前橋競輪場
「自分自身満足しています」
デビュー当時に痛めた腰は限界にきていた。
「昨年ぐらいから腰が言うことを聞かなくて。
お医者さんからとめられるような状況です。
まあ、壊れるまでできたので自分自身満足しています」
その状況でも同年代で同地区のS級選手が気にかかる。
「凄いトレーニングをして、
若手に対抗するパフォーマンスを維持できる人達がいる。
身体の強さも素質の内とつくづく思います」
初日のレース終了後、ギアを変える境の姿があった。
「息子もデビューしてみている。最下位でも、
諦めた競走なら選手手帳を返還しないといかんと思っています」
境 博文
熊本  53期
54歳  A級3班
「夢が叶えられて良かったです」
幼い頃からの夢が現実になった。
「父が競輪好きで一緒について行き選手の走りを見て、
自分もこうなりたいと思いました。
走る姿は想像つかなかったけど夢が叶えられて良かったです」
デビュー後優勝2回。
「1回目の優勝は内容に納得していないんですけど2回目は、
ラインも生かし先行で逃げ切れたので自信が付きました」
冬の練習拠点を競輪学校に移し汗を流す。
「ダッシュ力を向上させ、さらにトップスピードも上げたい。
強いメンバーの中でしごかれ脚力もついてきた感じです。
練習に対する見方も変わりいいトレーニングになっています」
渋谷 海
北海道  113期
22歳  A級3班
「速く走れる人と強い人は違う」
競輪に導いたのは60歳でなお、現役の選手だった。
「テレビの特集を見て、
この歳でスポーツ選手を続けられるんだと思いました。
その方の"こんなにいい仕事はない。やればやるだけ稼げるんや"
の言葉で決意しました」
振り返ればアッという間の26年。
「自力勝負から戦法や脚質、制度変更に対応しながらきました、
長い気がするんですけど、アッという間でした」
速さと強さの違いが勝負を面白くする競輪。
「速く走れる人と強い人は違う。だからギャンブルに成り得る。
気持ちだけは負けないようにと思って走っています」
柳澤 達也
兵庫  72期
46歳  A級3班