第20回寛仁親王牌が舞台を新潟県の弥彦競輪場へと移して開催される。中心となるのは武田豊樹が率いる地元・関東勢だが、村上兄弟率いる近畿勢も相変わらずの強さを維持しており、復調気配の北日本勢の巻き返しも期待が集まる。
主役は関東のエース・武田豊樹だ
海老根恵が得意の捲り追い込みで勝ち上がる
今大会の見どころの一つといってもいいのが深谷知広の先行力だ。4月までのビッグレースではやや期待はずれの結果が続いていたが、4月の別府記念や5月の豊橋記念の勝ち上がりでは圧倒的なパワーを見せつけており、潜在能力は並外れたものを持っている。そしてついに6月高松宮記念杯でデビュー最速のGI 優勝を達成した。その深谷が弥彦バンクにいかに立ち向かっていくかは誰もが注目するところだろう。
08年に弥彦で開催されたふるさとダービーでは全44レースのうち逃げ切りはわずかに5回だけだった。準決勝に至っては3個レースとも捲りの選手が1着で、逃げた選手は全員着外に沈んでいる。そんな厳しい条件の中で、深谷がいかに積極的に仕掛けられるかが、中部勢の浮沈のカギになるといってもいいだろう。
逆に得意の捲り追い込みで好調を維持している海老根恵太にとっては、弥彦は戦いやすいバンクだろう。昨年6月の弥彦記念でも決勝は4着に敗れているが、準決勝は山崎芳仁が主導権を握る中、7番手に置かれながら得意の3コーナー過ぎからの捲り追い込みで2着に届いている。
今年前半の海老根は日本選手権は準決勝敗退、共同通信社杯春一番も準決勝敗退とあと一歩伸びが足りない印象があったが、5月の全プロ記念競輪・スーパープロピストレーサー賞では中団をうまく取ってからの捲りで圧勝と健在ぶりをアピールしており、今回も切れ味鋭い捲りを連発して勝ち上がっていくことだろう。
今大会の主役を務めるのは関東のエースの武田豊樹だ。1月の東王座戦では目標の平原康多が新田祐大と真っ向からもがき合う展開となったが、最終2コーナーから自力に転じての捲りで優勝、4月の共同通信社杯春一番でも先手を取った平原の番手から楽々と抜け出して優勝と存在感を見せつけており、今回も平原との好連係から関東ラインでの上位独占を狙ってくる。
ただ、5月のSSシリーズ風光るの決勝では関東勢が4人揃い、武田は平原の前回りを選択したが、北日本勢に先手を取られて関東勢は総崩れと悔しい思いをしている。そのため今回も、メンバー次第では武田が先頭で関東ラインを引っ張っていく展開も十分に考えられる。
侮れないのがホームバンクでの初のGI 開催に燃える諸橋愛だ。昨年6月の弥彦記念決勝では武田の番手回りという絶好の組み合わせとなり、武田もしっかりと先手を取ってくれたが、山崎芳仁の7番手からの捲りに飲み込まれてしまい悲願の地元記念優勝はならなかった。その雪辱を晴らすためにも、今回は連日の気迫溢れる走りで決勝進出を目指してくるだろう。
スプリント3連覇の北津留翼のスピードが侮れない
混戦得意の松岡貴久が巧者ぶりを見せつける
北津留翼は全日本プロ選手権自転車競技大会のスプリント決勝で渡邉一成を下して、同種目3連覇を達成、今年も初日は日本競輪選手会理事長杯からのスタートとなる。
昨年は初日の理事長杯が7着、2日目の2次予選Aが8着敗退とせっかくのチャンスを活かせなかったが、一昨年は初日が8着、二次予選が逃げ粘りの2着で準決勝まで勝ち上がっており、今回も勝ち上がりが期待できる。
根っからのスプリンターの北津留は競輪競走に関してはあまりテクニックがあるとはいえないが、得意のカマシ先行がうまく決まった時の破壊力はトップクラスに匹敵するものを持っているし、09年の競輪祭以来のGI での決勝進出も決して夢ではない。
北津留とは対照的に、ビッグレースで巧者ぶりを発揮して大活躍なのが松岡貴久だ。
日本選手権の準決勝は逃げる村上義弘の3番手に追い上げて1着で決勝進出、共同通信社杯春一番の準決勝も逃げる村上義弘の後位がもつれて隊列が短くなったところを捲っての2着で決勝進出と、混戦なればなるほど力発揮してくるタイプだ。
5月の宇都宮記念の準決勝では一本棒の展開で仕掛け切れずに6着敗退とモロさも見せているが、直線の長い弥彦バンクでのGI なら勝ち上がり戦での混戦は必至で、松岡にとっては願ってもないチャンスが必ずや訪れるだろう。
今年はS級S班が不在の中・四国勢は今回も出場予定選手の全員が予選スタートと苦戦は免れないが、そんな中でベテランらしい存在感を見せてくれそうなのが小倉竜二だ。
近況はやや勝ち星が少ないが、目標不在のレースでも最後は2着、3着へと突っ込んでくるコース取りの巧みさは健在だ。
5月の名古屋FI 決勝では中川誠一郎の先行を差し切って今年初優勝、6月高松宮記念杯で久々のGI 優出と調子も上向きだ。今回も才迫勇馬や佐々木則幸らを目標に、最後はしっかりとコースを見極めて上位進出を狙ってくる。
手島慶介の捲りを差して後閑信一が地元で優勝! |
渡部哲男―合志正臣が前受け、山崎芳仁―佐藤慎太郎―内藤宣彦に岡部芳幸が続き、海老根恵太―手島慶介―後閑信一が後攻めで周回。残り3周になったところで海老根が上昇開始、渡部を抑えて先頭に立つ。赤板から今度は山崎が上昇して海老根を抑えるが、岡部は山崎ラインを追わず、渡部ラインの後ろに付ける。打鐘手前から渡部が仕掛けて主導権を狙いにいくと、山崎が車を外に持ち出して突っ張る構えを見せるが、空いた内を岡部が上昇してきて先頭に立ち、そのまま先行してしまう。岡部の奇襲攻撃に山崎はバックを踏まされて後退、踏み直した渡部が岡部後位に入るが、自力に転じた手島がバック過ぎに岡部を捲り切る。最後の直線に入ると手島と後閑の群馬コンビの一騎打ちとなり、ゴール直前で差し切った後閑が優勝、手島が2着で、3着には佐藤が突っ込んだ。
寛仁親王牌の思い出
優勝 後閑信一
第15回 平成18年7月4日決勝 |
直線が長く、追い込み型が断然有利 |
夏場はバンクが軽くなるので捲りが決まりやすい
弥彦は400バンクの中では一宮、武雄次いで3番目に直線が長く、追い込みが断然有利だ。
08年4月に開催されたふるさとダービーの決まり手を見てみると、全44レースのうち1着は逃げが5回、捲りが9回、差しが30回、2着は逃げが7回、捲りが9回、差しが13回、マークが15回だった。
直線ではインコースよりも中バンクがよく伸びるので、3、4番手からでも4コーナーから車を外に持ち出して頭に突き抜けるケースがある。
08年の大会では4コーナーで5番手だった選手が直線伸びて連絡みし高配当というケースがよく見られ、5番手だった選手が2着になったレースが9回、1着にまで突き抜けたレースも1回あった。弥彦では最終4コーナーまでいかに脚をためられるかがポイントになってくる。
ただ、寒冷地の弥彦は冬場は休催となり、毎年4月にはウォークトップを塗り直すので春先はバンクが重いが、今回寛仁親王牌が開催される7月頃はバンクも軽くなるので、先行・捲りの自力型の活躍のチャンスが大きくなる。カントがきつめで直線も長いので、特に遅めの捲り追い込みが決まりやすくなる。
遅めの捲り追い込みが有効
日本で唯一の村営の公営競技場で、周長は400m、最大カントは32度24分17秒、見なし直線距離は63.1m。四方をうっそうとした森に囲まれていて、3コーナーから風が吹き込んでバック向かい風の日が多いが、3コーナーを過ぎると影響がなくなるので遅めの捲り追い込み有効。最高上がりタイムは昨年6月の記念決勝で山崎芳仁が7番手からの捲り追い込みで叩き出した10秒6。
弥彦バンク
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