レース展望

 6月6日に薨去された寛仁親王殿下に対し哀悼の意を表するため、半旗を掲揚し、選手及び関係者は喪章を着用のうえ、寛仁親王殿下を追悼する大会として開催いたします。

武田豊樹と長塚智広が関東を引っ張る
ダービー王・成田和也が北日本での存在感を増す

長塚智広 茨城・81期  寛仁親王牌は昨年に続いての弥彦競輪場での開催となるが、昨年の大会では地元・関東からの決勝進出は神山雄一郎ただ1人だったので、今年は万全の態勢を整えて巻き返しを狙ってくるだろう。
 武田豊樹は共同通信社杯の一次予選で落車、次場所の平塚記念でも落車と、春先まで続いていた絶好調モードにブレーキがかかってしまった。
 だが、高松宮記念杯で3度目のGI優勝を飾って復活。今回も関東のエースの誇りと責任感から、いつもどおりの積極的な走りで関東ラインを引っ張っていくだろう。

 長塚智広が調子を上げてきている。長塚は日本選手権で優出後に2カ月間の長期欠場となったが、5月の宇都宮記念では2日目優秀で深谷知広の逃げを8番手から捲り切っての2着で番手追走の牛山貴広とワンツー、準決勝は逃げ粘りの2着で神山雄一郎とワンツー、決勝も圧巻のスピードを見せつけての捲りで優勝を決めている。

成田和也 福島・88期  北日本は日本選手権で成田和也が優勝、共同通信社杯で渡邉一成がビッグ初制覇と勢いを取り戻してきた。今回は渡邉一成と新田祐大が不在だが、山崎芳仁が復調気配だし、全プロの1KmTTを優勝して日本競輪選手会理事長杯にシードされた坂本貴史の積極的な走りにも注目が集まる。

 そしてなによりも、ダービー王・成田が着実に北日本での存在感を増してきているのが頼もしい。宇都宮記念では目標不在の苦しい戦いが続いたが、初日特選と準決勝では鋭い差し脚を発揮して2勝を挙げている。

積極果敢な若手が波乱を呼ぶ
エース・村上義弘の熱い走りが近畿を盛り上げる

村上義弘 京都・73期  近畿は脇本雄太、藤木裕、川村晃司、稲垣裕之など、近況好調な自力型が目白押しだ。エース・村上義弘は冬場の連戦の疲れが出た影響か、近況はリズムが狂っている印象があるが、それでも一走入魂の熱い走りは健在だし、村上の魂の走りに影響されて、近畿の後輩たちの走りもますます熱くなるばかりだ。村上が不動のエースとして頑張っている限り、近畿の勢いが衰えることはないだろう。
 村上は共同通信社杯では二次予選Aでまさかの敗退となったが、3日目特選では藤木裕の先行に乗って快勝している。


脇本雄太 福井・94期 脇本雄太は共同通信社杯の決勝で落車失格したが、汚名返上とばかりに5月の全プロ記念競輪では逃げ切りの2連勝、次場所の前橋FIも逃げ切りで優勝している。もちろん今回も、しっかりと徹底先行を貫いてくる。
 その脇本を6月の富山FIで敗って今年初優勝を決めたのが川村晃司だ。決勝では近畿別線となり、打鐘で川村、脇本、木暮安由の3車が並んで激しいもがき合いとなったが、川村が主導権を取り切り、木暮に番手にはまられながらも堂々と押し切っている。川村は今年前半こそやや低調だったが、この優勝が川村の復活の狼煙となるだろう。

松岡貴久 熊本・90期
 中部の機動力も充実している。深谷知広と浅井康太に金子貴志と永井清史、そして2班の若手ながら、全プロのチームスプリントを優勝して特別選抜予選にシードされた松岡篤哉、竹内雄作、森川大輔の岐阜トリオには注目したいところ。
 森川は今回がビッグレース初出場だが、松岡は4月の共同通信社杯で1勝、竹内も共同通信社杯で2度連絡みしており、この岐阜若手トリオの積極果敢な走りが勝ち上がり戦で波乱を呼ぶ可能性も十分だろう。

深谷知広 愛知・96期  深谷知広は共同通信社杯では二次予選Bでゴール後に落車して3日目以降を欠場、次場所の宇都宮記念も準決勝で4着敗退と近況は流れが良くない。それでも、4日目特別優秀では捲りで圧勝しており、落車の影響もほとんどなく調子自体は悪くない。昨年の大会では準決勝で末脚を欠いて4着に敗れているだけに、今年は気合いを入れ直して優勝を狙ってくる。


浅井康太 三重・90期  昨年の大会でGI初優勝を飾った浅井康太も今年前半はやや低調で、共同通信社杯は二次予選Aで敗れている。しかし、全プロ競技大会のケイリンで優勝して初日理事長杯のシード権を獲得、5月の別府記念では決勝3着と復活の手がかりを掴んでいる。

近況好気配の九州の追い込み型が逆転一発を狙う
スピードは戻っている海老根恵太が侮れない

 九州は機動力の面では他地区に押され気味だが、井上昌己、大塚健一郎、小野俊之ら実力者が好調だ。4月の共同通信社杯で準決勝まで勝ち上がって復調気配の松岡貴久や近況は積極的な走りで先行回数が増えている北津留翼らとの好連係が決まれば、九州の一気の台頭も十分だ。
 井上は共同通信社杯では準決勝で敗れたが、予選は2連勝で、4日目特選も捲って1着と3勝を挙げている。5月の小倉FIの決勝は8番手からの大捲りを決めて優勝、次場所の広島FI決勝も4番手からの捲りで優勝と乗りに乗っている。
 大塚健一郎も共同通信社杯は二次予選で敗れたが、3日目特選では最終バック9番手の展開から中割り強襲を決めて2着、4日目特別優秀では松岡貴久の先行に乗り、神山拓哉の捲りを巧みに牽制しながら直線鋭く伸びて松岡とワンツーを決めている。5月の地元・別府記念では決勝7着に終わったが、二次予選は北津留翼を目標に、準決勝は松川高大を目標に連勝で勝ち上がって地元の意地を見せつけている。
 海老根恵太 千葉・86期 南関東ではやはり海老根恵太の一発が侮れない。4月の川崎記念の決勝は捲り圧勝の深谷知広を追いかけての2着、次場所の松戸FIは格の違いを見せつけての完全優勝、5月の平塚記念は決勝4着と脚力的には完全に戻っていると見ていい。
 レース捌きが単調で、勝負どころで7、8番手の展開が多いのが弱点だが、昨年の大会では準決勝まで勝ち上がっており、4日目特別優秀では8番手からの捲り追い込みで2着と、弥彦バンクとの相性も悪くない。

 弥彦バンクとの相性が抜群なのが四国の濱田浩司だ。近況の成績は決して良好とはいえないが、昨年の大会では2連勝で準決勝まで勝ち上がって波乱を呼び起こした。
 一次予選では深谷知広の先行を7番手から捲り切って佐々木則幸とワンツー、二次予選は武田豊樹の先行を8番手から仕掛けて捲り追い込んでおり、今年も濱田の一発に期待してみたい。
福島4車の結束力で山崎芳仁が通算4度目のGI優勝
 新田祐大―山崎芳仁―岡部芳幸―成田和也の福島4車が前団、単騎の渡部哲男、小橋正義が続き、平原康多―飯嶋則之―手島慶介の関東トリオが後攻めで周回を重ねる。青板手前から平原が上昇して新田を抑えにいくが、新田は青板で早くも誘導員を交わして突っ張る。結局、平原は7番手まで車を下げ、初手の並びのまま赤板を通過する。打鐘手前から平原が再び上昇を開始すると、新田が打鐘から全開でスパート、浮いた平原は中団位置を狙いにいくが、小橋にすくわれてずるずると後退、飯嶋―手島にも切り替えられて最後尾の9番手となる。最終2角の5番手から渡部が捲り上げると、併せて山崎が3角から番手を捲りを打つ。スピードに乗った山崎は後続の猛追を全くよせつけず、2着に1車身の差をつけて圧勝、岡部が2着に流れ込むが、飯嶋と絡んだ成田は伸び切れず、外々を踏まされながらもゴールまで耐え切った渡部が3着に突っ込む。
寛仁親王牌の思い出
寛仁親王牌の思い出
第17回 平成20年7月8日決勝
優勝 山崎芳仁
直線が長く、遅めの捲り追い込みが有効

コース取り次第では最後方からの逆転も可能だ

 弥彦は400バンクの中では一宮、武雄に次いで3番目に直線が長いので、捲りや追い込みが決まりやすく、先行は苦しい。昨年の寛仁親王牌の準決勝3個レースでは、山崎芳仁、武田豊樹、深谷知広の3人が先行したが、3人とも決勝には進めなかった。
 ちなみに昨年の大会の全47レースの決まり手は、1着が逃げが4回、捲りが22回、差しが21回、2着は逃げが5回、捲りが5回、差しが19回、マークが18回で、捲りが圧倒的に有利だった。7、8番手からの捲りもよく決まっていて、先手ラインの選手が1着になったのはわずか13レースだけである。
 ただ、捲りも2角前からの早めの仕掛けは先手ラインに牽制されて不発になりやすく、バック過ぎからの遅めの捲り追い込み有効だ。バック向かい風の日でも3角を過ぎると影響がなくなるので、捲り追い込みに向いている。
 直線では中バンクから少し内寄りのコースがよく伸びる。昨年の大会では、最終バックで7、8番手だった選手が、インコースに切り込んでするすると伸び、直線に入ってからは中バンクのコースに車を持ち出して1着に突き抜けるケースが何度かあった。

昨年の寛仁親王牌決勝ゴール
昨年の寛仁親王牌決勝ゴール。
(4)浅井康太が初タイトルを獲得。
バック向かい風の日が多い

  周長は400m、最大カントは32度24分17秒、見なし直線距離は63.1m。日本で唯一の村営の公営競技場で、1コーナー後方には最近パワースポットとして知名度が上がっている弥彦神社がある。その裏手が弥彦山で、競輪場は四方をうっそうとした森に囲まれており、3コーナーから風が吹き込んでバック向かい風の日が多い。春と秋はバンクが重いが、夏場になると軽くなる。

弥彦バンク
弥彦バンク