ワールドカップ第1戦シドニー大会レポート
 
配信日:12月7日
 
 
■12月1日(2日目) 天候:曇り時々雨 気温:22度 観客:3000人

天気のよかった昨日とはうって変わって今日は曇天。
 自転車で競技場入りする選手のなかには、時折降る雨に濡れながら入ってくるライダーも。
 今日は伏見俊昭がケイリンに出場。アテネオリンピックのチームスプリント銀メダリストは、今度は個人種目ケイリン1本に狙いを定めている。
 参加人数の多さから6ヒートにもなった予選は1着しか勝ちあがれないハードなプログラム。
 さらに、そこで負け下がって敗者復活回りとなっても1着のみの勝ち上がりということで、ケイリンという種目の特性を考えても、強い選手でも少しでも油断すると決勝はおろか2回戦にもすすめないフォーマットだ。
 初戦、伏見の組は他にウクライナのアンドレイ・ヴィノクロフ、マレーシアのジョサイア・ヌグ、トレードチーム香港プロサイクリングのヤフイ・ガオ、韓国のチョイ・ラエ・サン、キューバのアーメド・ロペス。
 楽な組ではないが、1着勝ちあがりでテオ・ボスやクリス・ホイ、ミカエル・ブルガンなどがいないだけマシと思わなければならない。
 外枠からの発走となった伏見は後方での周回となった。
 ヌグ、チョイ、ロペス、ヴィノクロフ、伏見、ガオで周回を重ねる。ペーサー退避後のホームから伏見がかけ始めるが、あわせて出たロペスの抵抗にあい、捲くりきるのにほぼ1周使ってしまう。捲くりきったとみるや、その後ろにいたヴィノクロフ、ヌグが伏見をかわしにかかる。最終4角で伏見は力尽き、ヴィノクロフ、ヌグ、伏見の順で入着。
 ヴィノクロフは伏見を交わした際、自分の軌道を維持しなかった(早く伏見のコースに入りすぎた)として、降着をとられヌグが2回戦に進出を決めた。
 伏見は敗者復活へ。こちらのメンバーはポーランド、ダミアン・ジェリンスキー、オーストラリアのスコット・サンダーランド、スロバキアのマティ・スリホフスキー、ベネズレラのエルソニー・カネロン。
 周回はサンダーランド、スリホフスキー、伏見、ジェリンスキー、カネロンの順。
 ペーサー退避後もあまりペースがあがらず、残り2周で伏見がスパートをかける。
 残り1周のホーム、伏見が1人で来たのを見て、先頭のサンダーランドが伏見を行かせ伏見の後ろにはまる。
ラスト4角、伏見の後ろにはまって絶好の番手となっていたサンダーランドが伏見に襲いかかるが、残った力を振り絞り、伏見は逃げ切り。難しい1着権利で2回戦進出を決めた。
 終わってみれば2回戦進出を決めた12人は超豪華メンバー。
この12人のなかに伏見がはいっていることを誇らしく思える。

ケイリン
ケイリン

 

 

伏見、出走表とにらめっこ。作戦を頭に描いているのか
伏見、出走表とにらめっこ。
作戦を頭に描いているのか

 

 

 






 続く準決勝は苦笑いしたくなるようなメンバー。
 オランダのテオ・ボス、イギリスのロス・エドガー、イタリアのロベルト・キァッパ、チームTOSHIBAのシェーン・ケリー、ドイツのカーステン・ベルゲマン。
 だが先ほど言ったように、残った12人のほとんどがスーパー級の選手たちなので、どちらの組に入っても同じこと。
 向こうの組はホイやブルガンだ。
 競走は内枠からスタートした伏見がペーサーの後ろを奪取。そのあとをベルゲマン、ケリー、キァッパ、エドガー、ボスと続く。ペーサー退避直前にあがってきたエドガーに伏見がうまく飛びついたが、その外をキァッパ、そしてボスが捲くっていく前にエドガー、横にケリーと、ふたをされたような形になり伏見の進路がみつからない。
 最終4コーナーでやっと内があき、めいっぱい突っ込むが、さすがに上位を捉えるにはいたらず決勝まであと一歩の4着で7~12位決定戦に進むこととなった。
 ポイント獲得のために一つでも上の着をとりたい伏見。
 順位決定戦のメンバーは伏見のほかにフランスのミカエル・ブルガン、チームRAD-NET.DEのステファン・ニムケ、シェーン・ケリー、カーステン・ベルゲマン、ヤフイ・ガオ。
 伏見、ブルガン、ケリー、ニムケ、ベルゲマン、ガオの周回は、ペーサー退避前から最後尾ガオが一気に前に出て来る。
 それを追走しようとする伏見だが、やや踏み出しが遅れ2車身ほどあけて追う形に。
 残り1周でようやく捕らえるも、バックでは伏見を追走し機をうかがっていたブルガン、ケリーが次々とスパート。
 ガオを追走するために脚を消耗していた伏見に抵抗する力は残っておらず、4着で総合10位となった。

ケイリン準決勝。ボス、エドガー、キァッパ、ケリー・・・どう戦えば・・・
ケイリン準決勝。ボス、エドガー、
キァッパ、ケリー・・・どう戦えば・・・


伏見のコメント
「いやー、やっぱりアジアとは違いますね。順位決定戦は香港のヤツが来たのは見えてたんですけど、
山おろし気味にきたので、結構はやくって、少し追うタイミングがおくれて離れちゃいました。
あそこでつけてれば、また違ったと思うんですけど・・・
その前の準決はエドガーの後ろに行くまでは作戦どおりだったんですけど、エドガーが思ったより
行ってくれなくて、少し流したんですよね。そのときに前に出なきゃダメでした。
でもあのレースはエドガーもいっぱいいっぱいみたいだったので、そのエドガーが総合2位になれるなら、
僕も展開次第では行けるような気がします。
(“これまでと競走のスタイルが変わったような気がするが?”の問いに)
これまでは追走が多かったですからね(笑)。
やっぱり、こういった強いメンバー相手にするなら、先行しかないですね。
なにもしないで終わっても仕方ないし、これからは積極的に行きますよ!暴走はしたくないですけどね(笑)」

 これまで、何度か世界での伏見の競走を見てきたが、今回は明らかに様子が違う。
 本人も言っていたように、積極性があり、見ていてエキサイトできるアグレッシブな競走スタイルに変わった。
 負けてなお強しの印象が残るレースが多くなったのは、よい兆候に違いない。
 世界のビッグネームを相手に伏見が勝どきを上げる日は、もしかしたら遠くはないのかもしれない。

  さて、決勝だが、クリス・ホイが大逃げ。それをロス・エドガーが後ろで車間をあけてサポートするイギリス・ライン作戦。
 後ろから捲くりをうったボスだが、ややタイミングが遅かったことや、キァッパなどの抵抗にもあい外をまわらされたこともあって届かず。1着ホイ、2着エドガー、3着ボスとなった。
 捲くりが届かなかったボスはかなり悔しそう。通常なら、持ち前のスピードであっさりと来てしまうはずだったが、逃げているのがホイ、その後ろを走っているのが同じイギリス、しかもエドガーだったということを計算に入れるべきだったかもしれない。
 一方、世界選ケイリンチャンピオンの面目躍如のホイは、シーズンはじめから自分の得意戦法で優勝を手に入れ、オリンピック出場に大きく前進した。




一方、1kmTTには大森慶一が出場。
 1′03″1のベストタイムを持つ大森だが、今回は思ったようにタイムがあがらず1′06″135というタイムで14位となってしまった。


大森のコメント
「ギアを一枚上げて、スピードに乗ろうと思ったんですけど・・・・やっぱりいつもの回転じゃないと・・・
いや、これは言い訳ですね。これが、今の実力ですハイ。残り1周半でキツイなと思って、そのあとは脚が回んなくって完全に
惰性でした」


 全員のリザルトを見ると、大森がベストタイムを出していれば、銀メダルがとれたはずで、非常に残念に思えてしまう。
 いつも、明るい大森だが、今回は下を向いてばかり。「まあ、そういうときもあるよ」と慰める伏見に対しても言葉少なであった。

大森。表情に悔しさがにじみ出る
大森。表情に悔しさがにじみ出る

「そういうときもあるよ」「最後、脚全然まわんなかったス」
「そういうときもあるよ」
「最後、脚全然まわんなかったス」





盛一大はスクラッチに出場。
 予選、前方からスタートした盛は、ローリングスタートの号砲後、すぐに先行体制に入り、ラップ狙い。
 盛を逃がすかのように見えた集団は徐々にスピードを上げ、盛を捉えに行く。まる10周逃げたところで、集団に吸収。
 そのうちに7人が逃げ集団を形成して逃げ始めるが、盛ははじめの逃げで力を使っており、すぐには追えない。残り8周、盛のいる第2集団からひとり、ふたりと抜け出て逃げ集団を追い始めるが、盛は依然として動かず。
 残り4周、周回ごとに逃げ集団から離されていた第2集団はついに1周の差を許してしまいラップされる。
 この時点で万事休す。盛は決勝進出を逃がしてしまった。

盛のコメント
「序盤の逃げは別に作戦と言うわけではなかったんです。はじめは、後ろで待っていてバラけてきたら、逃げにとびついて行こうと考えていたんですが、スタート位置が思いのほか前だったので普通に踏んでたら、後ろと差が開いてました。
 ああなったら、行きたくなっちゃうんですよね。あの逃げに2、3人ついてきてくれたらよかったんですけど。
 誰も来ないし、泳がされちゃった感じです。まぁ、何を言っても言い訳に聞こえそうなんで、明日マディソンで頑張って、名誉挽回します」

1人で果敢に逃げる盛
1人で果敢に逃げる盛盛「泳がされちゃいました」
盛「泳がされちゃいました」




 ポイントレース予選に出場した和田見里美。
 道中、時折前へ出る素振りを見せるが、それほど積極的なものとはならず、集団のなかで、前に行ったり、後ろにさがったりを繰り返す。
 結局、スプリントには一度も加わることなく、決勝進出を逃してしまった。


和田見のコメント
「何度か行こうと思ったんですけど、ちょっと迷っている間に置いていかれちゃって・・・行くと思ったら、すぐに行かないとダメでした。もう、あとさき考えずに行かないといけないみたいです。
 でも、やっと少しわかってきたような気がするので、今回反省したことを出来るようにして、次がんばります」

和田見の世界への挑戦はこれから
和田見の世界への挑戦はこれから

 
 




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