ワールドカップ第1戦マンチェスター大会レポート
 
配信日:11月7日
 
 
11月2日(最終日) 天候 くもり 気温6℃ 観客3000人

 最終日の今日は、これまでの2日間より少し早い時間からプログラムが始まり、夕方には終了。お昼頃から、夜11時近くまでの日が2日間続いて、運営スタッフも疲れていることだろう。しかし、この長丁場、ずっと大声援を送っているのだから、選手や運営側もさることながら満場のマンチェスターの観客はすばらしいと思う。この熱狂を生むのも、ブリティッシュチームの強さゆえ。何かのきっかけで、どんどん物事が好転していくことのよい例だ。

インターナショナルケイリンの名物ともいえる、くじによる出走組み合わせの決定。出走直前まで誰と走るかわからない
インターナショナルケイリンの名物ともいえる、くじによる出走組み合わせの決定。出走直前まで誰と走るかわからない


 
 さて、お昼のセッションでは、もうマンチェスターではおなじみになった、JKAインターナショナルケイリンに5人の日本人ライダーが出場した。ファーストラウンド第1ヒートは渡邉一成、成田和也がイギリスのマシュー・クランプトン、ウクライナのアンドレイ・ヴィノクロフらと当たった。号砲後、ペーサーの後ろにつけたクランプトンを渡邉が追い、その後ろに成田、ヴィノクロフ、セスパ・ユースカディチームのホデイ・マスキアラン、チェコのデニス・スピカが続く。ペーサー退避のタイミングでスピカが上昇するが渡邉の隣までしか上がらず、少し間があいていた成田との間にすっぽりはいってしまう。残り2周、クランプトンは先行体制に入る。渡邉はしっかりとマークしてクランプトンと運命共同体を決め込んだようだ。最終コーナー、スピカの後ろにいた成田はスピカが外にふくらんだのを見て、インに切り込む。そのままゴールし、1着はクランプトン、2着渡邉、うまく内をついた成田は3着。2着までの勝ち上がりのため、クランプトンと渡邉がダイレクトにセカンドラウンドへ。3着ながら成田は敗者復活回り。
内が渡邉、外が成田。願わくばワンツーであがって欲しかった
内が渡邉、外が成田。願わくばワンツーであがって欲しかった



  第2ヒートは、中川誠一郎、新田祐大にUSクリテイユチームのミカエル・ダルメイダ、オランダのテアン・ムルダー、ギリシャ、クリストス・ボリカキス、チェコのアダム・プタクニック。周回はダルメイダ、ムルダー、ボリカキス、新田、中川、プタクニックで落ち着く。ペーサー退避と同時に新田が中川を連れて前に出るが、コーナーで中川が少し膨らんでしまい、遅れているうちに新田が1人で先頭へ。残り2周では新田、ダルメイダ、ムルダー、ボリカキスとその外に中川が並走、その後ろにプタクニック。残り1周では外を回ってきた中川が力尽き下がっていく。最終バックでは新田も力尽き次々と抜かれて、新田5着、中川6着で敗復へ。セカンドラウンドへは1着ダルメイダと2着ムルダーがダイレクトに進出。



  稲垣裕之が単騎となった第3ヒートはスカイ+HDチームのジェイソン・ケニー、同じくロス・エドガー、オーストラリアのシェーン・パーキンス、稲垣裕之、ロシアのデニス・ドミトリエフ、スペインのホセ・アントニオ・エスクレドで周回。残り2周半、ペーサー退避を待っていたかのように外から上がってきたエスクレドを稲垣が追走。間髪をいれずにその外をエドガーが一気にかます。その時点で稲垣は3番手。残り1周なおも逃げ続けるエドガーと後続の距離は3~4車身。後ろで様子を見ていたケニーも最終バックから発進、大外をじりじり来て後続の一番前まで上がってきたのが4コーナー。その時点で稲垣はすでに最も後方におかれており、末着が確定。そのままのゴールで1着エドガー、2着ケニーが第2ラウンド行き。

ケニー、エドガー、パーキンスなど稲垣の組はきつかった
ケニー、エドガー、パーキンスなど稲垣の組はきつかった


 さて渡邉を除く4人の日本人ライダーが第2ラウンド進出をかけて、走った敗者復活戦。2ヒートで各ヒート上位3名がセカンドラウンドへ残ることができる。第1ヒートは成田と中川。残り2周半で中段から成田が中川を連れて勢いよく前に出る。半周回ったホームで、今度は中川が成田の後ろから前に出る。それをすかさず成田が追走。その外を捲くろうとするのがマスキアラン。ラスト1周で中川が「もう限界」とばかりにズルズルと下がっていく。残った成田も最終バックでは後位におかれ万事休す。かわってロシアのドミトリエフが前に出てそれをうまく追走したボリカキスがなだれ込んだ。残念ながら、ここで2人の日本人が姿を消した。


  続いて新田、稲垣が乗った第2ヒート。初手は新田が3番手、稲垣はその後ろにつけて周回。ペーサーの退避前、稲垣が新田の後ろから飛び出して前へ。それに気づいた新田が追おうとするが、やや遅く、入る場所を探すも稲垣の後ろは一本棒になっており、場所がない。仕方なく最後尾へ。残り1周になる4コーナー、稲垣はまだ先頭で逃げている。ようやく、新田が前へ出ようと試みるが、集団が膨らんでおり、大外を行くこととなって不発。稲垣が疲れたのを見て、パーキンスがよいタイミングで飛び出し、それを追ったスピカ、ヴィノクロフと入って、ここでも日本人ライダーは上位に入れず。敗者復活終了時点で、残った日本人ライダーは渡邉ひとりとなった。




  前半の部が終了して、次の日本チームの出番はチームスプリント。先ほどインターナショナルケイリンを走ったなかから、第1走成田、2走渡邉、3走新田。スタートリストを見るとイギリスのスカイ+HDチームが突出しているように見えるが、残りは同じレベルがゴロゴロいる感じ。日本にも十分勝機があるように思われた。が、3人ともインターナショナルケイリンの予選を走っているのは日本チームだけで、それも影響したか、走ってみれば、タイムは45″461の5位。4位のドイツとはおよそ0.17秒差、3位のUSクリテイユチームとは0.19秒差と、メダルまで、もうひと踏ん張りのところだったが、結果は戻しようがない。優勝は予想通り、ジェイミー・スタッフ、ジェイソン・ケニー、ロス・エドガーのスカイチーム。決勝タイムは44″306だった。

チームスプリントでも久しぶりにメダルを見たい
チームスプリントでも久しぶりにメダルを見たい


  さて、大会のトリを飾ることとなるインターナショナルケイリンのセカンドラウンドとファイナル。なんとしても、セカンドラウンドで3着までに入って、ファイナルへの切符を手にしたい渡邉の競走はペーサーの後ろを取ったパーキンスと2番手のダルメイダの間があいているのを見てそこに入ろうと後ろから上昇した渡邉を見てあわててダルメイダが間をつめたため、渡邉はダルメイダと肩を寄せるようにして並走。ダルメイダと何度か肩がぶつかった後、ダルメイダが渡邉を手で外に押す。渡邉は仕方なく後ろに戻り、機をうかがう。ペーサー退避でスピカが前に出るのにあわせて、着いて行くが、それも途中まで。そのスピカをダルメイダが捲くり返し、パーキンスがさらにそれを交わそうとするなど前方はめまぐるしく動いているが前半で前後に動き、脚を使ってしまった渡邉の競走に若干精彩がない。そのまま後ろにおかれ6着。ファイナル行きの夢は絶たれた。さらに前半でのダルメイダとの小競り合いで危険走行の降着をとられるおまけつき。日本の競輪では、あれぐらいの並走は日常茶飯事だが、UCIルールではやはり危険とみなされるのだろう。それに納得すると今度は、手で押したダルメイダはどうなのだと言いたくなる。逆に日本の競輪では手で押すなどというのはとんでもない話だが、渡邉が肩を寄せたのに対し、危険を避けるためにアピールしたという解釈と思われる。確かに、外から肩を寄せて並走しに行ったのは渡邉で、あの並走がなければ小競り合いもなかったとは言えるが、日本人としてはなんとも納得しづらい判定だった。
ケニー、エドガー、パーキンスなど稲垣の組はきつかった
ケニー、エドガー、パーキンスなど稲垣の組はきつかった


 気を取り直して挑んだ7-12位決定戦、残り2周のホームで一気に前に出た渡邉が最終周回3コーナーまで先頭をキープしたが、4コーナーで襲いかかるケニー、ヴィノクロフ、ムルダーなどを相手に逃げ粘ることは出来ず、5着。しかし、ワンツーだったケニーとヴィノクロフがペーサー退避前にペーサーを交わしたとして失格となり、順位をふたつ上げて総合9位となった。


 決勝は1着賞金およそ200万円をかけて文字通りデッドヒート。ペーサーの後ろにエドガー、パーキンス、チェコのアダム・プタクニック、ギリシャのボリカキス、ダルメイダ、最後尾にクランプトンで周回。残り3周のホームからクランプトンが上がって、ペーサー退避と同時に前に出ようとするや、ダルメイダがそれを阻止して前へ。しかし、残り2周のホームで十分スピードに乗っているダルメイダともがき合いバックではクランプトンが先頭。まる1周半駆けてやっと残り1周の鐘を聞く。「これでは、クランプトンは持たないのでは」という考えが頭をよぎる。しかし、スピードに乗ったクランプトンは追いすがる他の選手を寄せつけず、ロング先行で勝利をもぎ取った。2着は最終直線で鋭く伸びたエドガー。クランプトンに「ナイスセンコー」と声をかけて、先行の意味を説明しようとすると、「アリガトウ。センコーなら知ってるよ!早くから前に出る戦法だよね」とニッコリ。大先輩クリス・ホイの十八番だけあって、日本の競輪を走ったことのない選手にも「センコー」は定着しているようだ。
ここに日本人がいることが、普通になるように・・・
ここに日本人がいることが、普通になるように・・・


 さて、今回トレードチームをあわせてイギリスに本拠を置くチームの獲った金メダルの数は実に17種目中14種目。さらにインターナショナルケイリンを入れると18種目中15種目。つまり、18回表彰式があったなかで英国国歌が流れなかったのはたったの3回のみ。正直な感想は「こんなことがあっていいのか」である。もちろん、イギリスの能力は素晴らしいし、素直に賞賛したい。しかし、これでは面白くないというのが人情である。トラック競技をさらに面白くするために、イギリス無敵艦隊の進撃に待ったをかける国、選手の登場が待たれる。
イギリス強し。エドガーはインターナショナルケイリン表彰台の常連になった
イギリス強し。エドガーはインターナショナルケイリン表彰台の常連になった
   



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