ワールドカップ第1戦シドニー大会レポート
 
配信日:12月7日
 
 
■12月2日(最終日) 天候:快晴 気温:24度 観客:2800人

 あっという間に今日は最終日。朝から男子スプリントの予選が行われている。
 予想はしていたが、68人は苦笑いさえでてしまうエントリー数。
 前日、渡邉一成が「まず、本戦に上がることが大事です。そこに残れないと何も始まらないですから」 と言っていたが、まさにそのとおり。
 本戦に進めるのは、泣いても笑っても上から16人のみ。
 エントリーリストを見ながら、良いタイムを出しそうな選手を数えていくと、明らかに16人以上いる。
 しかし、この種目に出場する北津留翼も渡邉も200mTTは、しっかり強化しているはずで、本来の力を出せれば予選の突破は何ら夢の話ではない。
 しかし、次々と出走順が進むたびに、「これは10″4台では、危ないかも?」という気がしはじめる。
 走り終わった北津留のタイムは10″424、渡邉はまさかの10″555。順位はそれぞれ19位と29位。
 全員走り終えてみれば、実に10″3台の選手が予選落ちするという、驚きの結果。
 増えたのはエントリーだけではなく、レベルも確実に例年より上がったということになる。
 しかし、残った16人の内訳はフランス人4人、イギリス人3人、オーストラリア人3人、ドイツ人3人、オランダ人2人、イタリア人1人というなんとも偏った結果。しかし、この結果が今のスプリント種目勢力を反映していると言えるのではないだろうか。

渡邉のコメント
(“555は自分でもびっくりでしょう?”の問いに)
「ハイ、どうしようもないですね。アップで突っ込み(ハーフラップのこと)5.1とか出てたんでいけるんじゃないかなと思っていたんですけど、練習でできていたことが本番でできないんですよね。
 練習のときに考えてやっていることが、本番になると頭が真っ白になっちゃって。
 ローリング周回のスピードも自然に速くなっちゃって、それで力をロスしちゃたみたいです。
 もう・・・ショックですね。250バンクの感覚をもっと身体で覚えないとダメでしょうね。
 考えないで身体がうごくように。これから、板張り250を走れる機会がたくさんあるので、何度も練習します。すぐに改善できる課題がわかったので、次を見てください」

北津留のコメント
「うーん、なんでしょうねぇ。伸びがないですね。アップのときに軽いギアを踏みすぎて、回転系の筋肉が疲れちゃったかもしれないです。ギアはもう一枚あげたかったんですが、監督は反対みたいで・・・(“フレームやポジションに関してはまだ違和感が?”の問いには)そうですね。今のポジションはチームスプリント用と割り切って、次はフレームをもどしてみたいと思います。次の北京までにもう少しいろいろ考えて、北京では本戦に出られるようにします」

 スプリント決勝はミカエル・ブルガンと、着実に力をつけてきたケビン・シローのフランス人対決。
 経験に勝るブルガンがイキのいい若手を制し、初戦のチャンピオンになった。3位はクリス・ホイ。

アップ中も他のライダーのタイムが気になり、視線は大型ビジョンに釘付け
アップ中も他のライダーのタイムが気に
なり、視線は大型ビジョンに釘付け

 

北津留のタイムトライアル。本来の力を早く出せるようになればいいのだが
北津留のタイムトライアル。本来の
力を早く出せるようになればいいのだが

 

スプリント表彰台。早くここに上りたい
スプリント表彰台。早くここに上りたい




 さて今日は、日本トラック中長距離にとって、記念すべき日となった。
 飯島誠、盛一大のコンビが、マディソンに出場。思えば昨シーズンのマンチェスター大会。
 マディソンに出場させてくれと懇願する2人にマニエ監督は、「今の君たちの技術では危険だ。怪我をさせたくない」と出場を許可しなかった。あれから、およそ10ヶ月。機会を見つけてはマディソンを走り、アジアでは十分経験を積んできた。
 そして、今日ついに日本マディソンチームが世界にデビューだ。
 18チーム中、9位までが決勝に進める予選、日本チーム、初手は集団後方から。周回を重ねるごとに少しずつ上昇する。
 第1スプリントで前に出ようとするが、前方にいる選手のタッチなどに阻まれてなかなか前に出られない。
 そのうち残り55周でスペインチームが単独逃げ体制に入り、あっという間にメイン集団をラップ。
 残り40周のセカンドスプリントでは、前に踏み上げ、スプリントに加わる。
 5位通過で惜しくもポイントがとれなかったようにこちらからは見えたのだが、実際は3位通過しており2ポイントをゲット。
 残り35周でチームTOSHIBAとベルギーの逃げに乗ろうとタッチを繰り返しながら必死に追う。
 距離は1/4周。しかし、差は少しずつ離れ、逆に追ってきたオーストラリアと100%MEチームさらに1ラップしているスペインチームと連結。
 前の集団が残したポイントを争うが、日本は第3スプリントも得点することができない。
 残り5周あたりから、飯島が猛追を開始。盛もそれを引き継ぎ、最後のポイントゲットを狙う。
 しかしギリギリのところまで追いすがりながらも、あと一歩足りず、ポイントは2のまま。順位は10位。
 あと1ポイントでもとっていればというところで残念ながら敗退することとなった。
マディソン。タッチもスムーズになってきた。
マディソン。
タッチもスムーズになってきた。




飯島のコメント
「2回目のスプリント、点取れてたんですね。僕も、ダメだったかと思ったんですけど。
 ワールドカップでマディソンを走るのははじめてで、走る前から不安だったんですが、予選ということもあり、2点ですけとポイントもとれて、はじめとしては、こんなものではないかと思います。今は走ることでいっぱいいっぱいですね。
 本当はタッチのタイミングを予測しながら、残り2、3周でいい位置にいられるように考えながら走ることが必要です。
 ペースは速いですけど、走ってみると意外と大丈夫。見てるほうがこわいですね。もう少しやれば、決勝にはいけると思います。
一戦一戦ステップアップしていくつもりで頑張ります」

盛のコメント
(“見ていてヒヤっとした場面が何度かあったが”の問いに)「ありましたよ!何度かじゃなくて何度も!
集中が切れると、危ないですね。(はじめて世界のマディソンを走ってみてどうだった?)
うーん、今回の目標は決勝に行くことと、5ポイントはとることでした。
 そういう点で行くと×ですね。でも自分としては、初めてでこれだけやれればまぁまぁかなと思います。まだ、身体がこの感覚を覚えているうちに北京大会が来るのはありがたいですね。次は決勝にいけるようにしたいです」

競走の反省会をする飯島と盛
競走の反省会をする飯島と盛



 20人近くがこの狭い幅員のトラックを走り、ぶつかる、押すはあたりまえ。前を走るライダーがタッチのためふくらんでくる、右もタッチ、左もタッチでアンコになる、このようなことが平均時速50キロをゆうに超える速度のなか行われるわけだから、持久力もさることながら、本当に技術と度胸のいる競技である。この競技への参加を果たしたこと、そして予選ながら強豪とわたりあい、ポイントもとったことを素直に評価したい。日本チームのマディソンの歴史、ここにはじまる。近い将来、「はじめは決勝に進むのも本当に大変だった」と振り返ることができればいいと思う。
マディソンとは本当にスリリングな競技だ
マディソンとは本当にスリリングな競技だ

 



 
 ワールドカップ初戦の結果は決して芳しいものではなかった。
 しかし、世界のレベルが確認でき、収穫は多かった大会であったように思える。
 その収穫をどう活かすか。そろそろ、トライ&エラーを繰り返すステージではなくなってきている。
 最速の修正を行い、北京大会での躍進を心に誓って欲しい。
 




>>back
 
COPYRIGHT(C) JAPAN KEIRIN ASSOCIATION, All Rights Reserved.