09-10ワールド・カップ第1戦マンチェスター大会
 
配信日:11月4日
 
 
■11月1日(日)開催3日目 天候:雨のち曇 気温12度 観衆2,800人

 あっという間に最終日の3日目。昨日はスプリントのみのエントリーで、早々に姿を消してしまったが、最終日の今日は見せ場を作ってほしい。

 ワールド・カップ最終日に合わせて、今回で6回目を迎えたJKA インターナショナル・ケイリンが行われる。深谷が出場出来なくなったため、日本勢は岡部芳幸、吉川誠に加え、ワールド・カップのスプリント種目に出場している佐藤、成田、新田、渡邊といった合計6人での参戦。これに外国勢15名を加えた21名で優勝賞金1万5千ユーロをかけて争われることとなる。絶対的な強さを見せるクリス・ホイの名前がエントリー・リストに見当たらないのは残念だが、逆にこれで多くの選手にチャンスが生まれ、混戦で興味深いレースが展開されるだろう。1回戦は7人×3ヒートで各ヒート、上位2人が2回戦へ進む。残りは敗者復活戦で、こちらも3ヒートで上位2人が2回戦へ進むこととなる。2回戦からは上位3名ずつが決勝へとすすむ。

 そのインターナショナル・ケイリン。出走直前の抽選で各ヒートの組み合わせが決まり、事前にレースの組み立てをイメージをすることが難しい。

場内のJKAケイリンのバナー JKAインターナショナル・ケイリンの組合せ抽選
場内のJKAケイリンのバナー
JKAインターナショナル・ケイリンの
組合せ抽選
    
  まずは第1ヒート。日本からは渡邊一成と吉川誠が出走。号砲後、ペーサーの後位を取ったのは、前回の世界選に優勝し、チャンピオン・ジャージに身を包むマキシミリアン・レヴィー。そこにバイク・テクノロジーズ・オーストラリアのアジズルハスニ・アワン(マレーシア)、コフィディスのフランソワ・ペルヴィス(フランス)、アンドレイ・ヴィノクロフ(ウクライナ)、デヴィッド・ダニエル(イギリス)、渡邊、吉川と続き周回。残り3周となるところから、渡邊が踏み出すのに合わせてダニエルも上昇。ペーサーの退避に合わせてダニエルが先頭へ。外々を回らされた渡邊は2センターから山おろしの体勢。その間にペルヴィスがダニエルをかわして先行態勢。山おろしでスピードを上げた渡邊は4コーナーで先頭に立ちそのまま最終回、先行する形に。1コーナー最後方から発進したアワンに少し遅れてスピードを上げるレヴィー。4車併走の大外をアワン、3番目をレヴィーが行き。まくり切ったアワンが1着、レヴィーが2着で2回戦へ。入れ替わりの激しい展開で後方待機組に向いた展開となり、渡邊は6着、吉川は7着で敗者復活戦へ。

JKAケイリン1回戦 渡邊
JKAケイリン1回戦 渡邊
  第2ヒートは前回優勝のマシュー・クランプトン(イギリス)、シェーン・パーキンス(オーストラリア)と短期免許で来日しその走りもおなじみの2人に新田、成田、岡部と3人同乗となった日本人選手が並び、その後ろにデニス・スピカ(チェコ)、クリストス・ヴォリカキス(ギリシャ)という順での周回。残り3周となるホームで周囲の動きに合わせ3番手にいた新田が上昇、ペーサーの退避と同時に先頭に躍り出る。並んで周回を重ねていた成田は包まれる形となり出て行けず、新田の後位にボリカキス、その後ろに岡部で残り2周。スピカが捲ってくるが新田も粘る。並走し、こらえてとりあえずしのぎきって残り1周。ここでクランプトンが一気の捲り。その間1コーナーで岡部とスピカが接触し両者落車。2コーナーでは完全にクランプトンが出切り、これを追走するパーキンス。この2人が後続をやや離し1、2着で第2ラウンド進出。3着ボリカキス、4着新田、5着成田。岡部は落車のきっかけを作ったとして失格の判定となってしまった。

JKAケイリン1回戦 新田
JKAケイリン1回戦 新田
 第3ヒートはジェイソン・ケニー(イギリス)、チーム・ジャイコのジェイソン・ニブレット(オーストラリア)、佐藤、チーム・スカイのロス・エドガー(イギリス)、コフィディスのテアン・ムルダー、カーテン・ベルゲマン(ドイツ)、トマス・バベクの体制での周回。残り3周となる前からケニーがペーサーから離れ気味に後ろをけん制。ペーサーの退避後3コーナー付近から4番手を走行していたエドガーが上昇。残り2周となるところで先頭に立つ。後方も若干の動きをみせるが、エドガー、ケニーの順で最終ホームを迎える。スピードに乗ったエドガーに後続も仕掛けようとするがみな不発。最後の直線でケニーがエドガーを捕らえようとするも届かず。佐藤も特段の動きを見せることができず、流れ込んでの4着であった。
 残念ながら1回戦は6選手ともに2回戦へと勝ち上ることが出来ず。チャンスが広がる2回戦でなんとか先への望みを期待したい。

   
 なんとかしたい敗者復活戦。第1ヒートは吉川と成田が同乗。道中は成田、ベルゲマン、バべク、吉川の並び。残り5周となるバック・ストレッチで吉川が上昇。成田の前に入り、吉川、成田、ベルゲマン、バべクの並びとなる。レースを動かしたのは吉川。強気の早め先行でレースを引っ張る。それについていく成田。吉川も粘るがやや早仕掛けだったかというところ、最終1コーナー付近からベルゲマンが発進。成田も吉川後位からスピードを上げるも、やや立ち遅れたか、ベルゲマンにまくられる形となり、ベルゲマン、それについていったバべクで1、2着で2回戦へ。3着成田、4着吉川となった。

 第2ヒートはダニエル、ヴォリカキス、新田、ムルダーでの周回。ペーサーから車間をあけてややけん制状態となってあまり動きがない状態。あまり自ら動くことのないヴォリカキスが動きを見せ、残り1周半でペースが上がる。最終ホームからムルダーが発進まくるような形になるが、2コーナーからヴォリカキスもスパート。これを制して結果1着でのゴール。2着にはダニエル、3着ムルダー、4着新田。新田は1回戦のような見せ場を作れず、ここで敗退となった。

 第3ヒートはペルヴィス、ニブレット、佐藤、ヴィノクロフ、渡邊の並びで周回が重ねられる。何とか日本勢2回戦進出を、の期待がかかる。ペーサー退避後、佐藤が3番手から上昇し、スピードを上げる。残り2周をすぎ、2コーナーで出切り先行態勢。残り1周を迎え、1コーナーからヴィノクロフが踏み出し2コーナーでは佐藤を一飲み。これに乗ったニブレットとともに1、2着となり、2回戦進出を決めた。3着ペルヴィス、果敢に先行した佐藤だったが飲み込まれて4着。渡邊5着。

JKAケイリン敗者復活戦 成田
JKAケイリン敗者復活戦 成田
JKAケイリン敗者復活戦 佐藤
JKAケイリン敗者復活戦 佐藤
 とても残念だが、ここでJKAインターナショナル・ケイリン、日本勢は終戦。敗者復活戦敗退7名中、5名が日本人選手という現実。これはしっかりと受け止めなければならない結果であろう。

   
 気を取り直してのチーム・スプリント。当初日本チームは第1走者成田、第2走者深谷、第3走者新田という編成で臨む予定であったが、こちらは深谷に代わって渡邊が入り、昨シーズン、リーダー・ジャージに袖を通した面々での戦いとなった。チーム・スプリントはトラック・チームを含め落車の影響で棄権したチェコを除き17チームが参戦。日本は6組目でオランダとの対戦となった。最初の1周、第1走者の成田は17秒882で入り17秒833で入ったオランダにやや遅れ現時点で4位のタイムで2走の渡邊につなぐ渡邊は2周目を31秒085で終え、32秒360と遅れたオランダを逆転し3走新田へ。新田のゴールのタイムは44秒721。シーズン初めのワールド・カップで45秒を切るタイムを出した。この時点でモスコウ・トラック・チーム、チーム・ジャイコについで3位のタイム。ポーランド、マレーシア、イギリス、コフィディス、ドイツ、チーム・スカイといった残りのチームを考えると、この時点でのトップ・タイムが欲しかったところだろう。

  この先はやはりイギリス・チームとチーム・スカイのタイム、そしてどちらが上回るのか興味深いところ。先に登場はコフィディスと対戦したイギリス。1走ケニー、2走クランプトン、3走ダニエルの平均年齢21歳という若い布陣。タイムは1走ケニーが17秒607、2走が終えた時点で30秒415、最終タイムは43秒804。この時点でのトップ・タイムだ。そして最後にドイツ・チームと登場したチーム・スカイ+HD。1走にジェイミー・スタッフ、2走にエドガー、3走がホイというこちらは逆に力のあるベテラン陣といったところ。こちらのタイムは1走スタッフが17秒659とイギリス・チームにやや遅れ、2走終了時には30秒544とイギリス・チームとの差は更に広がり、3走のホイへ。ここで0秒125下回っているところから0秒206上回る43秒598のトップ・タイム。ここでもホイには手がつけられないのか。結局予選終了時で1位チーム・スカイ、2位イギリス、この2チームで決勝。3位ドイツ、4位チーム・モスコウの2チームで3、4位決定戦。5位チーム・ジャイコで日本はそれに次ぐ6位であった。6位日本44秒721に対し3、4位決定戦に進んだチーム・モスコウのタイムは44秒621。ちょうどコンマ1秒の差、結果的になんとかならなかったかの思いもあるところであろう。しかしここでもイギリスの強さばかりが目立つ。

 そのイギリス勢同士の決勝はドイツが3位を決めた後に行われた。1走対決はここでもイギリス・チームのケニーが17秒588でスカイ、スタッフの17秒627を上回り、2走につなぐ。先ほどが今ひとつだったスカイ、エドガーが今度は30秒402でつなぎ、イギリス・チームの30秒466を上回ってくる。この時点でスカイの勝ちが見え、あとはタイムといったところ。スカイは結局43秒423と予選を上回るタイムで優勝。イギリスは43秒813で逆に予選を上回ることができなかった。しかしこれでオリンピックと同様、クリス・ホイはスプリント種目3冠を達成して今回のワールド・カップを締めくくった。

チーム・JAPANの疾走 チーム・S ここから真のイギリス・チームが・・・
(TS表彰)
チーム・JAPANの疾走 チーム・S
ここから真のイギリス・チームが・・・ (TS表彰)
 
   
 日本選手勢、最後に登場は盛でスクラッチの決勝。20人中上位12位が決勝に進める午前中の予選10kmでは、半分以上が過ぎて、カナダのボイリー、オーストリアのリーベンバウアーが逃げるのを少し離れてチームFFAのマゾッティ、イギリスのニュートンが追い、そして集団という状態。さすがに動かねばならない盛は、香港のワンとともに先団を追う。しかし集団もスピードをあげ、少し開いた盛、ワンとの差が詰まってしまう。これを見てワンは集団に戻り、盛もこれに吸収されるかと思ったところ、今度は一人スピードを上げて前を追い始める。2つに別れていた先団も1つとなり、盛もこれに追い付き、結果残り5周となる辺りで5人でラップ。ここで決勝進出を決定的にする。結果4位でゴールし、決勝へ。60周15kmで争われる決勝でも盛は積極的な走り。途中ロシアのコヴァレフ、ポーランドのブシュコら他の4選手とともに残り37周の時点でラップ、他と大きく差をつける。その後は数選手が度々逃げようと試みるも不発、集団吸収の繰り返し。だんだんとラップした5人の中での先着争いとなる様相を呈してくる。残り周回が人一桁となっても盛はなかなか集団の前方に上がることができず、後方で周回を重ねるかたちとなる。結局盛は後方のままレースを終え、ラップしたなかでは最下位の5着。優勝は集団の2番手でゴールしたロシアのコヴァレフだった。 しかしながら、最後まで優勝争いに絡む内容は昨年の優勝と結果がフロックではないことを証明するとともに、今シーズンまた何かをやってくれそうな雰囲気を確実に感じさせてくれるものであった。今後他の選手のマークも厳しくなり、なかなか自分の描くレース展開にも持っていきにくいかもしれないが、克服し、更なる強さを見せてくれることだろう。
しっかり予選を突破した盛
しっかり予選を突破した盛
決勝もしっかりラップ。今シーズンも期待。
決勝もしっかりラップ。
今シーズンも期待。
       
   
 さて、大会のトリ、最後をかざるのはJKAインターナショナル・ケイリンの決勝、7-12位決定戦。結果は昨年優勝し日本の競輪も走ったイギリスのマシュー・クランプトン。地元の声援に後押しされ、力強い走りでこの大会2連覇を達成した。2位にヴォリカキス、3位にアワン、4位にダニエル、5位にパーキンス、6位がバべクであった。イベント的には盛り上がりを見せたがイギリス、外国勢の引き出し役でしかなかった日本勢。せめて日本で走ったクランプトンの優勝が救いか・・・「ディフェンディング・チャンピオンとして2年続けて勝てたのは嬉しいし、何か日本とは縁があるのかな。来年ももちろん日本で走りたいと思っているよ。」というクランプトン。2年連続も含め、ハロンのタイム、スプリントもホイに次ぐものであったし、今後の今シーズンの走りが楽しみだ。

 今回のマンチェスターのワールド・カップ、男子は9種目中6種目、女子は8種目中4種目、合計17種目中10種目がイギリスの勝利。紹介した以外でも圧巻なのは追い抜き。男子、女子、個人、団体すべてがイギリスの勝利でしかもすべてが追い抜いての勝利。シーズンが始まったばかりとは思えない好タイムが続出し、もう今シーズンもどうなっちゃうんだろう、という感じも・・・独壇場を阻止すべく他国の巻き返し、日本の頑張りに期待したい。
JKAケイリン 2連覇のクランプトン 最後にダウン中のクランプトン
JKAケイリン 2連覇のクランプトン
最後にダウン中のクランプトン
             


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