第25回共同通信社杯秋本番(GII)が奈良競輪場で開催される。今年3回目の短走路でのビッグレースとなるが、松戸の日本選手権と前橋の寛仁親王牌を制した近畿勢が、今回も主導権を取り切って優勝を狙う。ようやく本来の勢いを取り戻してきた北日本勢や関東勢の機動力も相変わらず強力で、いよいよ佳境に入ってきた賞金争いの行方とともに見どころ満載の4日間となるだろう。

古都・奈良の地で男たちの熱い戦いが始まる!

積極性で優る地元・近畿勢の優位は揺るがない

 3月に松戸で開催された日本選手権では村上義弘が先行して番手の村上博幸がGI初優勝、7月の前橋の寛仁親王牌では新鋭・脇本雄太の先行を利した近畿勢がやはりワンツー決着、市田佳寿浩がGI初優勝を飾っている。
 今回も積極性の高さで他地区を圧倒してきた地元・近畿勢がしっかりと主導権を取り切って、上位独占を狙ってくるだろう。  しかも、兄・義弘は4月の共同通信社杯春一番で完全優勝を達成しているし、弟・博幸のビッグレース初優勝も07年の共同通信社杯と村上兄弟の本大会との相性も良く、地元地区での開催に燃える近畿勢の優位が揺らぐことはないだろう。
 北日本勢は今年前半はビッグレースでの優勝がなく、昨年までのような圧倒的な存在感は影を潜めていたが、後半戦のスタートとなった寛仁親王牌では山崎芳仁、伏見俊昭、渡邉一成、新田祐大の4人が大量優出。続くサマーナイトフェスティバルでは復活なった佐藤友和の先行に乗って成田和也がビッグレース初優勝、そして全日本選抜では、その佐藤がGI初優勝と、北日本勢もようやく本来の勢いを取り戻すとともに、改めて機動力の豊富さを知らしめた。
 北日本の機動力が勢いを取り戻せば、当然北日本の番手の伏見が誰よりも有利にレースを運べるし、いざとなったら自力発進できる強みもあり、伏見が持ち味の抜群の安定感を発揮できれば優勝へのチャンスは大きくふくらむ。
 中部勢では永井清史が急速に調子を上げてきている。今年前半は記念優勝が1回あるが、成績の波が大きくビッグレースでの優出もなかった。持ち味の先行力に自信を失いかけている印象さえあった。
 しかし、8月の全日本選抜では準決勝で敗れたが、4日間先行して逃げ切りが2回、続く小田原記念も連日の先行策で決勝8着と積極性が戻ってきている。
 今回も結果を恐れぬ徹底先行を貫きそうで、中部復活のカギは永井が握っているといっていいだろう。
村上義弘 京都・73期
伏見俊昭 福島・75期
永井清史 岐阜・88期

臨機応変の自在な攻めで平原康多が勝機を掴む!

短走路なら坂本亮馬の先行策も十分ありうる

坂本亮馬 福岡・90期
海老根恵太 千葉・86期
平原康多 埼玉・87期
 坂本亮馬は昨年9月に花月園記念で記念初優勝を達成したが、今年は4月の平塚記念、7月の川崎記念、そして8月の小田原記念を優勝して神奈川の全場記念制覇という大記録を達成した。
 輪界屈指のダッシュ力に恵まれた坂本は捲りが主戦法の印象が強いが、333バンクの小田原記念2日目優秀では九州勢を連れて永井清史を叩いて先行しており、決勝戦も早め早めに仕掛けていったのが好結果につながったと言えるだろう。
 坂本は4月の共同通信社杯春一番では残念ながら落車という結果に終わったが優出を果たしており、今回も小田原の時と同様に後手を踏まない早めの仕掛けで勝ち上がっていくだろう。
 海老根恵太は川崎記念で坂本に次ぐ準優勝、小田原記念も坂本の先捲りに屈して4着に終わったが、川崎の勝ち上がりは3連勝、小田原も二次予選が逃げ切り、準決勝が捲りの1着とようやく復調ムードに入ってきた。
 全日本選抜でも準決勝8着と敗れたが、初日特選は山崎芳仁の先行を捲って1着、2日目スタールビー賞でも佐藤友和-伏見俊昭の先行を捲って連勝と、グランプリ覇者の底力を見せつけた。
 9月5日時点での海老根の獲得賞金ランキングは10位でグランプリ出場のラストチャンスである競輪祭に向けて弾みをつけるためにも、今開催は背水の陣の思いで勝ち上がりを目指していくだろう。
 平原康多は7月後半に体調を崩し、8月は斡旋停止で約50日間欠場した。
 復帰戦となったオールスターでは体調面やレース勘を不安視する声もあったが、欠場前と変わらぬ強さと巧さを見せつけて不安を一掃した。とくに3日目シャイニングスター賞では、イン粘りから永井清史の番手を取り切って武田豊樹とワンツーを決めており、展開に応じた自在戦は天下一品だ。
 333バンクが舞台の今回は、熾烈な先陣争いと位置取り合戦で展開がめまぐるしく変わる激戦レースの連続になるだろうが、平原が巧みに捌いて勝機を逃すことは決してないだろう。
 武田豊樹と神山雄一郎の2人も今年のビッグレースでは安定した強さを見せており、平原が先導役となって関東勢を引っ張っていけば、今回もお馴染みとなった関東トリオでの上位独占が十分に狙えるはずだ。

若手自力型の大活躍でニュースターが誕生する!

脇本雄太が寛仁親王牌に続いて優出を狙う

 共同通信社杯は前回の春一番と昨年の秋本番の2大会連続で、誰もが認める実力者の村上義弘と山崎芳仁が完全優勝を飾っているが、それ以前は09年春一番の永井清史、07年の村上博幸、06年の合志正臣などビッグレース初優勝が何人も誕生している。
 奈良バンクはカントが立っているので捲りが決まりやすいが、展開次第では村上や山崎らの実力者が脱落する可能性が十分にあるし、若手自力型の大逃走に乗ってニュースターの誕生も期待できる。
 脇本雄太は寛仁親王牌での大逃走で市田佳寿浩のGI初優勝に貢献、次場所の岐阜FIでS級初優勝、さらには豊橋記念で記念初優勝を達成と勢いが止まらない。期待されたオールスターでは重くて直線の長いいわき平バンクに苦しめられて一次予選敗退となってしまったが、短走路の今回なら上位陣を相手のレースでも先行での押し切りが期待できるはずだ。
 深谷知広は8月の松山FIで今年4回目のS級優勝を達成。オールスターでは一次予選が逃げ切り、二次予選も逃げて4着に粘り、3回目のGI挑戦で初めて準決勝まで勝ち上がった。準決勝は山崎芳仁の上がり10秒5の驚異的な捲りに屈して5着に沈んだが、川村晃司とのもがき合いを制してしっかり主導権を取り切っており、今回も先行一本でビックレース初優出を狙う。
 西谷岳文は7月の一宮FIで逃げ切りS級初優勝を達成しており、ビッグレースは4月の共同通信社杯春一番に続いて2回目の挑戦となる。春一番では一次予選で先行して7着に敗れたが松岡健介の勝ち上がりに貢献、3日目一般では捲りの2着で稲垣裕之とワンツーを決めており、今回は予選突破とビッグレース初勝利に期待がかかる。
脇本雄太 福井・94期
山崎芳仁がバンクレコードタイの捲りで完全優勝!
 山崎芳仁―成田和也―有坂直樹の北日本勢が前受け、4番手に平原康多―武田豊樹―神山雄一郎―幸田光博の関東勢だが、戦前の宣言どおりに村上博幸―山口幸二の中部・近畿が初手から武田の外で並走となり、武田はいったん7番手まで車を下げる。赤板過ぎの2角から平原が上昇を開始すると、山崎はすんなり車を下げ、平原が打鐘とともに先頭に立つと、武田が内から番手に追い上げる。平原は最終ホーム手前からスパート、武田は村上との競り合いに勝って番手を取り切るが、後方から猛スピードで迫ってきた山崎があっさりと関東勢を捲り切ってしまい、北日本3車が後続を突き放して最後の直線へ入る。成田が懸命に山崎を抜きにいくが、バンクレコードタイの上がり10秒7を叩き出した山崎が押し切って完全優勝を達成、2着が成田、3着も有坂で北日本勢で上位が独占した。

共同通信社杯秋本番の思い出 平成21年10月20日決勝 優勝 山崎芳仁

共同通信社杯秋本番の思い出
平成21年10月20日決勝
優勝 山崎芳仁
 直線が極端に短く、自力型が有利
先行も捲りも早め早めに仕掛ける積極性が必要
 奈良は333バンクの中でも極端に直線が短く(小田原に次いで2番目に短い)、カントもきつい。
 走路は軽くて走りやすく、自力型が圧倒的に有利だが、最終回は中団以内にいないと苦しいので戦いが早くから始まってしまい、先行の場合はもがく距離が400バンクより長くなってしまう。
 先行は赤板前から仕掛けて打鐘では出切っていることが必要で、少しでも仕掛けが遅れると突っ張られて巻き返しも難しくなってしまうが、それでもコーナーをスムーズに踏むことができるし直線も短いので、もがく距離は長くても粘り込むことができる。
 というのが基本原則だが、S級上位の選手たちが集うビッグレースとなると、直線の短い333バンクでも先行での押し切りは難しくなる。
 06年2月に奈良で開催された西王座戦の結果を見てみると、全44レースのうち1着は逃げが4回、捲りが17回、差しが22回、マークが1回(1着失格での繰り上がりあったため)、2着は逃げが6回、捲りが10回、差しが15回、マークが13回となっている。
 捲りがよく決まっており、先手ラインの選手が1着になったのは17回だけである。
 捲りも早め早めの仕掛けが肝心で、遅くても1センターから発進して3コーナーまでに出切っていないと不発になりやすい。一本棒になったらまず苦しいので、早めに動いて、相手に力を使わせ、どこかでタイムの緩むレースにする必要がある。そのため、捲りの選手も早めの仕掛けになるので後ろから差されるケースが多く、差し―捲りの決まり手の出現率が高くなっている。
奈良競輪場 333バンク

奈良競輪場 333バンク
 周長は333m、最大カントは33度25分47秒、見なし直線距離は38m。盆地なので年間を通して風の影響は少ないが、バンク全体が観客席で囲まれていて、建物の合間から風が吹きつけて渦巻くことがある。直線ではとくに伸びるコースはないが、捲りの後ろからカントを利用して外を突き抜けてくるケースもある。