レース展望 寛仁親王牌とは ファンサービス テレビ放送予定 ラジオ放送予定 参考データ 優勝者の横顔

レース展望

注目の出場選手
 
 今年に入って精彩を欠いていた武田だが、5月の大垣GIIIでは先行で2勝を挙げ、高松宮記念杯競輪で準決勝に進出するなどようやく復調の兆しを見せてきた。武田にとって前橋競輪場での寛仁親王牌は一昨年にGI初出場で初優出を決めたゲンのいいバンク。近況は積極的な競走が目立っており、先行有利な前橋での好走は多いに期待出来るし、勝ち上がりでは圧倒的に有利な理事長杯できっかけを掴みたいところだろう。
武田豊樹
武田豊樹(茨城・88期)
   
 金子は高松宮記念杯競輪で負け戦ではあるが3連勝を飾っており、調子の面では大きな心配はしなくでも良さそうだ。しかも、その3連勝は全て切れ味鋭い捲りによるもので、さすが全プロ大会スプリント王者といったところ。金子の世界でも通用し得るダッシュ力は風の影響を受けず、全国有数のスピードバンクである前橋競輪場に最も適していると言っても過言ではなく、悲願のGIタイトル獲得への期待も一気に高まる。
金子貴志
金子貴志(愛知・75期)
   
 
山崎芳仁がGI連覇を狙う!!
 
 理事長杯メンバーで最も好調なのが山崎芳仁だ。高松宮記念杯競輪で初タイトルを獲得し、競輪界で最も勢いがある。500バンクで逃げ切るなど、脚的にも大分仕上がっており連覇の可能性も十分。その山崎後位は伏見俊昭、岡部芳幸、有坂直樹。とくに有坂は6月1日現在で賞金ランク2位と今開催の結果次第で初のグランプリ出場が一気に近づくだけに好勝負を演じてくれるはず。
山崎芳仁
山崎芳仁(福島・88期)
   
 地元からは矢口啓一郎が理事長杯に参戦。先述の武田との並びは微妙だが、抜群のダッシュ力の持ち主だけに展開次第でチャンスは十分にあると言えよう。
矢口啓一郎
矢口啓一郎(群馬・86期)
   
 金子との連係が濃厚なグランプリ覇者・加藤慎平や直線で見せる差し脚の鋭さはトップクラスの小倉竜二も実績的に見ても有力な優勝候補の一角に挙げられる。
加藤慎平
加藤慎平(岐阜・81期)
   
 
積極果敢な若手による主導権争いが最大の焦点
 
 特選のメンバーで目を引くのが若手自力型の多さ。全プロ大会の成績が反映されることもあるが、若手らしい激しい主導権争いには要注目だ。その若手の中で実績的に抜けているのが海老根恵太。ビッグレースでも安定した成績を残すなど、優勝も射程圏内と言っても過言ではない。
 稲垣裕之、永井清史、渡邉一成はともに抜群のダッシュ力が持ち味だ。タイミング次第では逃げ切れるだけの実力は持っており、その動向からは目が離せそうもない。
海老根恵太
海老根恵太(千葉・86期)
   
 そして、特選メンバーの中で最大の注目を集めそうなのがGI初参戦の北津留翼だろう。昨年12月にS級特進、今年1月の久留米FIでS級優勝とまさに順風満帆。一昨年には武田豊樹が同大会でGI初出場、初優出を決めた前例もあるだけに、好走への期待もさらに高まるところ。この若手の挑戦を受ける小嶋敬二も近況は勝ち星を量産しており、通算3度目のタイトル獲得の可能性は十分にあると言えよう。
 また、直線短い33バンクではあるが、追い込み型も高木隆弘、渡邉晴智、小川圭二、兵藤一也、後閑信一、佐藤慎太郎、大塚健一郎といった実力者が揃っており軽視は禁物だ。
小嶋敬二
小嶋敬二(石川・74期)
   
 
前橋ドームで世代交代が加速する!
 
 第15回寛仁親王牌が群馬県のグリーンドーム前橋で開催される。先の高松宮記念杯では88期の山崎芳仁が堂々の逃げ切りで初タイトルを獲得、いよいよ世代交代が本格化しそうで、今大会でもニューヒーローの誕生が期待できる。
 
まだまだベテラン勢の頑張りからも目が離せない
 
 競輪祭、日本選手権に続いて高松宮記念杯も決勝戦はまたもや先行一車の組み合わせとなってしまった。伏見俊昭、村上義弘、日本選手権で復活優勝を遂げた吉岡稔真などのビッグネームたちが準決勝を待たずして次々と脱落、準決勝では若手同士の激しい叩き合いで自力型が総崩れ、という図式がいまやGI戦線の定番となった印象がある。
 旧世代のビッグネームたちの衰えはもはや否定しようがなく、スピードやダッシュ力で勝る若手の台頭によって世代交代の波はますます加速されていくだろう。旧世代の代表的な追い込み選手のひとりである内林久徳が引退を表明した場所で、88期の山崎芳仁が初タイトルを獲得して世代交代を決定づけたのは実に印象的な事件だったといえる。
 もちろん、世代交代が加速しても、旧世代のベテラン勢にタイトル獲得のチャンスがなくなるわけではない。なにごとによらず、変化の波は加速と揺り返しを交互に繰り返していくからだ。日本選手権での吉岡の復活優勝も、揺り返しの時に巡ってきたチャンスだったといっても過言ではないだろう。
 今回も高速の短走路が舞台だけに、若手同士が主導権争いで叩き合うようなら、テクニックで勝るベテラン勢にチャンスが巡ってくるだろう。
 高松宮記念杯の準決勝でも、10人以上いた自力型が潰し合って生き残ったのは2人だけだったし、自力型の潰し合いの隙を突いてデビュー20年目の坂本英一が初のGI優出を決めている。今回も自力型が有利といわれている前橋バンクだが、ベテラン勢の頑張りからも目が離せない。
   
怪物・山崎が新しい時代をつくる
ようやく本来の強さを取り戻した小嶋敬二
 
 デビューしてわずか2年10カ月の若武者・山崎芳仁が初のGI決勝で逃げ切って初タイトルを獲得した。先行一車の有利な展開とはいえ、500バンクで打鐘4角からスパートした度胸のよさ、そしてゴール前で佐藤慎太郎にいったんは交わされながらも再び差し返した強靭な粘り脚は並の怪物ぶりではない。山崎は徹底先行タイプではなく、勝ちにこだわるあまり後手を踏まされて不発になることも少なくないという弱点があった。青龍賞でも兄弟子の佐藤慎太郎を連れていながら8番手になっている。しかし、今後は北日本の先輩がひとりでも多くグランプリに乗れるように積極的な走りを心がけて、北日本を、いや競輪界全体を盛り上げてくれるだろう。 
山崎芳仁
山崎芳仁(福島・88期)
 
 山崎が新世代の代表とすれば、現時点で世代交代の波に抵抗できる旧世代の代表は小嶋敬二だ。小嶋は今年前半は精彩を欠いていたが、4月高知記念、5月の岸和田記念からようやく復調気配が見えはじめ、高松宮記念杯では優出こそ逃しているが、一次と二次予選は驚異的な走りで完全復活をアピールしていた。一次予選は7番手からの捲りで上がりタイムはバンクレコードにコンマ1と迫る13秒2、二次予選は500バンクをものともしない逃げ切りだった。準決勝は4着だったが、平原康多や井上昌己らの若手を叩いて主導権を取り切った上での結果なのでレース内容は悪くない。一昨年の前橋が舞台の寛仁親王牌でも小嶋は二次予選と準決勝を逃げ切って優出しており、今回も新世代の若手に負けない豪快な走りを見せてくれるはずだ。 
小嶋敬二
小嶋敬二(石川・74期)
 
 加藤慎平も今年はまだ優勝がなく、昨年のグランプリ覇者としてはやや物足りない成績が続いている。競輪祭と日本選手権はきっちり優出しているが、5月の地元・大垣記念では4角ハコの絶好の展開になりながら4着に沈み、高松宮記念杯では準決勝敗退とリズムがやや狂っている感じだ。それでも、調子自体は悪くなさそうで、マザーレークカップでは直線3番手から一気に伸びて快勝と加藤らしい差し脚を見せつけている。自力型はいったんリズムが狂うと本調子に戻すには時間がかかるが、追い込みは目標と展開次第ですぐに本来の強さを取り戻すことができるので、今回も勝ち上がり戦で小嶋敬二や金子貴志と連係があれば、取りこぼす心配はまずないと考えていいだろう。 
加藤慎平
加藤慎平(岐阜・81期)
 
 稲垣裕之が好調だ。近況は以前にも増して積極性が出てきて、徹底先行と呼んでおかしくないくらいの熱い走りを見せている。高松宮記念杯は一次予選で末脚を欠いて6着に沈んでいるが、ラインの前田新と郡山久二がきっちりワンツーを決めている。2日目選抜は逃げ切りで前田拓也とワンツー、3日目特選は金成和幸-伏見俊昭の2段駆けラインを捲りで撃破している。近畿はエースの村上義弘が長らく低迷しているが、本来の村上にも負けない積極性で稲垣が近畿勢をぐんぐんと引っ張ってくれるだろう。
稲垣裕之
稲垣裕之(京都・86期)
   
   
兵藤一也が順調な仕上がりで地元優勝を狙う
同期・山崎芳仁を追って武田豊樹が力走する
 
 武田豊樹は2月の静岡記念で左肩の靭帯を損傷したが、高松宮記念杯の一次予選を捲りで圧勝して通算100勝を達成、順調な回復ぶりを見せている。準決勝で先行して6着に沈み優出はならなかったが、悪いながらも前へ前へと出ていこうとする積極性は高く評価できる。同期の山崎の逃げ切り優勝も刺激になっているはずで、決勝戦前日に「先行で押し通せ」と山崎にアドバイスしたのが他ならぬ武田なのだから、今回は武田自身が連日の先行策で勝ち上がりを目指してくるだろう。 
武田豊樹
武田豊樹(茨城・88期)
 
 地元開催のGIに向けて順調な仕上がりを見せているのが兵藤一也だ。4月の西武園記念では4角ハコ回りの絶好の展開になりながら3番手の大塚健一郎に優勝をさらわれるという屈辱を味わったが、汚名返上を期した次場所の高知記念では中団からの大外強襲で2度目の記念優勝を飾っている。高松宮記念杯では4日間勝ち星こそなかったが、準決勝は武田の先行を目標に3着に滑り込み初のGI優出を達成、決勝戦は3着で表彰台にも上がっている。今回は表彰台のより高い位置を目指して、地元のファンの期待にきっちり応えてくれるはずだ。 
兵藤一也
兵藤一也(群馬・82期)
 
 矢口啓一郎は高松宮記念杯では4日間力を出し切れなかったが、5月の岸和田記念では絶好調に近い状態で好走しており、調子は悪くない。初日特選は小嶋敬二に捲られたが先行して2着に粘り、2日目優秀では逆に小嶋の先行を捲って1着になっているし、決勝では山崎芳仁の先行に捲りで迫って2着になっている。今や輪界を代表する2大先行の小嶋と山崎を相手に好走しているのだから、今回も地元戦での活躍が期待できる。 
矢口啓一郎
矢口啓一郎(群馬・86期)
 
 海老根恵太も1か月の欠場明けでレース勘が鈍っていたのか、高松宮記念杯では一次予選で敗れてしまったが、4月のふるさとダービー小松島は決勝4着、川崎記念は決勝2着と相変わらずの好調を維持している。海老根は捲り屋のイメージが強いかもしれないが、近況は意図的に先行策を多用しており、先手ラインが有利の前橋バンクでも十分に大駆けの一発が狙える。 
海老根恵太
海老根恵太(千葉・86期)
 
PAGE TOP


寛仁親王牌の想い出 第8回平成11年7月6日決勝
3番手からの先捲りで、児玉が3個目のタイトル
 第8回大会の決勝戦は、神山雄一郎、山田裕仁、吉岡稔真の3強対決となったが、最も注目を集めたのは80期のルーキー・中村美千隆だった。中村は連日の赤板先行で勝ち上がり、GI初出場で初優出を果たしたが、決勝戦で赤板から迷わず主導権を取りにいき、中村ラインの3番手につけていた児玉広志が3回目のGI制覇を達成している。レースは吉岡稔真-池尻浩一、山田裕仁-東出剛、稲村成浩-神山雄一郎、中村美千隆-小橋正義-児玉広志の並びでスタート。赤板から中村が上昇して先頭に立つと、吉岡は車を下げずに中村の番手で粘るが、吉岡は小橋に捌かれて後退、中村は最終ホームから全開でスパートする。そして、バック手前から4番手の稲村が捲ろうとした瞬間に3番手の児玉が先捲りを放ち、そのまま児玉が先頭でゴール、2着は小橋、3着は大外を伸びた山田だった。

寛仁親王牌の想い出



小回りバンクだが、先手ライン有利とは限らない
前橋バンクの特徴
 前橋はカントが日本一きつい小回りバンクで先手ラインが有利とされているが、トップクラスが集う寛仁親王牌に限っていえば必ずしも先手ラインが有利とはいかない。
 前回前橋で行われた04年の寛仁親王牌の1着の決まり手を見てみると。全47レースのうち逃げ切りが9回、捲りが20回、差しが18回で捲りがよく決まっている。先手ラインの選手が1着になったのは20回で、半数以下となっている。ちなみに短走路では追い込み選手が自力勝負に出ることも珍しくなく、村本大輔と香川雄介が捲りを決めている。
 2着の決まり手は逃げが5回、捲りが5回、差しが11回、マークが26回となっている。数字の上ではマークが断然多いが、先行や捲りの選手の後ろが離れ、別ラインの選手が切り替えて流れ込むというレースがけっこう多いので、単純にマークといってもスジで決まっているとは限らないので注意が必要だ。
 スジで決着したのは23回で、ほぼ半数の24回はスジ違いで決着している。寛仁親王牌は若手自力型の出場が多く、先行もカマシが中心になってしまうので、後ろが千切れてしまうケースが少なくないのである。

 周長は335m、最大カントは36度、見なし直線距離は46.7m。直線は400バンクの花月園、高松、佐世保などよりも長く、無風のドームだが走路は軽くはないので、小回り走路ではあるが先行選手にとっては楽なバンクとはいえない。スピードのある選手ならば捲りが決まりやすいし、4角のきついカントを使って追い込むと外が伸びるので、中団からの追い込みも有効だ。

前橋バンク


PAGE TOP