デュッセルドルフ通信
2010年4月2日
2009-10シーズン終了
―10-11シーズンはオリンピックに向けて―
皆さんこんにちは。なんだか久し振りの気がするのは気のせいでしょうか?いやいやそんなはずでは・・・なんだかご無沙汰の気がしますが、というかご無沙汰しております。なんてことはない、更新せずに自分がサボっていただけですね。申し訳ありません。月に1度の連戦で10月から1月まではあっという間。ワールド・カップ第4戦の終わった1月末からここまで少し間の空く形となりました。ということでこの隙に、と私、報告やらなんやらを兼ねて2月に日本へ一時帰国させていただきました。まあ色々と皆さんと打合せさせていただいたりしながら、やはり年に1回くらいはと健康診断を受けてみたり、業務終了後の空いた時間や隙間をぬってやれ運転免許証の更新だ、帰りの荷物の重さを気にしながらあれこれ買い物をしてみたり・・・とてもありがたいことに、仕事関連の方々や友人からお声掛けをいただきまして、夜の楽しいひとときも連日連夜・・・普段は1本3千円と高嶺の花の「下町のナポレオン」もここでは庶民価格・・・せっかくだからあれも食べとけ、これも食べとけと続けてなんだかお疲れ気味。私が泊まっていたのはなぜだか日本語がほとんど聞こえてこない、謎の無国籍エリアだったのですが、人がようやく寝付いたころに何と言っているのかわからない奇声や笑い声がホテルの廊下から大きく響き、これに起こされて眠れなくなってしまったりなどとやっているうちにどんどんと元気がなくなり、食欲もなくなり、なんだか放心状態になりながら出発前夜の宿泊地の成田へと向かったのでした。成田のホテルに着いたころは悪寒がし、んーやばいなと思いながら水をたくさん飲んで眠ったのですが、なんだか久し振りにうなされてしまい、良く眠れないまま朝が来てしまいました。ところで皆さん、成田空港にお医者さんがあるのって知っていましたか?普段は私、よほどでないと医者にはかからんのですが、母国に帰ってきての体調不良で弱気、もしもインフルエンザで空港のサーモセンサーなどに引っ掛かり、「チミチミ、まさかインフルエンザではないのかい?ちょっとこっちに。」などと言われ入国拒否をされたらなどと弱気弱気のオンパレードで普段は行かない医者に空港で行ってみることにしたのでした。診療所は第1、第2の両ターミナルにあり、さっさと終わらせたいがために出発は第1ターミナルだったにもかかわらず、30分早く開業する第2ターミナルの診療所でオープンを待つほどの気の入れよう。体温を測った後に名前を呼ばれて先生に「どんな感じなの?」と聞かれ、素直にこんな感じでこんな感じでと答え、「いや、インフルエンザだったら厭だなと思いまして・・・」とおそるおそる伝えると、「症状を聞く限りねえ・・・だいたいインフルエンザだったら一気にバーンって熱出るしねえ・・・ま、検査やってもいいけど、まず出ないと思うよ。なんか変なもの食べなかった?」ということで、ノロウイルスだかなんだかでは・・・とのこと。まあ、良かったのか悪かったのか分かりませんが、整腸剤と解熱剤を出してもらって診察終了となったのでした。薬を飲んでみたものの体調不良は相変わらずで、機内でも食欲がわかず、機内食にも全く手を付けずに映画を見ていたのですが、ふと気づくと腕を何度も掻いている自分が。なんで痒いんだろ、と思って腕を見てみると一部がぽつんと蚊に刺されたようになっています。蚊なんてこんな時期にいるかなあ・・・と思い袖をまくってみると、あらまあ、同じようなものがいくつもあるではないですか。これは嫌な予感が、ということで席を立ってトイレに駆け込みチェックしてみると、足やら腰やらほぼ体中に発疹がでているではないですか・・・こりゃ痒いわなあ・・・と思いながらも、なんでこんなの出てんだろ?と少し不安になりつつ、でも全身に出ているから帯状疱疹ではないな、まあじんましんだな、と確認し、とりあえず我慢するしかないな、ということで・・・なんでもうちょっと早く、医者に行く前に出てくれなかったのか、と少しじぶんの体を恨みながら、長いフライトの間、痒みと戦ったのでした。なんとか家に着いたのは夜、そして翌日は土曜日、ということで医者もやってませんので、我慢するしかないか、という状態でしたが、なんせ、痒すぎる・・・一晩は我慢したものの、土曜日は我慢できず、「じんましん」ってなんていうんだ?と調べてからとりあえず薬局へと向かいました。薬局でじんましんの薬がほしい旨伝えると、塗り薬を出してきてくれましたが、塗り薬だけで効くとも思えず、飲み薬もちょうだいと言うと、24時間に1回だけ飲めといって渡されたのがあったのですが、これが効果てきめん!しばらくしたらすっとひき、その後、また体中に発疹が出たものの、再度これを投与するとさっと引き、以後、じんましんが出てくることはありませんでした・・・自律神経がおかしくなっていたのかも知れませんが、いい歳なのでもう少し自分自身をしっかりとコントロールしたいと思います。
上のスタンド、仮設です。
地元選手を応援する観客
スクラッチで疾走する盛選手。ドキドキしちゃいました。
盛選手を持ち上げて祝福する飯島、渡邉選手
などと、仕事をさぼっていた言い訳なんて、そしてこんなおっさんがどうなろうと知ったこっちゃないんです。ワールド・カップ4戦を終えてシーズン総決算の世界選手権がデンマークのコペンハーゲンで行われました。WEB月刊競輪世界選レポートが伝えてくれているのでご覧いただいた方も多くいらっしゃるのではないかと思うのですが、またNHKのおはよう日本でも放送されましたのでこちらをご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。そうです!やりました!2日目の男子スクラッチで盛選手が銅メダル獲得。表彰台に上がったのです。(
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ここのところずっと安定した成績を残している中で舞台は昨年のワールド・カップで表彰台の真ん中、金メダルを獲得したコペンハーゲン。ロードの実戦も走り、温かいオーストラリアでの直前合宿でしっかり体を仕上げてきたとあってはいつこのようなことが起きてもおかしくはないといったところですが、やはり目の前でのメダル獲得というのは期待しつつもなかなか難しいよな、と思っていたところ、本当に見事な銅メダル獲得です。「なんと言ってもスクラッチは本当に展開次第、展開次第で誰が勝つのかホントに分かんないので・・・」と盛選手がいつも言っている中で、地元の英雄ラスムッセンとの逃げということで全面的な観衆の後押しを受ける、そういった意味でも展開をうまく引き寄せてのこの結果、すばらしいの一言です。あちこちに書かれているとおり、17年前に吉岡稔真がノルウェーのハーマルでケイリンの銅メダルを獲得して以来の快挙。というより、エンデュランス系種目においてはなんと初のメダル獲得ですから、その偉大さといったら・・・ここでまた新たな歴史が刻まれたわけですが、これからもより以上の成績を、そしてそれがしっかりと評価されるよう、認知度を高めるべく、我々も努力していきたいと思います。とにかく盛選手、おめでとうございました、そしてありがとうございました。
そんな盛選手にとって今回の大会はこの偉大な出来事とは別にまた違った要素を持つ大会でもありました。2007年から世界選手権の種目に導入されて今回が4回目、そして昨年12月にロンドン・オリンピックの正式種目としての採用が決定したオムニアムに参加することとなっていたからです。色々な議論や意見があったロンドン五輪の種目でしたが、男女同一種目で行うこととなり、男子については個人追抜き、ポイント・レース、マディソンがなくなり、このオムニアムが新たに追加されることとなって、今回はどの国もやや手探りなところはあるものの、俄然注目度アップ。オムニアムの正式種目採用が決まった後も、当初は「まずは今シーズンは(スクラッチやポイント・レースで)世界チャンピオンになることを目標にしているんで・・・」とオムニアムへの挑戦については明言していなかった盛選手にとってもまずは今後に向けての腕試し、という状況。開催前の練習でタイム・トライアルのバイクを携える姿を見て「何かこう見るとやっぱり少し違和感感じますねえ・・・」と伝えると「自分が一番違和感を感じてますよ・・・乗ってるというか乗らされてますよ・・・」と。2日目の銅メダルで気分を良くしてから最終日5日目のオムニアムに臨んだものの、こちらは残念ながら出場18人中最下位の18位という結果に終わってしまいました。(
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メダル獲得と最下位というやや極端な成績となった今大会を振り返ってもらうと「いやあ、やらなければならないことがたくさんありますね。オムニアムのタイム・トライアル系は初めての経験でしたし・・・スクラッチやポイント・レースも普段のものとは全く別物だし、みんな考え方が違うんですよね。うーん、スクラッチの銅メダルにしても、このオムニアムの結果でより錆びてしまったという感じですかねえ・・・気づいていたんですけど・・・ちゃんと力が付いてきているわけではないのに展開に恵まれたり、着を取れたりしてたんで、あんまり正面向いてこなかったところがあったんですが、このタイム競技で他との力の差がしっかり結果として表れて・・・スクラッチで2着だったコロンビアのやつも僕より全部タイム上ですし、金だったラスムッセンも当然そうですよね。そういうの気づいていたんですけど、それが現実になって、やらなければ、強化しなければならないことが分かったんで、それだけでも収穫です。頑張ります。」という言葉。ただでさえロードとトラックの2足のわらじを履いての挑戦を続けている中、エンデュランス系種目が多いものの、スプリント種目も加わったオムニアムへの新たな挑戦。言葉で言い表せない大変さがあると思いますが次のステップへ向けて頑張っていってほしいものです。
オムニアム、タイム・トライアルでの盛選手
競走を終えて会場に来ていた
リャネラスと飯島選手
そんな快挙を達成した盛選手の先輩であり盟友、トラック中長距離陣をずっと引っ張ってきた飯島誠選手は盛選手の走りをトラックの中からサポート。自身は初日のポイント・レースに出場し10位だった。(
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「残り120周から110周辺りで行こうという感じで考えていたけれど、前に出てだれかが来るのを待ったりしてもなかなか来てくれなかったりで、考えたように上手くはいかなかったですね。イタリア(チッコーニ)と2人での逃げはちょっときつかったけど、まああそこもポイントは取れたんで・・・でもラップしたかった・・・しなきゃいけなかったですね。勝ったキャメロン・マイヤーとかもロードとか実戦で走ってますからね。やっぱり実戦から遠ざかっていたのはきつかったです。まあ、ないものは仕方ないんですけどね・・・そういうのも含めて、まだ勿論現役でいくつもりですけど後輩たちに道筋をつくっていかなきゃなんないですね。それにしてもキャメロン・マイヤーは強かったですね。リャネラスみたいですね。」最近は後輩への道筋といったことを良く口にする飯島選手。盛選手の活躍は飯島選手にも大きく映ったことでしょう。
意表をついて逃げ切ったフェルステマン
さて、今シーズンの結果を振り返りながら、この今回の世界選手権、どんな感じで進んでいくのかね?となりますと、やはりワールド・カップ第1戦のマンチェスター大会でクリス・ホイを中心にその強さをまざまざと見せつけ、以後の大会にほとんど主力級を送ることのなかったイギリス・チームがこのコペンハーゲンに向けて万全に仕上げて臨み、結果を出してくるというのが大方の予想となるところでしょう。そして次の第2戦でイギリスの主力級はいなかったものの、国歌をこれでもかっ!というくらい聞かせてくれたオーストラリア勢の活躍も想像できますし、全体的に主力級の始動が遅れたものの他の選手がきっちりと結果を出してきているフランス勢がどう絡んでくるか?北京大会で層の厚さを見せた中国勢が得意のタイム系の競技でどこまで食い込んでくるのか?といったところが見どころとなるんだろうなーという感じでした。ただそのイギリスの強さをまざまざと見せつけられるのだろうという予想は、初日から???という状況になります。初日に行われたチーム・スプリント。8組16チーム出場の7組目に出場のイギリス・チーム、スタート直前でクリス・ホイにマシン・トラブル発生で、スタートを待たされる状況に。ここからなんだか流れが変なほうに行ってしまったのか?タイムは43秒802とイギリス・チームとしては平凡と言わざるを得ないタイム。その後、8組目で登場したフランス、ドイツの後塵を拝することとなってしまい、3、4位決定戦へと回ることに。その相手は躍進著しい中国。テクニック系の種目ではまだ粗削りな面が見られるものの、タイム系の種目ではとりわけその成長の著しさを見せている中国が予選4位でイギリスとの対戦。決勝では予選よりタイムを伸ばして44秒002と来季の43秒台をほぼ確信させる内容でした。本当はこの位置に我が日本が食い込みたいところですが・・・(
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イギリスは3位となったものの拍子抜けの感は否めずといった感じ。そして決勝は43秒373で1位通過のフランスと43秒458で2位通過のドイツとの争い。第1走者のタイムでは現在世界ナンバー1のフェルステマンが後続をちぎり気味に発進していくスタイルのドイツが予選の記録を上回る43秒433で昨年の覇者フランスを破り優勝で2日目へと流れていきます。
2日目はケイリンでまた厭な風がイギリス・チームに吹いてきます。第1ラウンドでのクリス・ホイ。フライングがあって仕切りなおしのスタート直後、大外からスタートしてペーサーの後位を狙うマレーシアのヌグが大きく切れ込みながら外からくるところで、ヌグに前輪を払われて落車。(ヌグは斜行して落車させたことから失格)スピードののっていないところでの接触落車で大事もなかったものの厭な空気が流れます。結果的には3連勝で土付かずの優勝、金メダルだったのですが (
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マンチェスターで感じさせた、逃げて良し、まくって良しでこれは手がつけられん、とあきれるほどの強さといったものは正直感じられず・・・実際決勝はマレーシアのアワンに「ほんとにちょっとの差だったよ、悔しいなあ・・・」と言わせるとおり肉薄された内容でした。
いつもと何かが違っていた
クリス・ホイとグレゴリー・ボジェ
ブリティッシュ・サイクリングに暗雲か?
しっかり4連覇のヴィッキー・ペンドルトン
そして4日目のスプリント。このスプリント予選が圧巻で、出場選手中、クリス・ホイ、グレゴリー・ボジェ(フランス)、シェーン・パーキンス(オーストラリア)、ケヴィン・シロー(フランス)の4人が9秒台を出すという聞いたことが無いような好内容。ボジェに次ぐタイムで予選2番手通過だったホイは初戦の1/16決勝はあっさりと勝ったものの続く1/8決勝は先のスタートに強いドイツのフェルステマンが相手。ここもあっさりかと思われたところなんとこのフェルステマンが奇襲!スタートの合図の笛の直後なんといきなりのダッシュでみるみると差を広げていく。はてはて3周逃げ切れるのか?という思いと同時に世界ナンバー1のスタート・ダッシュ力だからなあ・・・という思いが交錯。はじめにどよめいた場内の歓声は1周、2周と重ねるうちにどんどんと大きく!意表を突かれたホイは懸命に後を追い最後は猛烈に差し込んでくるも届かず!なんと敗者復活戦にまわることに・・・奇襲に屈した部分はあるものの、やはりなにかクリス・ホイらしくない、という今シリーズを象徴する結果となってしまいました。その後敗者復活戦を勝ち上がったものの、結果優勝するボジェとの1/4決勝で先勝するもののその後2本取られて敗退、しかも敗退者による5-8位決定戦に、マシュー・クランプトン、ジェイソン・ケニーとともに出場、4人中3人がイギリス勢という想像もつかなかった光景を目の当たりにすることに・・・しかも前日に行われた女子スプリントでも世界選手権3連覇中の女王、ヴィクトリア・ペンドルトン(イギリス)のレース内容もなんだか冴えていないような雰囲気が・・・いやあ、トラック王国イギリスにピンチが???と思わせる感じです。 とはいえ、結果的にそうはいきますかい、といった強さを見せてくれたのもイギリス。ペンドルトンも1日開けた1/2決勝からは本来のらしさを見せてくれ、決勝もあっさりと2本連取のこれで世界選手権スプリント4連覇を達成。そして最終日に行われたオムニアムで優勝したエドワード・クランシー。団体追抜きで、決勝には出場してきたキャメロン・マイヤー擁するオーストラリアに負けてしまったものの銀メダルとなったイギリス・チームの一員である彼がオムニアムに優勝したのですが、団体追抜きに出場する選手が1kmのタイム・トライアルで1分2秒243で200のフライング・タイム・トライアルで10秒448・・・しかも1kmは4種目やってきて最後の5種目めとしての記録ですよね・・・と・・・イギリス・チームのパフォーマンス・ディレクターのブレイルズフォード氏がオリンピック種目の変更について聞かれる度に、残念だ、という代りに「与えられた状況の中で対応していくだけだしそれが出来ると思っている。」と言っていたのはこういうことだったのかと・・・イギリスの力強さをやはり見せつけられた部分でもあったのでした・・・
次はアジア選手権出場の渡邉選手。
好走を期待。
こちらもアジア選手権の新田選手
浅井選手は競輪参加で
アジア選手権は成田選手
始まってみればあっという間の5日間だったコペンハーゲンの世界選手権大会。この大会の終了とともに今シーズンのトラック種目も終了!と同時にこれが新たなシーズンのスタートを意味するのです。新シーズンはいよいよオリンピックの出場権獲得のための争いの火ぶたが切って落とされるシーズン。これからはしっかりと獲れるところでポイントを取って出場権に繋げていかなければならない、ミスが許されない状況が続いていきます。他国もこれまで以上に力を入れて臨んでくるシーズン、緊張感とともに見ごたえあるシーズンとなるはずです。選考方法は噂されてはいるものの、まだ正式にUCI(国際自転車競技連合)からは発表にはなっていない状況なのですが、全体の上位に食い込んでいかなければならないのと同時に大陸毎の参加枠が設定されるであろうことから、アジアの中での争いも熾烈になること必死!この後4月中旬にアラブ首長国連邦・シャルジャで行われるアジア選手権もそういう意味ではとても重要な大会となってくると言えるでしょう。躍進著しく少し先に行かれてしまった感のある中国、こちらも国を挙げて強化しているマレーシア、その他の国々だって気を抜いているとどんどんと力をつけてくるかもしれません。色々とこなしていくのが難しい面もあるとは思うのですが、新たなシーズン、気持ちも新たに日本勢の活躍を期待したいと思います。力強い日本の姿を!頑張れニッポン!
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