村上義弘は3月の日本選手権で念願のダービー王の称号を獲得したが、その後も5月の豊橋記念を優勝、高松宮記念杯は準優勝と安定した成績を維持しており、6月末に結果発表のあった第54回オールスターのファン投票では2年連続の1位に選ばれている。
先の寛仁親王牌は準決勝で敗れたが、初日の日本競輪選手会理事長杯は捲りで弟の博幸とワンツーを決めており、調子に不安はない。弟の博幸も「兄の捲りを初めて差すことができた」とコメントして調子の良さをアピール、市田佳寿浩も初日特選を2着で突破して準決勝まで駒を進めており、近畿のSSトリオは相変わらず元気が良い。
村上義弘のGI 初制覇は02年11月に岸和田で開催された全日本選抜であり、ゲンのいい大会とバンクで今回も弟や市田らとともに地元・近畿勢での上位独占を狙う。
岸和田バンクとの相性の良さなら武田豊樹も負けてはいない。武田の悲願のGI 初制覇も09年に岸和田で開催された日本選手権だった。さらに4月の岸和田記念では今をときめく深谷知広の先行を8番手から豪快に捲り切って優勝と、バンクとの相性は抜群だ。
今年の武田は東王座戦と共同通信社杯春一番を優勝しているが、GI 優勝は09年のオールスター以来遠ざかっており、岸和田バンクでのタイトル奪取に燃えてくるだろう。
平原康多の反撃も侮れない。高松宮記念杯では初日に誘導員早期追い抜きで失格、寛仁親王牌の二次予選Aでは落車のあおりを受けての失速で7着敗退と不完全燃焼が続いているだけに、今度こそはの強い気持ちでファンの信頼を取り戻す走りを見せてくれるはずだ。
高松宮記念杯では96期の深谷知広が史上最速のGI 初制覇を達成、続く寛仁親王牌では90期の浅井康太がGI 初制覇と、中部はいま沸き返っている。今回の全日本選抜のあとには岐阜でのオールスター、松阪での共同通信社杯秋本番と中部地区でのビッグレースが控えており、深谷と浅井の2人を牽引役に中部勢の躍進がますます加速していくだろう。
浅井は昨年は落車が続いて低迷してしまったが、今年は自在戦を封印、実戦では積極的なレースを心がけることで徐々に脚力が戻ってきた。
寛仁親王牌の二次予選Bでは中団で鈴木謙太郎と並走となったが、すかさず引いての捲り返しで圧勝、準決勝も村上義弘と絡んで内に詰まる苦しい展開となったが、あきらめずに前へ前へと踏んでいって2着と、勝ち上がりもほぼ満点に近い走りだった。今回も決して好機を逃さない積極的な走りで勝ち上がっていくだろう。
深谷知広は寛仁親王牌は準決勝で敗れたが、一次予選は打鐘前からの先行で3着、二次予選Bは大西祐ともがき合って主導権を奪い、木暮安由の捲りも凌いでの逃げ切りと圧倒的な先行力を見せつけていた。
寛仁親王牌では深谷の先行に乗って山口幸二と坂上樹大の2人が優出、今回も深谷に引っ張られて中部勢の勝ち上がりが期待できるし、決勝で深谷と浅井の連係が実現すれば、強力なラインとなるだろう。
海老根恵太は梅雨入りとともにやや調子落ちで、6月の函館記念は二次予選敗退で途中欠場、寛仁親王牌は準決勝で4着と敗れている。それでも、最終日の特別優秀では最終4角7番手からの追い込みで2着とさすがのスピードを見せていた。09年の岸和田の日本選手権では決勝3着、今年4月の岸和田記念でも優出とバンク相性も悪くなく、捲り一発は軽視できない。
東日本大震災以後は苦しい戦いが続いていた北日本がようやく勢いを取り戻してきた。
エース格の山崎芳仁は精彩を欠いた状態が続いているが、高松宮記念杯では佐藤友和が切れ味抜群の捲りを連発、伏見俊昭とともに決勝に駒を進め、伏見俊昭が決勝3着で表彰台に上がった。
佐藤友和は続く寛仁親王牌でも準決勝を山崎芳仁の先行に乗って1着で突破、渡邉一成、成田和也とともに決勝進出を決め、改めて北日本の層の厚さを見せつけた。
寛仁親王牌で特に出来の良さが光っていたのが渡邉一成だ。初日特選は主導権を握った永井清史の番手をインからすくって奪い、番手捲りを打って1着、2日目ローズカップは一変しての早駆けで新田祐大の1着に貢献、準決勝は武田豊樹の先行を8番手から捲って成田和也とワンツーを決め、番手から差し切った成田はバンクレコードタイの上がり10秒6を叩きだしている。
決勝は後ろが競り合いで離れてしまい、浅井康太に番手に入られてしまって4着に終わったが、今回も得意のカマシ、捲りで勝ち上がっていくだろう。
新田祐大は日本選手権では特選予選で落車、高松宮記念杯では青龍賞で失格と今年前半の流れが良くなかったが、寛仁親王牌のローズカップで伏見俊昭の猛追を振り切って1着を取っているように調子自体は悪くない。準決勝では深谷知広との主導権争いに敗れ、捲り不発に終わっているだけに、深谷との再戦があれば持ち味の積極性をフルに発揮して打倒・深谷を目指してくるだろう。
もちろん山崎芳仁も必ずや復活してくるはずで、豊富な機動力を擁する北日本勢が司令塔の伏見俊昭を中心に結束して再び競輪界を席巻してくるだろう。
九州勢では大塚健一郎が寛仁親王牌で決勝進出、坂本亮馬が準決勝までの勝ち上がりと復活の走りを見せており、今回もS級S班の2人を中心に躍進が期待できる。
大塚は二次予選Aでは最終バック9番手の絶体絶命の展開となったが、直線外を伸びて3着、準決勝も最終バック7番手となったが、直線ではこれぞ追い込み選手という華麗なテクニックを披露、深谷知広と山口幸二のを中を突いて1着まで突き抜けている。
九州は松岡貴久や坂本亮馬など若手が成長してきてムードは良くなってきているが、機動力の面では北日本や関東と比べればどうしても見劣りする部分があることは否定できない。今回も大塚は苦しい戦いを余儀なくされるシーンがあるだろうが、卓越したテクニックと直線鋭い差し脚で切り抜けてくるだろう。
坂本亮馬は高松宮記念杯の初日白虎賞で落車、寛仁親王牌は長期欠場明けの復帰戦となった。二次予選Bでは7番手からの捲りで山口富生の強力なブロックを受けて失速したが、気力で踏み直してなんとか準決勝へ駒を進めた。準決勝は中団の取り合いで脚を使いすぎて8着に敗れたが、4日目優秀は最終バック8番手の展開から2着と気配は上々だった。
中四国では三宅達也が好調だ。寛仁親王牌では二次予選Aで敗れているが、一次予選は5番手から捲り、番手に切り替えてきた成田和也の猛追を振り切って1着、3日目特選も5番手から永井清史の先行を捲り切り、吉永好宏とワンツーを決めている。今回もライン的には楽な戦いは期待できないが、展開がはまれば捲り一発が侮れない。
豪脚発揮の山崎が直線一気に伸びて3度目のGI 優勝 |
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平原康多―神山雄一郎、新田康仁―渡邉晴智、小嶋敬二―兵藤一也、佐藤友和―山崎芳仁―佐藤慎太郎の並びで周回。 全日本選抜競輪の思い出 第23回決勝(熊本・平成19年12月4日) 優勝 山崎芳仁 |
全日本選抜競輪を占う 400m岸和田バンクの特性を知る |
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海に近く、バック追い風の日が多い 走路自体はクセがなくて走りやすく、直線も比較的長いので戦法的な有利・不利は少ない。 風の強い日はバンクが重くなり、先行は苦しい周長は400m、最大カントは30度56分00秒、見なし直線距離は56.7m。通称は浪切バンク。直線は長いが、先行はバック向かい風にうまく乗っていければ打鐘からの仕掛けでも十分に粘れる。捲りもカントがきついので、2角から仕掛けて3、4角を粘りきれれば直線で一気に抜け出すことができる。岸和田バンク |