『第80回日本選手権競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:5月6日

 輪界でもっとも権威のあるタイトル。平塚競輪場で開催された「第80回日本選手権競輪(GI)」は、5月6日に最終日が行われた。S級S班3人をはじめ、激戦を勝ち抜いたトップ9の決勝は、見ごたえのバトルが展開された。関東分断で吉田拓矢後位を奪取した単騎の古性優作が、追い込んでV。一昨年10月の寬仁親王牌以来、通算9回目のGI制覇で、優勝賞金1億300万円(副賞含む)を獲得。年末に平で行われる「KEIRINグランプリ2026(GP)」の出場権を手に入れて、6年連続6回目のグランプリを決めた。

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると取鳥雄吾が勢い良く飛び出して誘導員を追う。取鳥-松浦悠士-荒井崇博が前受けで、単騎の古性優作がこの後ろ。佐々木悠葵-吉田拓矢-眞杉匠の関東勢が中団。菅田壱道-渡部幸訓の北日本勢が後ろ攻めで周回を重ねる。
 青板3コーナーで菅田が上昇し、正攻法の取鳥は突っ張るような素振りを見せるが、その外から佐々木が赤板で先頭に飛び出す。吉田、眞杉は車間が空きながらもしっかりと続いて関東勢が出切る。4番手には取鳥が入り、古性は1センターで踏み遅れた荒井の前で6番手に収まる。佐々木は出切ってからもハイピッチで飛ばしていく。番手の吉田は最終ホーム過ぎに仕掛けた取鳥をけん制しながら、2コーナー手前でまくりを打つ。古性は1センターで内に進路を取り、眞杉をすくって吉田後位を奪取。4コーナーを先頭で回った吉田を、古性が直線半ばで交わしてV。番手まくりに出た吉田は2着。古性にすくわれた眞杉は、2センターで内を突いた荒井をキメて3着。










<5R>

成田和也選手
成田和也選手
 赤板過ぎに酒井雄多を押さえた山田諒は、道場晃規の上昇に合わせて踏み込む。浮いた道場が下げて、4番手の酒井は2コーナーから仕掛ける。打鐘3コーナーで酒井が叩いて主導権。山田は4番手に引いて、単騎の中井太祐は7番手。一本棒の隊列になり、酒井が駆けて最終周回。山田が、2コーナー過ぎからまくりを打つ。引きつけた成田和也(写真)は、2センターで山田をけん制。山田は不発で志智俊夫が追い込むが、成田が抜け出した。
 「GIに(弟子の酒井と)一緒に出ることを目標にやってきていたので、うれしいですね。最終日の負け戦ですけど、いい走りをしてくれました。(道場は)酒井君の普段の走りを見ているから下げたんでしょうけど。そのあと中団でしたけど、(酒井は)自分のタイミングで前に踏んでくれました。(最終バック付近は)3走目に同じような雰囲気で失敗していたので、その反省を生かして走れました。(落車明けの今シリーズは)思うように動けなかったですけど、そのなかでも走り切れた」
 成田のけん制で山田のまくりが止まると、最終2センターから踏んだ志智俊夫が伸びて2着。
 「(3走目に落車したが)擦過傷は多かったですけど、大丈夫でした。(山田は)うまく中団を取って仕掛けてもくれた。成田君は余裕があるので届かなかった。ダービー(日本選手権)で2連対は自信になりますね。今日は声援もたくさんしてもらって、うれしかったですし力になりました」

<6R>

松本秀之介選手
松本秀之介選手
 松本秀之介(写真)を切らせず、前受けの犬伏湧也が踏み込んで突っ張る。九州勢が中団に降りる前に中野慎詞は仕掛ける。中野が打鐘手前で主導権を握り、後位は内から踏み勝った佐々木眞也。佐藤慎太郎は追い上げられず3番手に続く。単騎で追い上げた坂井洋が犬伏をキメて5番手を奪い、最終ホームで松本が坂井の後ろに追い上げる。1センター過ぎに坂井が5番手からまくり、松本は犬伏との併走をこらえて追走。2センター過ぎに中野をとらえた坂井を、松本が直線で交わした。
 「僕も(園田)匠さんもスタートは遅いんで、後ろからいってどっち(犬伏、中野)が前でも1回突っ張ってくるんじゃないかと。そのあとのカマシが来たタイミングで、出遅れないようにとは思っていたんですけど。(坂井)洋さんがうまくスイッチしてくれたんで、その流れに乗れた感じです。(犬伏との併走の)そこもタイミングよく、洋さんがまくっていってくれた。それで外にいても、あんまり飛ばずにすんだ。一番スピード上がるところで負けないように、精いっぱい踏めたのは良かった。若手が増えて、後ろを回ることが前よりも増えた。そのなかで勉強というか前よりも、落ち着いて反応ができるようになった」
 流れで桑原大志との併走になった園田匠は、そこをしのいで松本とのゴール勝負に持ち込んだ。
 「(松本と)2人で一発、一撃を食らわそうって感じだった。しっかりと仕掛けてくれて、犬伏君のところも耐えてくれた。(松本)秀之介は強い相手の方がスピードに乗せてもらえる。そこからの方がトップスピード域が強いので合っている。持ち味もわかっているので、僕は付いていくだけだった。あとは中を割るか、外をいくかだったんですけど、最終日だったん外をどれだけいけるかだったけど、1着まではいけませんでした」

<7R>

嘉永泰斗選手
嘉永泰斗選手
 吉田有希が、中団の志田龍星にフタをして赤板を迎える。外併走からさらに踏み込んだ吉田が、打鐘手前で先頭に立つ。嘉永泰斗(写真)は吉田の番手に飛び付いて、あっさりと雨谷一樹に踏み勝つ。そこを今度は志田が襲い掛かる。最終ホーム過ぎに志田が叩き切り、佐々木龍の追走。遅れ気味の嶋津拓弥を弾いた嘉永が、切り替えてまくり一気。志田を3コーナーでとらえた嘉永が押し切った。
 「想定内の展開でしたが、引くか、粘るかは、その時の判断でという感じでした。動き自体は悪くなかったです。(日本選手権を振り返って)勝ち上がれていないので力不足でした。(前々回のウィナーズカップで落車してから)良くなってきているが、あんまりピリッとしていないです。(前回から新車を使っていて)寸法は変えていないし、前と同じ感じなので悪くはないです」
 嘉永の加速に塚本大樹は車間が空いて、志田後位から切り替えた佐々木龍が2着。
 「(3番手が嘉永になっていたのを)確認できていなかった。(ラインの)3人で出切ったので、ラインで決まると思ったんですけど、嘉永君はさすがですね。思ったよりも早く来ましたね。対応は難しかったですね。(嘉永に)行かれてからは1着を目指して切り替えて前に踏んだけど、まだまだ力不足でした」

<9R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 北日本勢が、前団に構える。3番手の山口拳矢(写真)の外に、鈴木竜士が併せ込んだまま周回を重ねる。石原颯の上昇に新山響平は突っ張るが、石原も踏みやめず、新田祐大の外で踏み続ける。ハイペースで打鐘を迎えて、北日本勢の後ろには鈴木が入り、山口になる。石原との連結を外していた松本貴治は7番手。8番手の渡邉雅也が、最終ホーム手前で反撃に出る。単騎の渡邉が抜群のスピードでバック過ぎに出切り、鈴木がスイッチして追いかける。直線で鈴木が渡邉を交わすが、さらに外を山口が突き抜けた。
 「(北日本勢が前で)ほぼほぼ突っ張るんで(鈴木を入れないでと)思っていました。(仕掛けてきた)石原君が1人なのがわかったので、早くフリーになりたくて(1車下げた)って感じですね。(渡邉が来たところは)石原君が邪魔でう回するには遠いなと。終始、余裕はあったんですけど、伸びとしてはあんまり良くなかった。(今シリーズの4走とも)あんまり踏んではないので、(感触は)あんまりわからなかったです」
 単騎の鈴木竜士は、打鐘で北日本勢後位を単独で取り切る。渡邉が逃げる新山をのみ込むと、新田の切り替えをアテにすることなく踏み込んで渡邉をまくり切った。
 「(渡邉)雅也より先に、自分のタイミングでまくりに行けば良かったんですけど。外併走したところとか、ジャンで見たところとかがあったんで、自分のリズムじゃなくて整わなかった。結果、雅也が仕掛けたところを目がけてって感じになっちゃいました。(今シリーズの4走は感触的には)悪くないのかなと思います。けど、なにひとつ結果を残せてないので、満足するものはなかった」

<10R>

太田海也選手
太田海也選手
 後ろ攻めの太田海也(写真)が、赤板過ぎに一気に動いて先頭に立つ。深谷知広がすんなりと4番手に収まると、6番手の阿部拓真が打鐘2センター手前で番手に追い上げる。隊列が短くなったところで寺崎浩平がスパートし、最終1コーナー過ぎに出切るが、山田久徳が遅れる。番手に入った太田は、深谷のまくりに合わせて仕掛けて、今シリーズ2勝目を挙げた。
 「誘導を切るのが下手くそで、阿部さんが来たところでは、強く入れていました。ホームであのままなら行くしかないと思っていました。(寺崎が来たところは)あそこで出させていたら、準決勝、決勝だとチャンスがないと思うので、まだまだですね。(深谷が仕掛けてきて)いっぱい、いっぱいだったんですけど、前に踏んで行きました。(ワールドカップ後のGI出場だったが)やっぱり日本の競輪選手は、世界トップクラスだなって今開催を通して思いました。レースに向かうメンタリティ、ヨコの動き、相手に勝つということに徹底したものは、海外の選手に勝っているのかなと思いました。全日本選抜から使っているフレームがすごくいい感覚で、あんまりカーボンからの違和感なく乗れたと思います。(このあとは)ジャパントラックカップに出場して、そのあとは、全日本選手権に出場します。(これからの目標は)競技で世界一を目指して、世界一と一緒くらい難しい日本の競輪のタイトルホルダーを目指しながら2つとも夢を叶えられるように頑張っていきたいと思います」
 大外を回った深谷は、太田に張られて2センター手前で勢いが鈍る。深谷のスピードを貰った和田真久留が2着。
 「深谷さんの脚力なら(寺崎の仕掛けに)スイッチしていってまくりに行くと思っていました。バックで寺崎君と、太田君が並んでいて、深谷さんが行ってくれると思って待っていてから踏みました。脚力日本一を争う人が走ったスピード対決でした。今日(最終日)が一番軽かったし、ピークのもって行き方だったり、そういうところをしっかりしたい。来年も平塚でダービー(日本選手権)がありますし、それを目標に頑張ります」

<11R>

古性優作選手
古性優作選手
 通算9回目のGI制覇。何度も経験している表彰式、それでも古性優作(写真)は、あふれる涙が止まらなかった。
 「みんな、毎日、死に物狂いで練習してきた選手ばっかりだと思う。そのなかで(決勝を)走れて、幸せだなって走る前には思っていました」
 自身を含め3人のS級S班をはじめ、輪界日本一を決めるにふさわしい9人が決勝に顔をそろえた。ただ、近畿勢は一人だけ。一次予選では近畿勢が誰ひとり勝ち上がれず、準決でラインを組んだ寺崎浩平、山田久徳も敗退。脇本雄太不在の日本選手権で、古性が背負うものは少なくはなかった。
 「近畿勢の流れが良くなくて、僕の力で少しでも流れをって思ったんですけど。なかなか流れを変えられず、最後は1人になってしまった。関東勢の勢いがすごかったんですが、なんとか僕1人の力でも勝ちたいと。(勝てて)良かったです」
 平塚に詰めかけた約1万3000人のファンの前で、古性がこう言って涙をぬぐった。
 佐々木悠葵が先頭を務めて、吉田拓矢、眞杉匠のSSコンビが固める関東勢を中心にレースが動いた。赤板1コーナーで飛び出した佐々木が緩めることなく踏んでいき、吉田、眞杉の追走。取鳥雄吾が4番手に飛び付き、追い上げた古性は松浦悠士の後ろの荒井崇博が遅れたスペースを確保して打鐘を通過した。
 「赤板は佐々木君が上手やった。(自分の)判断が悪かったし、難しかったです」
 最終ホームから取鳥が巻き返すと、古性は空いたインに俊敏に進路を取り押し上げる。2コーナー手前で眞杉の内に並んで一撃でさばいて、番手まくりの吉田に乗っていった。
 「(最終)ホームから内に行った判断も想定外というか、もう吸い込まれるように行きました。あそこを狙っていったわけではないですね。ああなったら外行くしかないなっていう感じだったんですけど。今回に限りですかね」
 外を仕掛けることは、常にベースにあるからこその、瞬時のジャッジメント。自身にも言い聞かせるように付け加えた。
 「こんだけメンバーが強かったら、(優勝は)確率論みたいになってくるところもある。本当に力を出し切って負けたら、その時はまた練習するしかないなと。そういう心構えで発走機には立った。最初からああいうレースをしようと思って発走機に立ったら、優勝は絶対にできていないと思います。結果そうやって外を踏むっていう気持ちがあったから、ああいう判断にもなったんだと」
 自力に転じた吉田後位を奪取した古性に絶好も、後ろには立て直した眞杉がいて直線を迎える。内の吉田をとらえて、外の眞杉を退けた古性が先頭でゴール。9度目のGI制覇は、初めての日本選手権優勝だった。
 「日本一になるために、毎日すべて捧げてきましたし。(優勝は)本当にうれしいですね。去年の1年間、本当に不甲斐なかった。去年は納得のいくレースが1つもなかった。選手を続けていてもおもしろくないなっていうのがあって、心も折れそうだったけど、やってきて良かったって思います」
 昨年7月のサマーナイトフェスティバルで落車の憂き目。肩鎖関節の脱きゅうとじん帯の断裂。右肩が思うようにならないなかで、昨年のビッグ制覇はウィナーズカップだけに終わっていた。ダブルグランプリスラムを掲げる古性にとっては、日本選手権は日本一という称号だけではなく目標への大切なピースになる。
 「(近畿勢の)層が薄いなかで、どんだけ自分が踏ん張れるかだと。とにかく自分はしっかり一個人として成長できるように。あとはこう近畿の層がどんどん厚くなって盛り上がっていけば。決勝は1人じゃなくて、去年の全日本選抜みたいに6人乗れたりとか。そうやって別線になるくらい、幸せな悩みが増えたら一番うれしいなって思います」
 2月の全日本選抜を脇本が制して、その流れを受け継ぐように古性が日本選手権V。古性がいるかぎり、近畿の流れがとどまることはない。
 佐々木がハイペースで駆けて、吉田拓矢は最終2コーナー手前で番手まくりを打った。
 「佐々木君がうまかった。取鳥さんに突っ張られないように、行ってくれた。ダッシュがすごくて、(車間が)空いてしまってもったいなかったですね。あそこで消耗したかなと。(古性の動きは)見えていないです。眞杉に申し訳なかったです。タテに踏むだけだったのに、行くのが早いと思って…。眞杉が3番手を回ってくれた意味がない」
 古性に吉田後位を奪われた眞杉匠は、古性に続く荒井を阻んで立て直す。直線で外を追い込むも3着まで。
 「(脚的には)大丈夫でした。本当は付いていかないとダメですけど…。(最終)2角でフワッとしてしまって、内を空けてしまった。締めておかないといけなかった。古性さんが外からなら対応できたと思いますし、すごいっすね。一瞬の…。(古性は)脚を使ってあの位置まで追い上げて来たと。対処できずダメでした。あれだけ(佐々木が)行ってくれたのに、関東で誰も獲れていない。あそこで空けなければ、(吉田と自分の)どっちか(優勝で)ワンツーだったかなと」

次回のグレードレースは、「アクアリッズカップ(GIII)ナイター」が5月9日~12日、松阪競輪場において開催されます。

今期の活躍が目覚ましい木村皆斗、メキメキと力をつけている谷内健太の若手に小松崎大地、小川真太郎ら実力者もいて、V候補は五指に余る力が拮抗したメンバー構成です。ガールズケイリンからは、先のオールガールズクラシックを沸かせた児玉碧衣、地元の竹野百香、那須萌美らが、中心となって4日間を盛り上げます。

4月30日時点の出場予定選手データを分析した、松阪競輪「アクアリッズカップGIIIナイター」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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