レース展望

 来る5月16日に山口県の防府競輪場でトラック競技の大会「第58回全日本プロ選手権自転車競技大会」が開催されるが、それに 先立って14、15日の両日に「全日本プロ選手権自転車競技記念競輪」が実施される。S級S班18名を始め、競技大会に参加する若手選手が勢揃いのシリーズで、333バンクを舞台にスピード感たっぷりの見応えのあるレースが繰り広げられるだろう。

優秀

新ダービー王の兄を目標に村上博幸が連覇を狙う!

深谷知広がパワフル先行で押し切る

村上博幸 京都・86期  今大会には99名の選手が出場予定だが、S級S班の18名と、昨年9月から今年2月までの選考期間における平均競走得点上位者9名の計27名が初日の優秀競走3個レースに出場する。そして優秀競走で3着まで入った選手たちによって、2日目のメインレースであるスーパープロピストレーサー賞が争われる。
 昨年のスーパープロピストレーサー賞を制したのは村上博幸だ。中近ラインで目標にした小嶋敬二との連結が外れてしまったが、自ら捲って優勝、日本選手権、SSシリーズ風光るに続く3連続優勝を達成してダービー王の貫禄と勢いを見せつけた。
 今年も西王座戦は村上博幸が優勝、日本選手権は村上義弘が優勝と年頭から近畿勢の快進撃が続いており、同乗ならば新ダービー王の義弘を目標にできる弟・博幸の連覇の可能性は高い。

深谷知広 愛知・96期  全プロ記念は若手選手の出場が比較的多く、函館で開催された昨年の1着の決まり手を見ると、全22レースで逃げが4回、捲りが8回、差しが10回と自力型の活躍が目立っている。今回は舞台が333バンクへと変わるので、若手自力型の活躍のチャンスがますます広がるだろう。
 そんな若手自力型の中で最も注目を集めそうなのが、やはり深谷知広だろう。日本選手権は準決勝で敗れたが、特選予選が1着、6日目優秀が2着と調子自体は全く問題ない。1月には直線の長い立川で堂々の逃げ切りで記念初優勝を決めているだけに、今回もパワフル先行での2連勝が期待できるはずだ。

新田祐大 福島・90期  ライン的に有利なのが北日本勢だ。S級S班の6名に岡部芳幸と渡邉一成の計8名が優秀競走に出走する。
 新田祐大や渡邉一成が北日本の先導役を務めそうだが、短走路が舞台だけにラインの援護を受けての押し切りも十分だ。特に、新田は日本選手権では残念ながら落車してしまったが、昨年の競輪祭での準優勝からずっと勢いに乗っており、SSカップみのりに続いてのビッグ優勝が狙える。

特選

GI初優出を達成して勢いにのる鈴木謙太郎

鈴木謙太郎 福島・90期  初日の特選3個レースには選考順位28位から55位までの27名が出走するが、最も勢いのあるのは鈴木謙太郎だ。
  日本選手権では全4走で主導権を取り切り、二次予選と準決勝は堂々の逃げ切りでGI初優出を達成した。準決勝は武田豊樹や海老根恵太を敗っての大金星で、もちろん今回も連日の先行策で押し切りを狙ってくる。
  五十嵐力が好調だ。1月の松戸記念では海老根恵太を連れて先行して海老根の地元優勝に貢献、逆に2月の静岡記念では岩本俊介-海老根恵太の千葉コンビを捲ってうれしい記念初優勝を達成している。近況は先行・捲りだけではなく、番手戦を含めた自在な動きでの勝ち星も多く、日本選手権でも一次予選で敗れたが、敗者戦では追い込みと捲りで2勝している。
  木暮安由は一時期の勢いを失って昨年はやや低迷していたが、ここへきて再び調子を上げてきている。2月の松戸FIは逃げと捲りで完全優勝を達成、日本選手権は二次予選で敗れたが、1着1回、2着1回のまずまずの成績だった。勝ちにこだわった強気の走りが戻ってきており、今後の活躍が大いに期待できる。
  地元・中国勢では三宅達也が復調気配だ。1月の四日市FIを優勝して好スタートを切ると、2月の高松記念では決勝3着、日本選手権では敗者戦ながら4日目一般で上がり10秒9の快速捲りで圧勝している。レース運びがやや淡白なところもあるが、ツボにはまった時の破壊力はやはり見逃せない。

選抜

抜群の仕上がりで勝ち星を量産する友定祐己

 初日選抜の5個レースには選考順位52位から99位までの選手が出走するが、近況抜群の仕上がり具合で勝ち星を量産しているのが友定祐己だ。2月の大宮FIと3月の高松FIを優勝、4月の防府FIは準決勝で敗れたが、初日特選と3日目特選は捲りで1着と防府バンクとの相性も悪くない。
  地元・山口からただ1人参戦の桑原大志も侮れない。1月の防府FIでは長塚智広、根田空史らを相手に5番手からの中割り強襲で優勝を決めている。中国地区には期待の若手の才迫勇馬もおり、番組次第では今回も桑原の一発がありそうだ。
  矢口啓一郎が近況好気合いだ。日本選手権では一次予選で敗れたが、3日目一般では内に詰まった苦しい展開から強引にコースをこじあけて1着としぶとさが増してきている。先行・捲りの自力勝負も相変わらず好調で、選抜組なら力の違いを見せつけてくれるだろう。
  飯野祐太が震災後の初開催になった4月の豊橋FIで見事な優勝を決めた。決勝は先行した相川永伍の番手を奪っての差し切りで、執念で掴んだ勝利といっても過言ではない。今回も被災地復興に向けて頑張る北日本勢の熱い走りにも注目したい。

語り継がれる名勝負
スーパープロピストレーサー賞
村上博幸が自ら捲りを打ちV!

 小嶋敬二―村上博幸―市田佳寿浩、平原康多―岩津裕介―小倉竜二、伏見俊昭―成田和也―岡部芳幸の並びで周回。青板から伏見が上昇するが、続いて平原も上昇して先頭に立つ。しかし、伏見が内から抜け出して主導権を奪い返し、中団は内に小嶋、外に平原で並走となる。最終1角で今度は小嶋が内を突いて先頭に立つが、立ち後れた村上は5番手に入る。小嶋は快調に飛ばすが、3角から捲りを打った村上が直線伸びて優勝、2着が小嶋、3着は市田だった。

昨年のSPR賞ゴール。(2)村上博が優勝。
昨年のSPR賞ゴール。(2)村上博が優勝。