2011-12 UCIトラック競技ワールド・カップ 第4戦ロンドン大会

配信日:2月21日
2月19日(日)開催3日目 天候:晴れ時々くもり 気温3度
 プレ・オリンピック、テスト・イベントとしてイギリス・ロンドンのオリンピック会場、オリンピック・パーク・ヴェロドロームで開催されている2011-12シーズンのワールド・カップ最終戦も今日が最終日。今日は男子がスプリント、女子がケイリンをメインに競技が行なわれる。ここが終わるといよいよ、シーズン総決算の世界選手権、そして大一番、4年に1度の大舞台、オリンピックへと繋がっていく。

スプリント予選の新田
スプリント予選の新田
 まずは男子のスプリントの予選フライングの200mタイム・トライアルで朝9時開始の競技の幕が開ける。男子もこれまた大量の57人がエントリーし、なんとウガンダからの出場で声援を受けていたラウィノが出走せず56人での本選出場の16枚の切符をかけての争い。日本からはシクロ・チャンネル・トーキョーの新田祐大が11番目、中川誠一郎が14番目、渡邉一成が30番目での出走となる。まず注目は9番目に発走のボジェ(フランス)。昨年の世界選手権制覇もドーピング問題(居場所を知らせなければいけない義務の規定違反)で剥奪されてしまい、今期ワールド・カップ初出場のボジェのタイムに注目が集まるところ、出てきたタイムは10秒217.ボジェにしては少し物足りないタイムだ。12番目の新田が出したタイム、10秒489は残念ながら平凡なタイム。予選通過は厳しい結果となってしまった。15番目に登場は中川、初戦のアスタナでは予選通過はならずも10秒299を出しているがどうか、と思われたところ、中川のタイムは10秒279、アスタナでのタイムを上回り、この時点でボジェに次ぐ2番手のタイムとなった。31番手の渡邉は10秒257と最近の渡邉としては物足りないタイム。しかしながら先に進んで行くと、各選手なかなかタイムが上がらない。なかなかハロンのタイムを出しにくいトラックなのだろうか。雰囲気的には渡邉の予選通過はほぼ間違いなさそう、そして中川のタイムがこれまたボーダー近辺では、というような状況。最後から8番目で中川を上回ってくると思われた中国のチャン兄弟の兄が10秒355とタイムが伸びずにここで本選出場が有力に。続くスピチュカ(チェコ)が10秒611でやはり中川を下回り、ここで中川の本選出場が確定した。トップ・タイムはただ一人、10秒を切ってきたサー・クリス・ホイの9秒932、シロー(フランス)が10秒026で続き、渡邉は12位、中川16位、新田30位で予選を終えた。

本選でクリス・ホイに差し切られるも見せ場のあった中川
本選でクリス・ホイに差し切られるも
見せ場のあった中川
 本選8分の1決勝、まず16位だった中川は1位、地元の大声援を背にするホイとの対決。内側からスタートの中川は先行義務があることからホイの前から戦う形。そのまま前を取ったまま先行体制に中川が入る。先行した中川の車は気持ち良く進み、あわや、という形になるも最後は直線でホイが差し切り。しかし、ホイを相手になかなかのレースを見せてくれた。これで中川は敗者戦のB戦にすすむこととなった。
 一方の渡邉、12位で予選通過となったここは5位通過のジセイン(トリニダード・トバゴ)との対戦。急激に力をつけて最近目立つ走りを見せるジセイン、タイムを出す力はあるものの、レースにおける立ち回りはまだまだ渡邉が上なのでここは組み合わせの妙で勝ちあがりのチャンスが非常にあるところ。ここはきっちりものにしたい。外側スタートとなった渡邉。後ろからジセインを見る形だったが1周目4コーナーでジセインの前へと車をすすめる。そのままジセインの動きをきにしながら前へ進み先行体制。追い上げてきたジセインに最終バック・ストレッチ(BS)に入ったところから再度強く踏み込む。3コーナーからは合わせた形となり、結局追撃を許さず、1車身差で逃げ切り。きっちりとものにして4分の1決勝進出を決めた。
カリ優勝のベティヒャーに押し切りがちの中川
カリ優勝のベティヒャーに
押し切りがちの中川

 敗者戦へすすんだ中川4分の1決勝Bはチーム・エアドガス.2012、ドイツのベティヒャーとの対戦。ベティヒャーは第2戦のカリで同じドイツのレヴィを下して優勝した伸び盛りの若手。中川は内スタートとなり前から行くが、1周前の2コーナーで前へと出られるも最終周回を迎えるホーム・ストレッチ(HS)で再度前へ出て先行。最後はベティヒャーを振り切って期待の若手を退けた。続く準決勝Bは渡邉に負けたジセイン。ここも内スタートだった中川は前から行くも、1周前の2センターで内をすくわれて先行を許す。後ろから行く形になってしまった中川はジセインを差す事が出来ずに決勝Bは11-12位決定戦に。中川はプエルタ・ザパタ(コロンビア)とのこの一戦、最終BSからすごいかかり具合を見せて直線でプエルタ・ザパタを差し切り。最後は気持ち良い勝利でしめて11位でこの競技を終えた。

コメント(中川):「このトラックは練習から走りやすいな、と思っていたんでハロンもタイムがそれなりに出て良かったです。まあ、予選通過はぎりぎりでしたけどね。北京の時は落車の後っていうこともあってぼろぼろだったんですけど、アジア選手権を挟んで調子が良くなってきていたんで。クリス・ホイとの対戦も先行してお客さんが盛り上がってくれたんで良かったです。ただトリニダード・トバゴのときは内が絶対空いていないのにそこから先行されちゃって・・・あれは悔しいですね。ドイツの若い子にも勝てたし、最後も気持ち良く差せたので楽しかったです。帰ったら次はダービー、地元なんで頑張りたいですよね。」

 4分の1決勝へ勝ち進んだ渡邉の次の相手はドイツのフェルステマン。ここからは2本先取となる1本目、渡邉は内からスタートで前から進めていくも2周目2コーナーでフェルステマンが前を奪う。後ろからとなった渡邉は最終2コーナーから踏み出して並びかけるもフェルステマンにきっちりと合わされて1本目を失う。2本目は外スタートとなった渡邉だが先手を奪って前からレースを運ぶが1周前2コーナーで再度先手を奪われて、結局思うようなレース運びが出来ず、正直ここはレース運びも含めて力の違いを見せられる形となってしまった。最後の5-8位決定戦は4人での競走。ホイに負けたボジェ、シローに敗れたクランプトン、レヴィに先着できずのケニーとの豪華な顔ぶれとの対戦。ボジェが先行する形でレースが流れるも最後はケニーが先頭でゴール、地元2人がワン・ツーとなり最後の最後にボジェを指した渡邉が3着。結果7位でこのスプリントを終えることとなった。
フェルステマンには好きにやられてしまった渡邉
フェルステマンには好きに
やられてしまった渡邉
ボジェを差した!渡邉の5-8位決定戦
ボジェを差した!
渡邉の5-8位決定戦

コメント(渡邉):「(ボジェを差しましたね、に)ええ。あそこだけはと思って。豪華なメンバーの5-8位決定戦でしたね。予選のハロン、タイムはやっぱり出にくいみたいですね。カントがきつくない分、それを利用できないからだと思います。だけど強い力のある奴はきっちり出してきますよね。本選1回戦は相手に恵まれた感じでしたね。こっちもテクニックがあるわけじゃないけど先行して形に出来ました。ラッキーだったと思います。次のフェルステマンは、うーん、終始相手にペースを握られていた感じですね。こっちが先行したいのを分かっているから簡単にそうはさせてくれないですね。2本目が絶対先行しようと思ったのにあれですから。まだサシでの勝負は厳しいですかね。でもここに来てようやくやってきたことが結果に出るようになってきたんで。これが1年早ければ更に良かったんですけどね。オリンピックまであと半年、もう一段上に行けるように、世界選手権も含めて頑張りたいと思います。」

ケイリン、スプリント2冠のサー・クリス・ホイ
ケイリン、スプリント2冠の
サー・クリス・ホイ
 決勝は、4分の1決勝で先に1本先取されるもその後2本連取してボジェを下し、準決勝では2本連取でフェルステマンを退けたホイと準決勝、シローを先行して、差してと寄せ付けなかったレヴィ(ドイツ)との対戦。1本目はレヴィが内からスタート。2周目から徐々にスピード・アップ、山おろしをかけて先行したレヴィだったが最終2センターで一気に差を詰めたホイが直線で差して先取。2本目は内からのスタートとなったホイはそのまま先行したがレヴィも早め進出で最終1コーナーで並びかける。1センターでは前に出るもまだホイの外を並走状態。ホイも内で我慢し3コーナーから巻き返し。こうなると外は苦しくレヴィは4コーナー過ぎではあきらめ、ホイが2本連取でケイリンに続いてここロンドンで2個目の金メダルを獲得し、アスタナに次ぐ今期2勝目でワールド・カップ・リーダーも手中に収めることとなった。

ケイリンの石井、見せ場が欲しい
ケイリンの石井、
見せ場が欲しい
 女子のケイリンにもエントリーは殺到。なんと46人のエントリーがあり、なんと1回戦は7ヒートで行なわれることに。それでは一体どうやってトーナメントを行なうのか、とチェックしてみると、1回戦は7ヒートで争い、1着1名が次の4分の1決勝へ進出。敗者復活戦は6ヒートで行い2着までの12名、1回戦と合わせて合計19名が4分の1決勝へ。この4分の1決勝は3ヒートで行い2着までの6名、そしてこの敗者復活戦を2ヒートで行い上位の3名で6名、合計12名で準決勝2ヒートそして決勝を行なうという流れ。スムーズに行けば4戦、多いと6戦戦って優勝という長丁場の戦いとなる。日本からはスプリント同様石井寛子、前田佳代乃がそれぞれ4種目目の出場。
 まずは石井が第4ヒート。周回を2番手で重ねた石井、ペーサーの退避を狙って後方から前へ他の選手が上がってくるところを内々での走行。皆が前へと動いてくるところも内々で残り1周となったところでは内で最後方。一人を交わしたものの追走一杯で6着で敗者復活戦へ。結局残り1周から並走をしのぎ切ったヴァーニッシュ(イギリス)が1着。
 第7ヒートの前田は最後方での周回。ペーサー退避後も動かず、4番手のシュリカ(ウクライナ)が残り2周を切った1コーナーから動き出したのを追走するも離され加減。前との差も詰まらず結局は4着でのゴール。シュリカの番手から残り1周で飛び出してBSで先頭に立ちしのいだサンチェス(フランス)が1着。

前田のケイリン、相手に恵まれた敗者復活戦で結果が欲しかった
前田のケイリン、相手に恵まれた
敗者復活戦で結果が欲しかった
 敗者復活戦、第1ヒートの石井は2番手から、後方のカニスが上がっていくところ、合わせることが出来ず、残り1周を最後方の6番手。結局最後までそのまま、6着でケイリンでの敗退が決まった。最終HSでスピードを上げ前を行くカニス(オランダ)との並走から前に出切ったサリヴァン(カナダ)が1着。カニス2着。
 第3ヒートの前田はペーサー後位での周回。ペーサー退避後最後方から上がるブレズニヴァ(ペトロホールディング・レニングラード,ロシア)の後ろに入り2番手として、残り1周半からこのブレズニヴァを交わそうと外に車体を持ち出す。しかしなかなか前に出ることが出来ずなんとか車を上げていこうとする最終1コーナーで外に振られてしまい伸びなくなってしまう。内からするすると行き、ブレズニヴァの番手から直線抜け出そうとしたジャンクテ(リトアニア)を外から一気に追い込んで交わしたカルヴォ・バルベロが1着。ジャンクテ2着。前田はその後伸びを欠いて6着。共に敗者復活戦での敗退となった。

コメント(前田):「悔しいというか、自分のへたれ加減にへこみますよね・・・余裕がないんですよね。それと脚が。なんとか前に行き切りたいとは思ったんですがそうこうしているうちに外に振られちゃって。もう一段行ける脚をつければ気持ちの余裕が出て、展開の組み立てなんかを考えながら走れるとは思うんですけどね。世界選手権までは若干時間があるので色々なことと折り合いをつけて少しでもまた上にあがっていければと思います。」

女子ケイリン決勝。今回のトーナメントは全部で24レース・・・
女子ケイリン決勝。
今回のトーナメントは全部で
24レース・・・
 決勝戦まですんなり1回戦、4分の1決勝、準決勝の3戦で駒を進めたライダーはおらず、メアーズ(オーストラリア)、ペンドルトン(イギリス)、リー(香港)、クルペシカイテ(リトアニア)、シュリカ(ウクライナ)の5人がここまで4戦、グオ(中国)が全てのレース、5戦を戦っての決勝進出。その決勝戦は前を行くメアーズとの車間を大きく開けて後ろをけん制するクルペシカイテが残り2周半で5番手から位置を上げてきたペンドルトンの動きに合わせて踏み込む。ペースが上がりペドルトンはクルペシカイテの後ろのグオの横で並走する状態。シュリカも追い上げここが3者へ並走となって残り1周。ここで2番手クルペシカイテが飛び出すもメアーズも内で合わせる。しかし3コーナー手前でクルペシカイテが前へ出切り、並走で空いた内からメアーズの後ろ、そしてそこから外へ持ち出すリー。しかしクルペシカイテが押し切ってこの長いトーナメントで勝利。追い込んだリーが2着、グオ、シュリカ、ペンドルトン、メアーズの順での決着となった。全戦に出場、優勝2回、2着1回のクルペシカイテがワールド・カップ・リーダーの座を大差で守りきった。

 女子オムニアムは激しいトップ争いが繰り広げられたものの、最後はハマー(アメリカ)とエドモンドソン(オーストラリア)の争い。最後の500mタイム・トライアルでハマーの5位を上回る3位のタイムを出したエドモンドソンが2点差を詰めて30点の同点とハマーに追いついたものの、タイム競技の合計タイムでハマーに及ばず1位ハマー、2位エドモンドソンとなった。地元のトロットがこれに2ポイント差の3位となったがポイント・レースで17位17ポイント、スクラッチで9位9ポイント、逆に言えばフライング・ラップ、3km個人追抜で2位、500mTT、エリミネイションでは1位とこの4種目でわずか6点という素晴らしい成績だったことから、ゲーム系種目での立ち回りを覚えると他のライダーのかなりの脅威となるに違いない。4戦全てに参加して2位1回3位1回で28ポイントのフアン(中国)が2戦2勝のロマニウタ(ロシア)、ハマーの24ポイントを抑えて今期のワールド・カップ・リーダーとなった。

 男子の団体追抜、地元開催で表彰台の真ん中に立ちたかったイギリスだったが、観客の後押しも実らず、3分56秒320とボブリッジ、ヘップバーン、デニス、エドモンドソンの強豪を揃えたオーストラリアの3分54秒615に及ばず2位という結果になった。今期のワールド・カップ初優勝も残り3度全てで銀メダルのオーストラリアが文句無くワールド・カップ・リーダー。まだまだ人材の揃うオーストラリア、オリンピック、いや地元での世界選手権でとなってしまうのか、イギリスが北京オリンピックでただ着だした3分53秒514の世界新記録が目の前に見える状況になってきた。

 これで今期のワールド・カップは全日程を終了。世界選手権の出場枠もこれを元に決定。今シーズンの総決算にしてオリンピック出場権に向けての最後の戦いとなるオーストラリアのメルボルンで行なわれる世界選手権は4月の4日から8日の5日間に亘って開催される。好戦必死の世界選手権が早くも楽しみとなった。

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