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 第26回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)が宇都宮競輪場で開催される。優勝争いの中心となるのは高松宮記念杯競輪で今年前半の近畿旋風に待ったをかけた地元・関東勢だ。後半戦のスタートとなった寛仁親王牌では関東の地で再び近畿勢に優勝をさらわれたが、武田豊樹と神山雄一郎の栃茨コンビが主力となって今度こそは関東の牙城を守り抜く。しかし、山崎芳仁の破壊力や村上義弘の魂の先行も健在で、真夏の決戦にふさわしい熱い戦いが繰り広げられるだろう。


武田と神山の栃茨コンビが関東の牙城を守り抜く!
復活なった山崎が大ギアの破壊力を見せつける
 先の寛仁親王牌は新鋭・脇本雄太の大活躍によって終始近畿勢リードのまま幕を閉じたが、そんな中で地元・関東勢からただ1人決勝進出を果たしたのが武田豊樹だ。
 準決勝は繰り上がりの3着とひやひやものの勝ち上がりだったが、決勝を含めた4日間の走りは意欲的で出来の良さを印象づけていたし、2日目ローズカップでは村上義弘の先行を捲って1着になっている。
 今回は残念ながら平原康多が不出場だが、寛仁親王牌では宇都宮の代名詞ともいうべき神山雄一郎の出来の良さも光っていた。準決勝は惜しくも4着と敗れたが、初日特選では渡邉一成の先行に乗って1着になっている。昨年5月の宇都宮記念では4年ぶりの地元記念制覇ともちろんバンクとの相性は抜群で、今回も武田を目標に5年ぶりのGI制覇が十分に狙える。
 今年前半はリズムを崩していた山崎芳仁がようやく復活してきた。6月の弥彦記念では武田の先行を7番手から捲り切り、10秒6のバンクレコードを叩き出して優勝し、大ギアの破壊力の凄まじさを改めて見せつけた。続く寛仁親王牌でも今年初のGI優出を決めており、昨年の全日本選抜の覇者である山崎の連覇に大きな期待がかかる。
 新田祐大も寛仁親王牌の準決勝は平原の先行を捲って1着で通過、高松宮記念杯に続いての決勝進出と絶好調の状態に近い。
 渡邉一成も新田同様に高松宮記念杯と寛仁親王牌で連続優出を決めているし、伏見俊昭も相変わらずの高い安定感を維持している。寛仁親王牌の決勝では4人揃った北日本勢は見せ場なく終わったが、今回も近畿勢に負けない北日本旋風が吹き荒れるだろう。
武田豊樹 茨城・88期
武田豊樹 茨城・88期
山崎芳仁 福島・88期
山崎芳仁 福島・88期

近畿旋風がますます加速する!
中部勢はベテラン選手たちの頑張りに注目
村上義弘 京都・73期
村上義弘 京都・73期
小嶋敬二 石川・74期
小嶋敬二 石川・74期
山口幸二 岐阜・62期
山口幸二 岐阜・62期
 近畿旋風は止んではいなかった。地元地区の高松宮記念杯では近畿勢からの優出がなく、さすがの近畿旋風もこのまま収束するかと思われたが、寛仁親王牌では脇本雄太の先行に乗ってワンツーフィニッシュを決め、市田佳寿浩が涙のGI初制覇を飾った。これで近畿のSSトリオのグランプリ出場はほぼ確定的で、暮れの大一番に向けて近畿旋風の勢いはますます加速していくはずだ。
 惜しくも準優勝に終わった村上義弘は、寛仁親王牌では4日間未勝利に終わったが、勝ち上がりの3走はすべて主導権を取り切っている。その熱い走りがファンの心を打ち、オールスターのファン投票では初の1位に選出されており、後半のタイトル争いでもファンのため、近畿勢のために、魂の走りをたっぷりと見せてくれるだろう。
 中部勢はS級S班を6人も擁しているが、若手選手たちがいまひとつピリッとせず、高松宮記念杯に続いて寛仁親王牌でも中部勢からの決勝進出は1人のみと寂しい結果に終わってしまった。
 目立っているのはベテラン勢の頑張りだ。小嶋敬二は寛仁親王牌では準決勝で7着と敗れたが、二次予選Bでは敢えて深谷知広との別線勝負を選択、いかにも小嶋らしい豪快な捲りで勝ち星を挙げている。近況は成績の波が大きく、ビッグレースの決勝戦からはしばらく遠ざかっているが、高松宮記念杯でも捲りと追い込みで2勝をマークと調子は上向きだ。
 山口幸二も寛仁親王牌では準決勝で2着失格と無念の結果に終わったが、今年は日本選手権、高松宮記念杯と連続優出を果たしており、相変わらずの高いポテンシャルを維持している。寛仁親王牌でも初日特選と二次予選Aはともに目標不発の苦しい展開を凌いで準決勝まで駒を進めており、今回も順調な勝ち上がりが期待できる。

渡邉晴智が展開不問の差し脚を発揮する!
若手機動力が好調な九州勢の巻き返しに期待
 南関東勢では海老根恵太がなかなか波に乗れずに苦しんでおり、寛仁親王牌では二次予選Bで敗退となったが、直前の弥彦記念では得意の捲りで勝ち上がって決勝進出と調子は決して悪くない。
 近況は仕掛けの遅さがネックになっていて、前橋では一度も見せ場を作れずに終わっているが、500バンクの宇都宮ならば多少遅めでも仕掛けどころはいくつもあるので、グランプリ覇者の底力発揮に期待したい。
 渡邉晴智は上昇気配だ。昨年の高松宮記念杯以後はビッグレースの決勝戦に手が届かない状態が続いていたが、今年の高松宮記念杯で優出して復活の手がかりを掴んだ。
 寛仁親王牌では準決勝で落車に巻き込まれたが、初日特選は目標の海老根が不発でバック9番手の展開に追い込まれながらも中コースを強襲して2着に届いている。今回も追い込み有利の宇都宮バンクだけに、展開不問の鋭い差し脚を十二分に発揮してくれるだろう。
 九州勢は日本選手権では2人が決勝進出を決めたが、寛仁親王牌では高松宮記念杯に続いて九州勢からの優出者はゼロとなり、準決勝まで勝ち上がった選手も井上昌己のみだった。それでも、荒井崇博や坂本亮馬に、寛仁親王牌では敗者戦ながら3勝を挙げた松岡貴久らの機動力が揃っているので、後半戦では必ずやの巻き返しがあるだろう。
 坂本亮馬は二次予選Aで敗れてしまったが、一次予選では打鐘先行で逃げ切って九州ラインで上位を独占しているし、3日目特選も逃げ粘りの2着で大塚健一郎とワンツーを決めており状態は悪くなかった。今年は日本選手権で井上昌己とともに決勝進出、5月・平塚で通算3度目の記念優勝と勢いに乗っているだけに、今回までにしっかりと立て直してくるだろう。
 松岡貴久は寛仁親王牌では一次予選で敗れたが、2日目特一般は吉田敏洋の番手で粘って1着、3日目選抜は捲って合志正臣と1着同着、4日目優秀も4番手から捲りで1着と、捲りのスピードだけではなく、レースの巧さも光っていた。直前の四日市記念では園田匠の記念初優勝に貢献しており、今回も九州勢を連れての活躍が期待できる。
 中国勢では三宅達也が復調気配だ。今年はまだ目立った結果は残せていないが、日本選手権では準決勝まで駒を進め、5月・平塚記念では3連勝で決勝進出を決めている。
 高松宮記念杯では一次予選で敗れ、最終日は途中欠場しているが、次場所の久留米記念では二次予選Aと準決勝Aをともに2着で勝ち上がりと元気な姿を見せており、先行・捲りのスピードも絶好調時に近いものが戻ってきている。
 四国勢では小倉竜二に鋭い差し脚が戻ってきている。寛仁親王牌では二次予選Aで敗れたが、一次予選では7番手から捲った佐々木則幸にスピードをもらい、直線ではさすがのコース取りで中割り強襲を決めて1着に突き抜けている。
 日本選手権では敗者戦ながら1着2回、2着1回の好成績を挙げ、高松宮記念杯では準決勝までの勝ち上がりと今年に入ってから大舞台での活躍が目立ってきている。
 佐々木則幸もFIながら5月・高知と6月・小松島を連覇して調子は上向きで、寛仁親王牌の二次予選Bでは深谷知広を叩いて主導権を奪い取るなど積極的な攻めを見せており、今回も佐々木と小倉の四国コンビでの勝ち上がりが狙えるだろう。
渡邉晴智 静岡・73期
渡邉晴智 静岡・73期
松岡貴久 熊本・90期
松岡貴久 熊本・90期
三宅達也 岡山・79期
三宅達也 岡山・79期
小倉竜二 徳島・77期
小倉竜二 徳島・77期

全日本選抜競輪の思い出 第22回決勝(いわき平・平成18年12月5日)
合志正臣が中コースを鋭く伸びてGI初優勝を達成!
 合志正臣は06年10月の共同通信社杯でGII初優勝を達成したが、続く11月のふるさとダービー防府では落車・失格となり、12月の全日本選抜の時は決して万全の状態ではなかったが、荒井崇博の捲りに乗っての直線強襲でGI初優勝を達成した。決勝戦は荒井―合志が前受けで、市田佳寿浩、渡部哲男が続き、5番手以降は平原康多―神山雄一郎―手島慶介―兵藤一也―稲村成浩の並びで周回。赤板過ぎから上昇を開始した平原が打鐘で先頭に立つと、荒井は神山のインで粘る。すると手島も神山のアウトに追い上げたが、神山は荒井、手島との競り合いにも勝って番手を死守。最後の直線では番手から抜け出した神山の優勝かと思われたが、荒井の巻き返しに乗って中コースを伸びてきた合志がゴール寸前で神山を捕らえてGI初優勝、2着は神山、3着には平原が逃げ粘った。


全日本選抜競輪を占う  500m宇都宮バンクの特性を知る
全面改修で以前よりも先行が粘れるようになった
半数近いレースで先手ラインが勝利している
 周長が500mの宇都宮競輪場は、ホーム側のゴール前にスタンドがなく、バック側にメインスタンドがある全国でも珍しい競輪場だったが、07年からメインスタンドの改築工事が始まり、昨年4月にリニューアルオープンした際にバンクのホームとバックが入れ替えられた。
 それに伴いバンクも全面改修され、軽くて走りやすいバンクに生まれ変わり、ゴール前の見なし直線距離が4mほど短くなっている。
 リニューアルオープン後の昨年5月に開催された記念の決まり手を見てみると、全44レースのうち1着は逃げが6回、捲りが13回、差しが25回、2着は同着が1レースあり、逃げが5回、捲り7回、差しが19回、マークが14回となっている。
 周長は以前と変わらぬ500mだが、選手からは「以前より直線が短く感じられた」という声が多く聞かれ、先行選手の健闘が目立っていた。全レースの半数近い21レースで先手ラインの選手が1着になっている。特に初日と最終日は11レースのうちの半数以上の6レースで先手ラインが勝利している。
 それでもやはり、2日目の二次予選や3日目の準決勝などの勝ち上がりの厳しいレースでは先手ラインは苦しく、捲りがよく決まっている。
 3日目の準決勝では準決勝Cは先手ラインの番手の選手が1着だったが、準決勝Bと準決勝Aでは3個レースとも捲り選手が1着になっていた。
 直線が幾分短くなったとはいえ、そこはやはり500バンクなので、追い込み型はラインの4番手からでも十分に勝負圏内で、交わしの交わしの出現率も高い。

宇都宮バンク
宇都宮バンク

周長は500m、最大カントは25度47分44秒、見なし直線距離は63.3m。捲りは以前は2角からの仕掛けが基本とされていたが、改修後は3角捲りがよく決まるようになった。直線では中バンクから外側がよく伸びていたが、改修でコーナー出口からの傾斜がやや緩くなり、外側のコースの追い込みが効きにくくなっている。