11-12 UCIトラック競技ワールド・カップ 第3戦北京大会
配信日:1月18日
■1月15日(日)開催3日目 天候:晴れ時々曇り 気温3度
実質4日間で行なわれる今シーズンのワールド・カップも早くも最終日。最終日の今日の男子スプリントと女子ケイリンをメインに昨日と同じ朝10時からの競技開始。
まずは男子スプリント、本選出場枠16名のところに57名がエントリー。予選の200mのフライング・タイム・トライアル、通称ハロンだけでも1時間以上はかかってしまう。日本はナショナル・チームから中川誠一郎、新田祐大の2人、トラック・チームのシクロ・チャンネル・トーキョーから渡邉一成の合計3人が出場。新田が13番目、中川が22番目、渡邉が23番目でのスタート。日頃から余りハロンは得意ではないという新田は10秒471というタイムで結果は一人出場せずの合計56人中真ん中の28位。日本人2番手の中川は10秒566、アスタナでの10秒299というタイムと比較するといかにも平凡なタイムで37位で予選敗退となった。10秒1台をここのところコンスタントに出すようになった渡邉だったがこちらも10秒327とタイムの出にくいトラックとはいえ不満なタイム。この渡邉がなんとか、ギリギリの16位に滑り込んでの予選通過。予選トップは地元中国チャン兄弟の兄チャン・レイの10秒138、これに弟チャン・ミャオが10秒149で続いて中国エース兄弟のワン・ツー。渡邉はギリギリの16位通過ということで1回戦は兄、チャン・レイとの対戦となった。
スプリント予選の新田
ここは通過したかった
中川のスプリント予選
調子がいまひとつだったか・・・
トップタイムのチャンとの戦い、前から攻めることとなった渡邉はトラック上部ギリギリを走行するチャンとの差が開いた残り1周となる4コーナーで更にペースを上げる。しかし山おろしをかけてスピードを上げてきたチャンに差を詰められ、バック・ストレッチに入るとあっさりと交わされてしまう。最後の直線では流されて、正直完敗という形になってしまった。残念ながらここで勝ち上がりは途絶え、9位から16位を決めるB戦、負け戦回りとなってしまった。
予選通過もギリギリでの渡邉
チャンには負けたが負け戦は全勝の渡邉
1/4決勝Bへと進んだ渡邉、まずはアメリカのマンスカーとの対戦となったが先行して押し切るレース、ラスト200mのタイムも10秒574と4レースある1/4決勝Bの中で最も早いタイムだった。続いての1/2決勝Bの相手はイギリスのミッチェル。内からのスタートで前から戦う形になった渡邉は早めにスピードを上げ、4コーナーから山おろし気味に先行、バック・ストレッチまでに開いた差はなかなか縮まらず、結局余裕を持っての先着。最後となった決勝Bは地元中国のタン。前にタンを見て後ろからの戦いとなり、残り1周となる前の3コーナーで内を突く素振りもそのまま後ろから攻め、バック・ストレッチで逃げるタンとの距離を一気に縮め、最後の直線で差し切り。B戦での優勝、9位となってレースを終えることとなった。面目躍如といったところではあるが、逆に予選でのタイムがもう少しよければ1回戦突破、勝ち上がりのレースでの勝利といったものが期待できたのでは、と思わせる内容であった。
コメント:渡邉
「ケイリンが終わってちょっと興奮したのとカフェインを取ったのとで昨日全然眠れなくて・・・そんなのも影響して予選のハロンはちょっとタイムが出なかったですね。でもまあ、こんなもんですよ・・・初戦はなんだか良く分からないうちに終わっちゃった感じです。どう走って良いか分からないって感じで。負け戦に回って徐々に体も起きて、走り方も分かってきたっていう感じでした。初戦の相手もハロンのタイムを見たらそんなに変わらないのを出せるんで何とかしたかったというのはあるんですけどね。勝ち上がりの中で後半のようなレースをしたかったですね。やっぱり日本人はこういったレースでの駆け引き的なものが苦手なので、もっともっと、国内でなくて海外のレースでの経験を積んでレース感を磨きたいし、そうしないといけないですよね。」
若いコノールが
チャンスを活かした(男子スプリント)
男子スプリント決勝は、予選13位ながらも勝ち上がってきたドミトリエフ(モスコー・トラック・チーム)を1本目は差し切り、2本目は逃げ切りの2-0で下した予選1位のチャン・レイとペラルタ・ガスコン(NAV,スペイン)を2本とも逃げ切って負かした予選6位のコノール(フランス)との戦い。1本目は内コノール、外チャンでのスタート。1周目のバック・ストレッチで10秒ほどスタンディングで止まるような、けん制気味のゆっくりとした序盤であったが、1周前4コーナーからスピードを上げてそのままコノールが先行。差しに回ったチャンだったが捉えることが出来ずに半車身差でコノールが逃げ切り1本目先取。内チャン、外コノールと入れ替わっての2本目。同様に1周目バックでややスタンディングといった序盤。こちらも結局は前からとなったチャンがそのまま先行。後ろから行ったコノールはあと半周から一気に差を詰め、直線で余裕を持って差し切り。ボジェ(昨年の世界選手権の優勝はドーピング検査関連の対応のまずさから取り消されてしまったが)、シローといった強力なライダーがいるフランス・チーム、なかなか世界の檜舞台に派遣されることが無く、数少ないアピールのチャンスとなったこの大会でしっかりと2-0で相手を下して優勝、その存在をしらしめることにコノールが成功した。
女子のケイリン、こちらにも女子スプリント陣の2人、石井寛子と前田佳代乃が出場。39人が出場となり、1ヒート6~7人での戦いで男子同様1着1名が2回戦進出で残りは敗者復活戦という狭き門での戦い。
まずは石井が第1ヒートに登場。既にチーム・スプリント、スプリントと今大会2冠を制しているグオ(中国)、今シーズンケイリンで表彰台に上っているグニデンコ(ロシア)といった強豪メンバーとの争いとなった。後方で周回を重ねた石井はペーサー退避後に前を伺って上昇。3番手付近まで上昇するものの、先手を取ったグニデンコが突っ張ってスピードを上げ、先頭に立つことが出来ず後退、6番手となってしまう。残り1周となるホーム・ストレッチに入る前、3番手からグオが発進。最終1コーナーで先頭に立つと後続をあっさりと突き放し、大差での大楽勝。力の違いを見せ付ける。2着はそのままグニデンコ。石井は大きく遅れて6着、敗者復活戦へとなった。
前田は第5ヒートに出場。ペーサーの後ろに位置したライダーにスプリンター・レーンの内側で並走し続けたリベイロ(ブラジル)が失格となって再発走となったレース、道中5番手でレースを進めた前田、ペーサーの退避のタイミングを狙って上昇、残り2周となる前の3コーナーで先頭に立つが後続につつかれるような形で流すことが出来ない。後ろから上がってきたサリヴァン(カナダ)に残り1周半で交わされ、それに続いたハンセン(ニュージーランド)の2人に引き離された後ずるずると下がってしまう。サリヴァンとハンセンが並走もがき合うところをバック・ストレッチからかかったゾン(ジャイアント・プロ・サイクリング,中国)が一気に差を詰め直線で抜け出して1着、前田は最後方に遅れ敗者復活戦へ。
敗者復活戦は第1ヒートに前田。最後方5番手で周回を重ねた前田、再度ペーサー退避を狙って位置を上げていくが突っ張られ、2番手並走まで上がったところからずるずると下がり残り1周半では最後方へ。残り1周半で3番手から出て行ったグエラ・ロドリゲス(キューバ)が最終1コーナーで出切ったところをグニデンコが追い直線でなんとか差し切って1着、前田は大きく遅れての5着で敗退が決まった。
第5ヒートの石井はスタート良くペーサーの後ろに位置しての周回。ペーサー退避後も動きはなかったが残り2周を切ったところで最後方から仕掛けたファン(台湾)が残り1周前の3コーナーで石井を交わして先頭に出切って先行体制。石井はやや遅れながらも内で粘る。石井の外からバック・ストレッチでファンを交わして先頭に立ったハンセンが押し切ろうとするがハンセンをマークする形で続いたパク(韓国)が最後に差して1着。石井は最後にファンを差したが4着。こちらも敗退が決まってしまった。石井、前田両者共に前を狙おうとする姿勢は見られるものの、まだまだ脚の違いが歴然としてしまっているのは事実。他のアジア勢も上へと勝ち上がっていることから、この差を詰めるべく頑張っていって欲しい。
ケイリンの石井
ケイリンの前田
女子ケイリン決勝、クルペクカイテ(リトアニア)、ラレアル(ヴェネズエラ)、ディ(香港プロサイクリング,香港)、グオ(中国)、ストレルトソヴァ(モスコー・トラック・チーム,ロシア)、グニデンコ(ロシア)で周回を重ねてペーサー退避でいよいよ勝負。動いたのはグオ、残り2周を切ってバック・ストレッチに入る手前から踏み込んで上昇、3番手のディがこの後ろに付く。グオは直線に入って先頭に出切って残り1周、相手の出方を気にしながら先行体制に入る。残り半周で更にスピード・アップ、後続から伸びてくる者はいない。そのまま余力を残して1車身差で優勝。これで今大会スプリント3冠を抜けた強さで制した。マークしたディが2着入線、ガッツ・ポーズに雄叫びと優勝したかのような喜びようであったが、最後の200m内で走行ラインを守らなかった、斜行したとして降格となってしまった。結果2着にクルペクカイテ、3着にラレアルとなった。
スプリント3冠のグオ 3強対決が楽しみ
加瀬 オムニアム個人追抜で追い抜く
昨日に続き今日の残り3種目で勝敗が決まる女子オムニアム、ポイント・レースで4位と好成績をあげながら続くエリミネイションで2番目に除外とチグハグな結果になってしまった加瀬、初のワールド・カップでの完走を果たすとともに少しでも上位でレースを終えたいところ。
まずは3kmで争われる個人追抜、4組目バック・ストレッチからスタートした加瀬は対戦相手のマニーファン(タイ)を追い抜く走りを見せるが突っ込みすぎたか、再度マニーファンとの差が縮まり追い抜き返されてしまう。後半タイムを落とした加瀬は3分47秒643で自身の持つ日本記録に3秒以上及ばないタイムでこの種目13位。追い抜かれた選手は抜き返してはいけないという規則に抵触してマニーファンは失格となってしまった。
続くゲーム種目の10kmのスクラッチ、3回ほど目に付く逃げが放たれたものの、どれも成功せずにレースは終盤へと向かっていく。道中ほぼ最後方付近を走行していた加瀬、残り4周となったところで大外から一気に先頭に立ち、更には飛び出して集団を突き放しにかかるもゴールに向かって集団もスピードを上げてこれを吸収。加瀬はインで粘ったものの集団の加速についていけずズルズルと後退。一杯になっていたグルマ(コロンビア)に先着しただけの18位と厳しい結果となってしまった。
最後の500mタイム・トライアル、3組目バック・ストレッチからのスタートに時計が示したのは36秒958のタイム。この種目7位、合計76ポイントで競技を終えた結果は15位。オリンピック・ポイントは本選参加による10ポイントのみの加算となった。
これで女子オムニアムはオリンピックポイントが日本は200。台湾のシャオが6位に入り140ポイントをゲットしてオリンピック出場圏内に飛び込んできたのが日本にとっては非常にいたい結果となった。日本は合計24位もヨーロッパのレベルが高く、高ポイントをとっても大陸枠の8が重くのしかかり出場権を得られない国が多いことから現在出場権ボーダーのコロンビア(220ポイント)に20ポイント差。アジア大陸枠で5位と大陸枠では圏内なので、カギとなるのはやはり次のアジア選手権。アメリカも大陸選手権を残していることから少しでも上の順位で高ポイントを獲得したいところ。またその他ライバルのアジア諸国とは抜けた中国を除き、出場権圏内の台湾(290ポイント)に90ポイント差、韓国(280ポイント)に80ポイント差、圏外のタイ(210ポイント)に10ポイント差となっている。おそらく強豪が揃うロンドンのプレ・オリンピックでの点数加算は厳しいことからやはりアジア選手権でどこまでポイントがとれるかが焦点だ。
女子オムニアム優勝はロシアのロマニウタ
男子スプリント陣はスプリント3種目のオリンピック出場権は手中にしていると言って良いが、オムニアムもやはりアジア選手権が大事。これも少しでも多くのポイントを取って安泰にしたい。そういった意味で2月のアジア選手権は大事な舞台。少しでもオリンピック出場枠を手繰り寄せることが出来るよう日本ライダーたちの検討を祈りながら、この大会に注目したい。
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