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レース展望

 4年ぶり3回目のふるさとダービー防府が開催される。先手有利の小回りバンクだけに機動力豊富な北日本勢が優勢だが、武田豊樹を軸とする関東勢や南関東勢も層が厚く、激しい優勝争いが繰り広げられる。

機動力豊富な北日本勢の優位は揺るがない
 
 02年に開催された前回のふるさとダービー防府では、谷津田将吾を目標にレースを運んだ齋藤登志信がビッグレー ス初優勝を飾っているが、今回も機動力の豊富な北日本勢が優位に立てそうだ。
 伏見俊昭は今年は低空飛行が続いているが、若手の佐藤友和、渡邉一成、佐々木雄一らが上昇一途で、先輩格の齋藤登志信や追い込み型の佐藤慎太郎らには勝ち上がり戦はもちろん、決勝戦でも有利な組み合わせが見込めるし、齋藤の連覇も十分に期待できる。
 
齋藤登志信
齋藤登志信 山形・80期
 
 齋藤は昨年後半からリズムを崩して調子落ちになっていたが、今年8月の函館FⅠで完全優勝を達成してようやく復活の手応えをつかんだ。オールスターは準決勝Aで惜しくも4着と敗れているが、予選は文句なしの2連勝で、得意の捲りや追い込みに好調時のスピードが戻ってきている。
 
佐藤慎太郎
佐藤慎太郎 福島・78期
 佐藤慎太郎も昨年4月のふるさとダービー武雄温泉以降は優勝がないが、今年は競輪祭、高松宮記念杯、寛仁親王牌、オールスターで優出と相変わらず安定度は高く、今回も勝ち上がり戦では抜群の強さを見せてくれるだろう。

 
三宅達也
三宅達也 岡山・79期
 地元・中国勢は機動力の面で苦戦を強いられそうだが、復調気配の三宅達也の頑張りに注目したい。三宅は6月と7月に立て続けに落車して調子を崩してしまったが、10月の向日町記念では先行と捲りで3連対しており、まだまだ本調子と言える状態ではないが、ここぞという時の捲り一発はやはり軽視できない。
 
今年は横一線の優勝争いが相次ぎ、今大会も伏兵陣の台頭が十分だ
武田豊樹が先手必勝の走りで優勝を狙う
 
 
 
武田豊樹
武田豊樹 茨城・88期
 今大会の出場選手の中ではやはり武田豊樹が断然の脚力上位だろうし、優勝候補の筆頭に挙げられることはまず間違いない。共同通信社杯では準決勝が3着同着で優出を逃し、悲願のビッグレース制覇はまたもや持ち越しとなってしまったが、4日間のレース内容はよかった。
 武田は勝ちにこだわるあまりに仕掛け遅れて不発というケースがしばしばあるが、共同通信社杯では連日積極的な走りを見せていて、捲りに回されても巻き返しが早かった。現在の調子と積極性があれば小回りバンクの防府でも後手を踏まされる心配はまずなさそうで、今度こそのビッグレース初制覇が現実のものとなるだろう。
 勝ち上がり戦で関東の追い込み勢の心強い味方になりそうなのが、徹底先行で売り出し中の峠祐介だ。峠の徹底先行ぶりは半端じゃなく、格上相手のレースでも臆せずに主導権を取りに行ってくれるので実に頼もしい。共同通信社杯でも4日間とも主導権を取り切っているし、予選では後閑信一の勝ち上がりに貢献している。
  今はまだ末脚が甘く、がむしゃらに逃げているだけの状態だが、先手有利の防府バンクなら上位レースへの勝ち上がりが望めそうだ。
  そのほかも太田真一が波はあるけれども近況好気合いだし、松本一成も近況やや低調だが徹底先行で鳴らしているので、共同通信社杯で優出した手島慶介と阿部康雄、武田豊樹との連係実績が豊富な神山雄一郎や兵藤一也らに勝ち上がりのチャンスが増えてくるだろう。
 
合志正臣
合志正臣 熊本・81期
 また、九州の合志正臣がデビュー8年目でついにビッグレース初制覇を成し遂げた。
 今年の合志は寛仁親王牌で優出、各地の記念でもライン的な不利をものともしない勝負強さを見せつけていたので、今回の優勝は決してまぐれでも恵まれでもない。2日目篝火賞では山崎芳仁の番手を奪いにいくも佐藤慎太郎に捌かれてしまい小兵の辛さを改めて思い知らされたが、初日優秀は本領発揮の直線強襲で3番手から一気に突き抜けて絶好調ぶりをアピールしていた。
 これで九州勢はオールスターの井上昌己に続いてのビッグレース連覇となる。
 現在の九州勢は機動力の面でも選手層の面でも決してビッグレースで優位に立てる状況にはないが、断然優位のはずのラインが勝ち切れず、伏兵陣が優勝をさらっていってしまうのも競輪競走の面白さだ。結局、現在の競輪は最終4コーナーまではラインとラインの戦いだが、最後の最後でモノをいうのは選手個人の調子と脚力だからだ。
 
加藤慎平
加藤慎平 岐阜・81期
 そういう意味では、近況元気のない中部勢から優勝者が出る可能性も決して否定できない。
 地元開催の共同通信社杯では中部勢からひとりも優出できず、文字どおりの完敗だった。とくに岐阜がホームバンクの加藤慎平にとっては悔やんでも悔やみきれない結果だろう。
 加藤は昨年の最優秀選手だが、今年はビッグレースはおろか記念やFⅠでの優勝もない。このまま1年を終わらせるわけにはいかないし、12月の全日本選抜競輪に向けて弾みをつけるためにも今回は必勝態勢で臨んでくるだろう。
 
戦法の幅が広がった新田康仁が優出を目指す
先行有利のバンクで村上義弘が復活に賭ける
 
 
 
中村一将
中村一将 兵庫・86期
 近畿勢ではやはり村上義弘の動向が気になるところだが、共同通信社杯では一次予選で4着に敗れ、2日目以降を欠場しており、完全復活への道のりはまだ遠いようだ。
  それでも9月の地元・向日町記念では、決勝こそ新鋭の北津留翼に主導権を取られて5着に敗れたが、勝ち上がりのレースでは3日間先行して2着、3着、2着の成績。地元バンクでの好走は多少割り引いて評価する必要があるが、7割方は脚力が戻ってきていると見ていいだろう。積極性は以前どおりでまったく問題ないし、短走路なら多少の早駆けでも粘り込めるはずで、今大会が村上の復活への足がかりになるかもしれない。
  若手で活躍が楽しみなのは86期の中村一将だ。正直なところ現在の中村にはビッグレースを順当に勝ち上がっていく力があるとは言えないけれど、ケレン味のない先行は注目に値するし、将来性も感じさせる。
 オールスターでは予選2で先行して山崎芳仁を不発に終わらせているし、共同通信社杯の二次予選では小嶋敬二に叩かれて主導権を取れなかったが、3日目特選では小嶋敬二-山田裕仁の中部勢を引き連れて気持ちよく先行、中部ワンツーに貢献している。
  ふるさとダービーでは勢いに乗った若手が予選を2連勝で勝ち上がり、準決勝で大ガマシを打って波乱の目となるケースが度々あるが、ひょっとすると今大会では中村が波乱を呼び起こしてくれるかもしれない。
 
新田康仁
新田康仁 静岡・74期
 南関東勢では新田康仁が好調だ。新田は先行・捲りのみの一本気な組み立てがアダとなってカベにぶちあたり、長らく低迷していた時期があったが、今年4月の川崎記念で中部ラインの3番手追走から久しぶりの記念優勝を飾って復活を果たした。その後は成績もぐんぐん良くなり、現在は勝率が3割、連対率が5割5分の高い数字をマークしている。
  現在も基本的には先行・捲りの自力勝負が主体だが、展開や組み合わせによっては他地区のラインの3、4番手を追走したり、追い上げやイン粘りで番手を狙いに行ったりと戦法の幅が広がっている。オールスターは予選を1着、2着で勝ち上がりながら準決勝Aで7着、共同通信社杯も2連勝で勝ち上がりながら準決勝は5着に敗れているが、今大会では今度こその優出が期待できる。
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02年ふるさとダービー防府
優勝 齋藤登志信
 02年の大会では齋藤登志信が勝ち上がりでも先行、先行、捲りの3連勝で圧倒的な強さを見せつけ、ふるさとダービー史上初の完全優勝でビッグ初優勝を飾った。決勝戦の並びは三宅伸-前反祐一郎、堤洋-香川雄介、谷津田将吾-齋藤登志信-後閑信一、新田康仁-東出剛の4分戦。打鐘から谷津田が上昇して先行態勢に入ると、齋藤が踏み遅れてカマシ気味に仕掛けてきた新田に番手に入られるが、齋藤は新田に続こうとした東出を捌いて3番手を確保する。そして最終バックから新田が番手捲りを打つと、齋藤は最終4角から一気に踏み込んで2着の新田に1車身の差をつける余裕のゴールで優勝、3着には後閑が流れ込んだ。

多少番手が悪くても直線で中バンクが伸びる
防府バンクの特徴
 軽くてクセがなく、ハロンで10秒台がよく出る高速バンク。直線も33の割には長く、コーナーも流れるので、どんな戦法でも力を出せる。どちらかというと400の感覚に近い。
  02年に開催されたふるさとダービー防府の決まり手を見ると、全44レースのうち1着は逃げが10回、捲りが6回、差しが28回、2着は逃げが11回、捲りが15回、差しが5回、マークが13回となっている。
  短走路らしく逃げの連絡みが多くなっているが、先手ラインの選手が1着になったレースは半数強の25回なので、必ずしも先手ラインが有利とは限らない。好位を回っても差し脚のスピードに切れを欠くタイプは苦しく、番手回りでも2着や3着に落ちるケースがけっこう多い。
  逆に脚をためて2センターぐらいから捲り追い込み気味に仕掛けると、多少番手が悪くても直線で伸びる。コースは中バンクあたりが伸びるので、4コーナーのカントをうまく使い、前の踏み出しに合わせて仕掛けていくと、中団からでも直線一気に突き抜けることができる。
  先行は小回りバンクなので、遅めに抑え先行にいくと合わされて突っ張られてしまう。赤板で抑えて思い切り仕掛けていくことが大切。無理してでも先行態勢に入ったほうが、バンクが軽いので粘れる。ただし、モガく距離は500バンクの先行よりも長くなってしまう。
  捲りもクセのないきれいな走路なのでどこからでも捲れるが、早めにしかけるのなら最終ホームから行ったほうがいい。打鐘過ぎてから抑え込まれた先行選手には、イン粘りも有効だ。

周長は333m、最大カントは34度41分09秒、見なし直線距離は42.5m。競輪場は防府市内を見下ろす高台にあり、ホーム側約5㎞先が瀬戸内海。風の影響はほとんどないが、極端に気象条件が悪い時には、海からの強い風でホーム向かい風になる日もある。競りはイン有利だが、外でもコーナーを締めて走ると好勝負ができる。

防府バンク



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