ワールドカップ第2戦北京大会レポート
 
配信日:12月12日
 
 
■12月7日(初日) 天候 快晴 気温5℃ 観客700人

 

 ワールドカップ北京大会初日、冷え込みはさらに厳しくなった。
日中の気温は5℃程度まで上がっているが、最低気温は-5℃。
昨日も言及したが、とにかく大会管理が非常に厳しい。
あらゆるところにゲートチェックがあり、何をするにも時間がかかる。
場内を移動するにも何度も“関所”を通らねばならず、非常にストレスが溜まる。
繰り返しになるが、このイベントはすべて、UCIだけでなく、BOCOG(北京オリンピック組織委員会)の管理下に置かれている。
つまり、彼らにとってはこれは、自転車のワールドカップというよりは、オリンピックのリハーサルという意味合いが濃いのだ。
会場のそこここで、上からの命令を遂行しなければならない中国側の担当者と、通常のUCI管理下の大会のようにやりたいジャーナリストたちとがぶつかり、UCIの担当が間に入って調整する姿が見られる。
そのかわりといってはなんだが、プレスエリアの設備や、リザルトのフィード体制などは、どのワールドカップよりもしっかりとしている。
良くも悪くも統制の国、中国のキャラクターが現れているようだ。
今回の参加国だが、シドニー大会同様の多数参加。
男子278名、女子102名で380名。45カ国、29トレードチームで合計74チーム。
オリンピックのポイント積算に加えて、オリンピック前に本番のバンクを走っておきたいという心理によるものだろう。

 大会のプログラムはシドニーと全く同じ。
はじめに出走したのは和田見里美。
個人追い抜き、スクラッチ予選と出走したが、個人追い抜きのタイムはシドニー大会を下回る3′55″.404で30位、スクラッチも何度かのチャンスはあったように思えたが、うまく集団を抜け出すことができず、18位で予選敗退となった。
「いっぱいいっぱいだったか」と聞くと、「そうでもない」と答えるので、やはり、力を出し切れずに終わっているようだ。
本人的にも、それがもどかしいようで、「戻ってからひとりで、じっくり考えます」と、足早に会場を立ち去った。

和田見の力走。一度結果が出れば、一気にブレークスルーすると思われるが・・・
和田見の力走。一度結果が出れば、一気にブレークスルーすると思われるが・・・




 さて、ここでどうしてもポイントが欲しいチームスプリント。前回同様、第1走北津留翼、第2走渡邉一成、第3走永井清史で挑んだ。
27チーム出走、14組のうち6組目の出走が日本。
運営の不慣れさからくるものなのか、選手がまだハンドルに構える前からカウントが始まり バタバタとした発走となる。
タイムは45″295でその時点での一番時計。
1周目北津留18.011、2周目渡邉31.327(ラップタイム13.327)、3周目永井45.295(ラップタイム13.957)という、シドニー大会より各自がタイムを上げた結果だったが、後から走る強豪チームに徐々に抜かれていき、ランキングとしてはシドニーと同じ11位に終わってしまった。
最終ランキング11位の電光掲示板を見た途端、こんな順位にいてはいけないんだとでも言うようにくるりと背を向けるマニエ監督。
競技が終わり、シドニーよりタイムがよかったことで、安心したのか少しだけ表情がゆるんだ3人だったが、最終順位が出た後のマニエ監督の表情を見て、一同言葉数が少なくなる。
ワールドカップで11位に与えられるのは60ポイント。1位に450ポイント、5位であれば240ポイントなど、できれば8位の150ポイントは欲しいところだった。タイムがあがってきているのに順位があがらないというのは、他のチームも足踏みはしていないということにほかならない。
もちろん、トレードチームを使って2チーム出しているイギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアなどの国を除けば、実質7位であったと言えなくもないが、とれたポイントは11位のポイントだったわけで今のところトレードチームの議論は空論に等しい。好材料としては、走るたびによくなってきているということはあるのだが・・・次は45秒を切ることに全力を挙げて欲しい。

北津留のコメント
「自転車をもとのに戻してやっぱりよかったです。18秒0台でしたが、17秒9欲しかったです。
1コーナーからセンターまでが遅いみたい。そこが課題です。筋力を上げてトルクをつけるしかないですよね。
17秒台が出なければ、丸刈りという約束だったので、たぶん断髪式が行われます。あと、ちょっとだったんですけど・・・きっと許してもらえないと思います」
渡邉のコメント
「前回負けたギリシャに勝てたのはよかったです。ギヤをシドニー大会よりあげたかったんですが、監督は“そのままで行け”と。まぁ同じギヤでももっといいタイムを出す選手はいますから、いろいろいえないですけどね。
翼は前半遅いけど、後半はぐっと伸びるんで、まだいけるんじゃないかと思います。
スタートがバタバタしたのにこのタイムなら、まぁまぁかなと自分では思います。
タスマニアでは、ギヤとかちょっと試してみたいです」
永井のコメント
「前より少しはいいですね。自分の調子的にはノドとか痛くって、本調子じゃないんですけど。
自分のラップタイムに関して言えば目標の14秒切りができたので、まぁまぁです。
バンクは、軽くて走りやすいですよ。翼もシドニーより速かったし、まだ行けると思います」


スタートからのコンビネーションは悪くない逆に千切れるぐらいの引張りが必要?
スタートからのコンビネーションは悪くない
逆に千切れるぐらいの引張りが必要?

 


レースを回顧するチームスプリントの3人
レースを回顧するチームスプリントの3人




 

 さて、ポイントレースに出場の飯島誠
予選は、第3スプリントから逃げた集団を少し遅れて懸命に追い、首尾よく連結。そのスプリントで1ポイント、第5スプリント、監督の「マコト!ポイント!」の声にはじかれるように前に出て3ポイント、最終スプリントでも1位入線を決め、3位で予選を通過した。

 シドニーでは10位以内に入れず、悔しがっていた飯島の決勝。
序盤は様子見で集団のなか。RECYCLING.CO.UKチームのクリスニュートンやモスクワチームのイヴァン・コヴァレフあたりがはやばやと飛び出し、ラップを決める。
飯島も第4スプリントあたりから前に出て先頭集団に加わるもポイントがとれず、一度大集団に戻る。
残り71周先頭の集団がぐんぐん大集団を引き離し、ラップを達成。
しかし、飯島はそのときベラルーシのキリエンカとともに大集団を抜け出しており、ラップをまぬがれ、さらにポイントをゲット。そして、キリエンカと2人旅のままラップを達成し、暫定6位に躍り出る。
そのあと、ポイントをなかなか重ねることが出来ず、すこしずつ順位が下がっていく。 残り25周、上位を狙うためにはさらにポイントが欲しい飯島はチームTOSHIBAのキャメロン・メイヤー、ベルギーのイイヨー・ケイッセとともに逃げを試みるが集団がそれを許さず、吸収されてしまう。残り15周、集団が緩んだスキをついて一気に前へ。しかしやはり吸収されてしまう。
やや苦しそうな表情が飯島に浮かぶ。
残り8周、最後の力を振り絞って飯島は逃げ体制に入る。追走はロシアのイグナシェフとチリのアントニオ・アリアガーダ。
残り3周からイグナシェフが2人を丸々3周引っ張って、そのままゴール、飯島は3位通過で2ポイントを上乗せ。
総合9位とシドニーでは果たせなかった10位以内入賞を果たした。
勝ったのは2回のラップを含みポイントも多く重ねた世界チャンピオン、リャネラス。


飯島のコメント
「ラップをしたときに結構脚を使ってしまって・・・展開も読めるし、ここで行けば決まるっていうのも感じるんですけど、うまく脚が動かなくって・・・・
最後は残り2回のスプリントのうち、どっちかは行こうと思っていたので、ポイントがとれてよかったです。
最後の2ポイントで、やっぱり順位もかわりましたからね。この前、休むところでどれだけうまく休むかが課題なんて言いましたけど、なかなか休ませてくれないですね。きついところで、どれだけ踏ん張れるかが、鍵ってことですかね。
リャネラスなんか、予選は流してるじゃないですか。予選をいっぱいいっぱいでクリアしているようじゃダメですよね。
頑張りますよ。心に決めました。絶対、来年8月に僕はここに帰ってきますよ!」

と、とても頼もしいコメント。

行きっぷりのいいところを見せる飯島
行きっぷりのいいところを見せる飯島

 

 

チームのキャプテン役の飯島。監督の信頼も厚い
チームのキャプテン役の飯島。
監督の信頼も厚い





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