レース展望

 東日本大震災被災地支援・第65回日本選手権競輪(GT)が熊本競輪場で開催される。深谷知広、浅井康太に牽引されて勢いが加速する中部が中心となりそうだが、虎視眈々と連覇を狙う村上義弘や地元・九州の反撃も侮れない。

火の国・熊本に熱き男たちが集結!
中部と関東の2大勢力が優勝争いの中心だ

深谷知広 愛知・96期  今年初のビッグレースとなった東西王座戦の結果を見てもわかるとおり、現在は中部と関東の2大勢力が頭ひとつ抜けている印象が強い。とりわけ深谷知広、浅井康太、山口幸二のS級S班3人を擁する中部は脚力的にも結束力でも強力だ。今大会も深谷と浅井のヤングパワーに牽引される中部を軸に優勝争いが動いていくのは間違いない。
  深谷は年末のグランプリでは早めの仕掛けで7着と末脚を欠いたが、年明けの立川記念では横綱相撲の逃げ切りで連覇を達成した。
  その後は1カ月近く競走が空き、練習十分で臨んだ西王座戦では予選1が逃げ切り、予選2が捲り、決勝が内に包まれる苦しい展開からインに切り込んでの直線強襲で完全優勝と強さを見せつけた。今回も長走路をモノともしない圧倒的な脚力で、危なげなく勝ち上がっていくだろう。

武田豊樹 茨城・88期  武田豊樹は競輪祭、グランプリ、1月の和歌山記念と3場所連続で準優勝が続き、いわき平記念では優出を逃すなど体調面を不安視する声もあったが、東王座戦の決勝は逃げ切りで見事に3連覇を達成した。
  勝ち上がりでは、予選1では先行して6着に沈んだが、長走路で結果を恐れずに積極的に攻めていく走りは武田ならではのものだった。今回も前へ前への積極的な走りで別線の選手たちを圧倒していくことだろう。
  関東では岡田征陽も好調だ。昨年後半から自在戦法に磨きが掛かって成績が急上昇、10月の共同通信社杯秋本番で優出、競輪祭では準決勝まで勝ち上がり、東王座戦は2着、1着の勝ち上がりで準優勝と大健闘だった。

精鋭揃いの熊本勢が必勝態勢で臨む
4回転パワーを手に入れた村上義弘が連覇を狙う

合志正臣 熊本・81期 地元・熊本からは近況好調な松岡貴久、松川高大、中川誠一郎らの機動力型にタイトルホルダーの合志正臣が揃い踏みで、中部や関東らの遠征勢を迎え撃つ。GT最高峰の日本選手権が初めて九州の地で開催されるとあって、もちろん他の九州地区の選手たちの士気も大いに上がっているはずだ。

松岡貴久 熊本・90期 松岡貴久は昨年前半はビッグレースでの落車が続いて波に乗れなかったが、10月の共同通信社杯秋本番で優出して復活をアピール。競輪祭では二次予選で敗れたが、抜群の競走センスを披露し3勝を挙げ、最後の最後までグランプリの出場権争いに名を連ねていた。
  年明けの大宮記念では得意の500バンクで準優勝と健闘、次場所の熊本FTでの落車の影響がやや気になるが、ホームバンクでの日本選手権に向けてしっかりと立て直してくるだろうし、GVの優勝経験がまだない松岡だが、一気のGT初制覇も決して夢ではないだろう。
 近況は勝ち星量産で乗りに乗っているのが松川高大だ。競輪祭では2着、1着の勝ち上がりで準決進出、年明けの松戸FTで優勝、西王座戦はいつも通りの積極的な仕掛けで予選1が2着、予選2が5着でビッグレース初優出を達成。決勝も深谷知広、浅井康太の中部ラインを相手に主導権を取り切り、結果は5着だったが次につながる内容の濃い走りを見せていた。
 今回も九州勢を引き連れてきっちりと見せ場を作ってくれるだろうし、西王座戦に続いての優出が期待できる。

伏見俊昭 福島・75期 年末のグランプリでは見せ場なく終わってしまった北日本勢だが、東王座戦でもまさかの総崩れとなり1人も決勝に勝ち上がれなかっただけに、今回は伏見俊昭を中心に強い絆で結束して巻き返しを狙ってくるだろう。
  伏見俊昭、成田和也、佐藤友和のS級S班に加え、年末のナショナルチームカップを制した渡邉一成が好調なのも好材料で、ライン的な総合力では中部や関東に決して引けを取らない。
  渡邉は東王座戦の予選2では後閑信一の奇襲的な先行策に翻弄されて仕掛け切れずに終わったが、予選1は早坂秀悟を目標に追い込みで1着で伏見とワンツー、3日目特選では捲って2着でやはり伏見とワンツーを決めている。

村上義弘 京都・73期 昨年の覇者・村上義弘が日本選手権連覇を狙う。
  村上は今年から4回転を使っているが、初戦の大宮記念で早くも大ギアパワーの威力を発揮、決勝は3番手を奪取してからの捲りで平原康多、松岡貴久の猛追を振り切って優勝している。続く京都向日町記念の決勝では藤木裕の先行を目標に最終2角から番手捲りを打ち、弟・博幸を地元記念連覇へと導いた。
  西王座戦の決勝はグランプリと同様に単騎の苦しい戦いとなって捲り不発に終わったが、今回も魂の走りと新たに手に入れた大ギアパワーでファンを魅了する。

復調気配の海老根恵太に捲りのスピードが戻る
好調・三宅達也が西王座に続いて優出を狙う!

   海老根恵太 千葉・86期南関東では海老根恵太が復調気配だ。全盛期と比べるとまだまだ物足りないが、GTで優勝争いに食い込めるスピビードは戻ってきている。昨年の競輪祭で優出、年明けの京都向日町記念でも初日特選が1着、準決勝が2着で決勝に駒を進めている。
  近況は位置取りが淡白で勝負どころで後方に置かれるレースが目立っているが、500バンクの熊本なら位置取りに関係なく最後の直線だけで力勝負ができるし、ホームバンクが千葉の海老根にとっては500バンクを走り慣れているのが大きな利点となるだろう。
  松坂洋平も一時期の勢いがなく近況は壁にぶつかっている印象だが、12月の川崎FTの決勝では外競りの苦しい展開から二の脚を使っての捲りで優勝と潜在能力の高さを改めて証明している。
  昨年の名古屋の日本選手権では逃げ切りの2連勝で準決勝へ進出と、松坂がブレイクしたきっかけとなった大会だけに、今年も相性のいい大会での大逃走劇が十分に期待できる。
  1月のいわき平記念で伏見俊昭、成田和也の地元のS級S班を敗って2度目の記念優勝を飾った武井大介、東王座戦で南関東からただ1人決勝に駒を進めた中村浩士、1月の和歌山記念で初日特選と準決を快勝して優出した五十嵐力など、南関東は伏兵陣の一発も軽視できない。
 三宅達也 岡山・79期中・四国では三宅達也が好調だ。1月のいわき平記念の決勝は坂本貴史と川村晃司のもがき合いとなって展開が向いたおかげもあるが、8番手からきれいに捲り切って番手追走の武井大介の優勝に貢献している。
  西王座戦の予選1では徹底先行の脇本雄太を叩いて主導権を奪い、自身は6着に沈んだが、やはり番手追走の柏野智典の2着に貢献。予選2では単騎の戦いで9番手の展開となってしまったが、最終3角からの大捲りで圧勝して決勝進出を果たしている。
  西王座戦に続いての500バンクでの今回の大会でも、三宅の勝ち上がりが大いに期待できるだろう。
日本選手権競輪の思い出

番手絶好となった渡邉晴智が地元でGT初優勝!

 最内1番車の渡邉晴智がスタートを取って山崎芳仁を迎え入れ、山崎−渡邉−合志正臣で前団、小嶋敬二−山田裕仁−山口幸二−濱口高彰の中部4車が中団、平原康多−藤原憲征の関東コンビが後攻めで周回を重ねる。赤板前の4角から平原がゆっくり上昇して山崎を抑え、山崎が車を下げると平原はペースを落とす。続いて小嶋が上昇して先頭に立ち、打鐘とともに後ろを警戒しながら中バンクに上がって先行態勢に入るが、打鐘4角から山崎が一気にスパートして反撃。合わせて小嶋も仕掛けて両者で踏み合いとなるが、最終1角過ぎに山崎が出切って主導権を奪う。平原は最終バック手前から捲っていくが、渡邉の横までで一杯。番手絶好の展開となった渡邉が直線鋭く追い込み、地元バンクで悲願のGT初優勝を達成、直線中を割った合志が2着、逃げた山崎が3着に粘った。
日本選手権競輪の思い出
優勝 渡邉晴智
第61回 平成20年3月23日決勝
日本選手権競輪の思い出
優勝 渡邉晴智
第61回 平成20年3月23日決勝
日本一長い直線を誇る500バンク

仕掛けのタイミング次第では逃げ切りも可能だ

 500バンクの熊本は日本一長い直線を有しており、あまりの長さに「滑走路」と呼ばれている。
 その極端な直線の長さゆえに先行は不利であり、先手ラインの番手の選手も決して有利とはいえず、3番手、4番手で脚をためていた選手が直線で一気に突き抜けてくるケースがよく見られる。
 ただし500バンクでは自力型の仕掛けが総じて遅くなるので先行も絶対的に不利とはいえず、タイミングよく仕掛けることができれば逃げ切りも可能だ。
 07年12月に開催された全日本選抜の決まり手を見てみると、全47レースのうち1着は逃げが7回、捲りが13回、差しが27回、2着は逃げが9回、捲りが8回、差しが17回、マークが14回(2着同着を1回含む)となっている。
 決まり手のパターンで出現率が最も高かったのは差し−差しの15回、次いで差し−逃げの9回となっている。また長い直線で力のない選手が付きバテしてラインが乱れることも珍しくなく、決まり手は差し―マークだが、別線の選手同士の決着というケースも多い。ちなみに先手ラインの選手が1着になったレースは20回だった。

熊本バンク
熊本バンク

直線は中コースがよく伸びる

   周長は500m、最大カントは29度44分42秒、見なし直線距離は69.5m。捲りは2角手前から仕掛けるか、中団の位置があれば遅めの捲り追い込みがいい。直線ではイエローラインのあたりがよく伸びるので、ゴール前で前団の選手が外へ外へと車を持ち出していって中コースがぽっかり空けば、7、8番手からでも一気に突き抜けることができる。

昨年の日本選手権競輪(名古屋)

決勝ゴール。B村上義弘が混戦を断つ仕掛けで押し切り、
悲願であったダービー王のタイトルを獲得した。

第64回日本選手権競輪(名古屋)
優勝 村上義弘
  第64回日本選手権競輪(名古屋)
優勝 村上義弘