村上義弘は昨年の大会では捲りの3連勝で勝ち上がり、決勝は堂々の逃げ切りで完全優勝を達成している。昨年の近畿旋風を牽引した魂の走りは今年も健在で、日本選手権でも勝ち上がり戦こそ勝ち星はなかったが、常に前に攻め続ける競走スタイルで優出を決めた。決勝では目標の市田佳寿浩が落車するアクシデントもあったが、すかさずインから切り込んでいって鈴木謙太郎の3番手を奪取、そこから捲って7年半ぶりのGI制覇を達成している。ダービー王となった今回も、決して強気の競走スタイルを緩めることはないはずで、昨年に続いての連覇に大きな期待がかかる。
武田豊樹は今年は1月の和歌山記念を逃げ切りで優勝と好スタートを切り、2月の東王座戦も完全優勝で連覇しているが、1月の京都向日町記念、2月の静岡記念、そして日本選手権で優出を逃しており、成績にやや波がある。それでも近況は村上義弘と同様に、前へ前と攻めていく積極的な走りが目立っており、今回も力強い走りで関東ラインを引っ張っていくだろう。
関東では長塚智広が絶好調だ。ギアを4・08に変えた昨年後半から快進撃が続いており、日本選手権でも捲りの3連勝で決勝進出と連日桁違いのスピードを見せつけた。上がりも一次予選が11秒2、二次予選が11秒0、準決勝が11秒4と文句なしのタイムを叩き出している。決勝では位置取りに苦しんで失格と残念な結果に終わったが、今回は気持ちを切り替えてビッグ初優勝を狙ってくるだろう。
同じ4回転の大ギアでも、王者の威圧感が薄れつつある山崎芳仁は今回が正念場か。グランドスラムの懸かっていた日本選手権でも準決勝で深谷知広の先行に対して、イン粘りに出て6着と近況はリズムが悪い。だが、武雄は500バンク並みに直線が長く、走路も軽くてタイムが出やすいので山崎向きのバンクといえる。日本選手権の二次予選では7番手からの捲りで上がり11秒1と圧勝しており体調的には決して悪くなく、王者復活の走りを必ずや見せてくれるだろう。
深谷知広は昨年の競輪祭でGI初優出、暮れのヤンググランプリを優勝、1月の立川で記念初優勝と順調にトップスターへの階段を登り続けている。2月は斡旋停止で約1カ月ぶりの実戦となった日本選手権でも優出こそならなかったが、レース内容は悪くなかった。特選スタートとなった1走目は松岡貴久とのもがき合いの末に松岡の番手にはまり、追い込みで1着。ゴールデンレーサー賞では結果は8着だったが、武田豊樹との壮絶なもがき合いに踏み勝っており、潜在能力の高さを見せつけた。今回も連日の積極的な走りで大会を大いに盛り上げてくれるだろうし、初優勝も狙えるパワーと勢いがある。
九州勢は北日本勢や関東勢を相手に地元戦といえども決して楽な戦いは望めそうにないが、西王座戦では4人が優出、日本選手権では松岡貴久が優出と若手が着実に力をつけてきて地区的なムードは良くなっている。
松岡貴久は西王座戦で落車して、日本選手権は欠場明けの出走となって体調的には万全ではなかったが、それが逆に気負いなく走れる結果となって好成績につながったといえる。準決勝ではカマシ先行の村上義弘の3番手を取り切り、直線鋭く追い込んで1着と金星を挙げており、今回も得意の自在戦での勝ち上がりが期待できる。
武雄がホームバンクの荒井崇博は昨年は膝の故障で低迷していたが、1月の平塚FIで完全優勝を達成して徐々に復調してきている。2月の川崎FIでも決勝は8着に終わったが、準決勝は神山雄一郎を連れた上原龍の先行をきれいに捲り切っている。日本選手権では名古屋がホームバンクの吉田敏洋が残念ながら二次予選で敗れてしまったが、一次予選で2着、6日目特選で3着と好走したように、荒井も地元の意地を見せつける力強い走りで、ファンの期待にしっかり応えてくれるはずだ。
海老根恵太は昨年と打って変わって今年は年頭から好調をキープしており、1月の松戸記念を優勝、東王座戦では2連勝の勝ち上がりで準優勝と健闘している。日本選手権では準決勝で敗れたが、特選予選は8番手からの捲りで2着、6日目優秀は松坂洋平の先行を目標に捲ってきた深谷知広の番手に切り替えて追い込みで1勝を挙げている。捲り主体だけに展開に左右される要素も大きいが、今回もここぞという時に持ち味の勝負強さを発揮してくるだろう。
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共同通信社杯春一番は自動番組編成方式を導入しており、勝ち上がり戦の番組は選考順位や競走の着順によって自動的に決定される。初日も特選予選などのシード番組はなく、全レースが一次予選で、番組編成は選考順位で割り振られる。
2日目は二次予選でAとBの2種類あるが、一次予選で2着までの24名と3着の中で選考順位上位者の3名が二次予選Aに、3着の残りの9名と4着と5着に入った24名と6着の中で選考順位上位者の3名が二次予選Bに自動的に割り振られる。
3日目の準決勝3個レースも二次予選の着順によって自動的に割り振られて番組が決定するが、二予選Aの5着までの15名と二次予選Bの3着までの12名が準決勝に勝ち上がることができる。
例年、共同通信社杯春一番ではスポンサー(共同通信社)の推薦出場枠があり、今開催も和歌山・93期の中野彰人、茨城・90期の芦澤大輔、長崎・86期の井上昌己の3人が選出された。
関西と関東の新鋭である中野と芦澤は将来性豊かな積極的な走りが主な推薦理由だ。中野はビッグ初出場となった2月の東西王座戦では3走のうち2走で主導権取りと期待どおりの走りを見せた。芦澤も東西王座戦の最終日にビッグ初勝利を挙げ、日本選手権でも1勝している。
井上昌己は1月の落車の影響で日本選手権では奮わなかったが、地元戦に向けて九州のエースとしてしっかり立て直しを図ってくるだろう。
共同通信社杯の思い出 10年4月11日決勝(小松島) |
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村上義弘が逃げ切って優勝村上義弘―市田佳寿浩―朝日勇、平原康多、坂本亮馬―加倉正義―守田秀昭、山賀雅仁、菅田壱道の並びで周回。赤板から坂本が上昇して先頭に立つが、打鐘過ぎに村上が内をすくって主導権を奪う。そのとき平原が朝日の後輪に接触、坂本、菅田を巻き込んで落車してしまう。落車を逃れた加倉、守田、山賀は大きく離れ、村上がそのまま逃げ切って優勝、市田が2着。 ![]() |
共同通信社杯春一番を占う 400m武雄競輪場バンク特性を知る |
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直線が長く、追い込みが断然有利
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