レース展望

新しい年のタイトル戦線が開幕!

 第10回東西王座戦(GⅡ)が豊橋競輪場で開催される。東王座はS級S班6人を擁する北日本王国を関東や南関東がいかに切り崩していくかが見どころだ。西王座は昨年の競輪界を席巻した近畿が断然の中心だが、昨年のゼロから今年はS級S班が2人と復興気配の九州や地元開催で燃える中部も侮れない。

北日本勢が豊富な機動力で圧倒する!

山崎芳仁 福島・88期  今年で10回目を迎える東西王座戦だが、東王座戦は過去9回の大会で北日本勢が6回優勝しており、今年も層の厚さで他地区を圧倒している。
 山崎芳仁、伏見俊昭、佐藤友和のグランプリレーサーをはじめ、新田祐大、成田和也、佐藤慎太郎とS級S班が6名。加えて本大会で3回の優勝経験を持つ岡部芳幸や、鈴木謙太郎と渡邉一成の成長株の機動力型も揃い、北日本勢の優位は揺るぎそうにない。
 その中でも優勝に最も近い位置にいるのはやはり山崎芳仁だ。暮れのグランプリでは佐藤友和の先行で番手絶好の展開になりながらゴール前で村上博幸の強襲に屈してしまい、大きな悔いを残してしまった。そのため今回はラインの優位さを決して無駄にはしない走りを心がけてくるだろうし、早めの番手捲りも辞さない覚悟で勝ちにこだわってくるだろう。


武田豊樹 茨城・88期   北日本勢に対して真っ向からの機動力対決を挑んでいくのが平原康多と武田豊樹を軸とする関東勢だ。
 平原は昨年後半から調子を崩してしまい、グランプリでも勝負どころで北日本勢を叩けずに大敗してしまったが、昨年の本大会ではしっかり主導権を取り切って武田を優勝に導いている。今年もグランプリでの反省を胸に、たとえ武田との2車の短いラインになったとしても、北日本勢を叩いての主導権取りに燃えてくるだろう。
 武田は昨年のビッグレースでの優勝は東王座戦だけだったが、年間を通して安定した成績を残しており、近況も絶好調に近い状態を維持している。グランプリでは平原と共倒れに終わってしまったが、今度こそはの意気込みで、仮に平原が再び不発の展開になったとしても、早めの自力発進も視野に入れながら連覇を狙ってくるだろう。


海老根恵太 千葉・86期   南関東はS級S班が海老根恵太1人となってしまい、出場予定選手も5人のみで勝ち上がり段階から苦戦は免れそうにない。
 それでも徹底先行で売り出し中の根田空史の頑張り次第では南関東勢の急浮上がありえるし、もちろん海老根の一発も十分だ。
 海老根は09年の本大会では堂々の逃げ切りでビック初優勝を飾っており、今回も決勝で南関東ラインができれば北日本勢や関東勢のスキを突いての思い切っての先行策もありうるだろうし、いつもどおりの単騎戦になったとしても、得意の捲り追い込みでの逆転が期待できる。

近畿トリオの連覇に死角はない!

村上博幸 京都・86期   西王座戦での市田佳寿浩の優勝から始まった昨年の近畿旋風は、後半戦に入ってからは北日本勢の反撃にあって一時的に勢いを失ったが、最後のグランプリも村上博幸の優勝できっちり締めくくっており、村上兄弟と市田のSSトリオの勢いは今年も止まりそうにない。
 グランプリでの村上義弘は絶好の捲りごろである4番手の位置が難なく取れたが、ラインの先導役を務める責任感からか早めの2角過ぎからためらいもなく仕掛けていっており、結果は7着ながら改めて男気のある走りを全国のファンに見せつけた。
 今回も村上義弘がラインの先導役を務めるならば、近畿勢での西王座戦連覇の可能性は限りなく高いだろう。

小嶋敬二 石川・74期   近畿勢とは対照的に昨年はずっと低空飛行を続けてしまったのが中部勢で、6人いたS級S班も今年は加藤慎平と山口幸二の2人だけになってしまった。今回も勝ち上がり段階から苦戦が避けられそうにないが、地元地区の開催で意地の走りを見せつけてくれることを期待したい。
 そんな中部勢にあって、かすかな希望の光となっているのが小嶋敬二の復活だ。小嶋は昨年はビッグレースでの優出はなかったが、後半戦に入ってからぐんぐんと調子を上げてきて、競輪祭でも1着1回、2着2回と好走している。
 小嶋は07年と08年に西王座戦を優勝と本大会とは相性が良く、09年には加藤慎平が優勝して中部勢は3連覇の実績を持っている。今回も小嶋は連係実績豊富な加藤や山口と好タッグを組んで、地元ファンの期待に応える走りを必ずや見せてくれるだろう。

坂本亮馬 福岡・90期   今年は坂本亮馬と大塚健一郎の2人が新しくS級S班入りを果たした九州勢の一発も侮れない。
 坂本は昨年は日本選手権と共同通信社杯春一番で優出、記念も3Vと大活躍だった。後半戦に入ってからは落車の影響もあってやや低迷したが、現在では好調時のスピードが戻ってきている。
 暮れのSSカップみのりでは逃がされる展開になって9着と大敗したが、今年はあと一歩及ばなかったグランプリ出場を目指して年頭から飛ばしてくるはずで、今回も得意の自在戦を駆使して優勝を狙ってくるだろう。

 大塚は昨年は全日本選抜とオールスターで優出、その後もFⅠ戦ながら6連勝をマークと展開不問の鋭い差し脚を発揮して快進撃を続けている。
 SSカップみのりでは6着に敗れたが、神山雄一郎や加藤慎平の追い上げをしのいで坂本の番手を死守、追い込み型の意地を見せつけており、今回も坂本を目標に念願のビッグ初制覇が期待できる。

平原の先行に乗った武田が初優勝

 平原康多-武田豊樹-神山雄一郎、海老恵太-兵藤一也、山崎芳仁-伏見俊昭-成田和也-佐藤友和の並びで周回する。赤板前から山崎が上昇すると、平原はすんなり車を下げる。中団外並走となった海老根が打鐘前に仕掛けるが、山崎が突っ張り、続けて平原が一気にカマして主導権を奪ってしまう。山崎は3番手への飛びつきに失敗、最終バックから伏見が捲り上げるが、合わせて番手から抜け出した武田が優勝、伏見後位から成田が2着に突っ込み。伏見が3着だった。

語り継がれる名勝負 東王座戦の思い出 第9回東王座戦決勝 優勝(2)武田豊樹
語り継がれる名勝負
東王座戦の思い出
第9回東王座戦決勝 優勝(2)武田豊樹
村上義弘の先行で近畿勢が上位独占

 村上義弘-村上博幸-市田佳寿浩-前田拓也が前団、5番手に単騎の山口幸二、小川勇介-園田匠-岩津裕介-吉永好宏が後攻めの並びで周回。青板過ぎのバックから小川が上昇するが村上は引かず、打鐘前に小川は誘導員を交わして先頭。そこで村上は6番手に引き、最終4角から一気にカマす。園田が近畿4車の後ろに切り替え、バックから捲り上げるが車は伸びない。直線に入って兄・義弘の番手から弟・博幸が抜け出すが、3番手から市田がゴール前鋭く伸び優勝、博幸が2着、前田が3着。

語り継がれる名勝負 西王座戦の思い出 第9回西王座戦決勝 優勝(2)市田佳寿浩
語り継がれる名勝負
西王座戦の思い出
第9回西王座戦決勝 優勝(2)市田佳寿浩
東西王座戦を占う豊橋競輪場400mバンク特性を知る
直線がやや長めだが、クセがなく走りやすい
冬場は北風が強く、バック向かい風が多い

  400バンクの中では直線がやや長めで、カントも若干きついが、基本的にはどんな脚質の選手でも十分に力を発揮できるクセのないバンクで、選手間でも走りやすいとの評価が高い。
 05年8月に開催されたふるさとダービーの決まり手を見てみると、全44レースのうち1着は逃げが8回、捲りが8回、2着は逃げが7回、捲りが7回、差しが13回、マークが16回となっている。ビッグレースのわりに逃げが善戦しており、先手ラインの選手が1着になったレースも20回と多かった。
 ただ、前回のふるさとダービーは8月の夏場開催だったが、2月の冬場はバック向かい風の強い日が多いので、東西王座戦では先行型の苦戦が予想される。
 バック向かい風が強い日は、先行はホームからスピードを上げてバックを乗り切らなければならないので末脚が甘くなってしまう。捲りも遅めの捲り追い込みのほうが有効で、2センターを外で我慢すれば4コーナーから山降ろしで突き抜けることができる。

 周長は400m、最大カントは33度50分22秒、見なし直線距離は60.3m。昭和24年の開設時は333バンクだったが、昭和42年に400バンクに改修された。333バンクの名残でカントが若干きついのでコーナーは大外を回ってもふくらみにくく、直線は山降ろしをかけて突っ込むとよく伸びる。風の強い日は内が重いので、イン粘りの成功率は高くない。