ワールドカップ第2戦メルボルン大会 レポート
 
配信日:11月26日
 
 
■11月21日(2日目) 天候 曇り 気温18℃  観客3500人

 本日もまた曇り。これでもう3日も太陽を見ていない。
 昨夜のチームスプリント銀メダルは、チームにとっても取材陣にとっても、力の湧くニュースになった。
一夜明けた今日も日本ピットは笑顔だ。


 今日は、渡邉一成がケイリンに出場。競輪ライダーとしての面目躍如なるか。
 第1ラウンド渡邉はインスタートから号砲と同時に飛び出す。スタートダッシュ力のすごいマレーシアのアジズルハスニ・アワンがすでにペーサーの後ろは確保していたものの、その後ろ2番手を確保。周回はアワン、渡邉、オーストラリアのダニエル・エリス、ニュージーランドのサイモン・ヴァン・ヴェルトーベン、オーストリアのクレメンス・セルツァ、韓国のジュン・ウォン・グ。
 一本棒の展開は残り2周半、一番後ろにいたジュンが車を上げたことから動きはじめる。ジュンは後ろにはセルツァを連れてアワンの隣まで上がってくる。アワンの後ろにいた渡邉は内に詰まるのを避けるため外へ出ようとするが、ヴェルトーベンが隣まで上がってきていたため車を下げ、そこから外へ出て巻き返しを図る。インにアワンとヴェルトーベン、その外にジュン、セルツァ。渡邉はその後ろ。
 残り1周半、渡邉はエリスを連れて一番外を捲くっていき、先頭に立つ。渡邉にうまくつけきれなかったエリスは後退し、そのかわりにアワンが首尾よくマークしている。
 残り1周、渡邉は逃げ切りを狙ってダッシュ。後ろをキープしていたアワンは最終4コーナーで渡邉をかわしにかかり、ほぼ同時にゴール。しかしハンドルを強く投げたアワンの勢いが僅かにまさり1着。渡邉は2着。2着になったもののアワンとともに危なげなく2回戦進出。
距離はポイントレースほどではないにせよ、緩まなければとてもタフなレースになる
距離はポイントレースほどではないにせ
よ、緩まなければとてもタフなレースに
なるガッツファイターだ


ケイリン優勝はポケットロケットがニックネームのアジズ・アワン。小柄ながらガッツファイターだ
ケイリン優勝はポケットロケットがニック
ネームのアジズ・アワン。小柄ながら
ガッツファイターだ

 
 続く2回戦。オーストラリアのシェーン・パーキンス、セルツァ、ドイツのマシアス・ヨーン、渡邉、ジュン、フランス、コフィディスチームのフランソワ・ペルヴィスで周回。
 ペーサー退避後、そのままパーキンスがスパート。その3コーナーから最後尾のペルヴィスがダッシュ。そのダッシュを見て、パーキンスもスピードを上げる。しかし、残り1周半ペルヴィスがパーキンスを捕らえ先頭に。ペルヴィスの後ろにはヨーンと渡邉。ペルヴィスの後ろにパーキンスとヨーンが並走になったのを見て渡邉は首尾よくその後ろに入る。外のヨーンが力尽きて下がっていく。残り半周、変わってパーキンスが再度ペルヴィスに挑む。ペルヴィスとパーキンスが叩き合っているのを、渡邉は冷静に追走している。
 最終ストレート、パーキンスの力が勝り先着、渡邉はゴール直前にペルヴィスをかわし2着で決勝進出を果たした。
 トントン拍子の決勝進出に、「もしや?」と、うれしい期待をしてしまう。

セカンドラウンドの渡邉。最近は道中の位置取りも落ち着いている
セカンドラウンドの渡邉。最近は道中の
位置取りも落ち着いている

 決勝は、渡邉、アワン、ペルヴィス、ギリシャのクリストス・ボリカキス、ウクライナのアンドレイ・ヴィノクロフ、パーキンスの順で周回。
ツワモノとくせものぞろいのメンバーだ。
ペーサー退避から先頭の渡邉が後ろをうかがいながらペース調整。残り2周のホームででペルヴィスが発進。ボリカキスを連れて渡邉を抜こうとする。渡邉はそれに合わせる形でスピードを上げるが、残り1周ホームではペルヴィスが前、そして隣にボリカキス、その外にもパーキンスが上がってきており、やや包まれたような形に。インで粘ろうとする渡邉に1コーナー付近でペルヴィスの後ろをとりたいボリカキスが外入ぎみにカットイン。危険を避けるためバックを踏まされた渡邉はそこで失速。かわって渡邉のうしろにいたアワンが残り半周、ダッシュを活かして一気に上がっていく。お得意のウィリーするハンドル投げで1着。
 渡邉は6着も、最終周回の外入走行によりボリカキスが降着となり、5着となった。
 2着は逃げねばったペルヴィス。
 アワンはワールドカップはじめての金メダル。小柄な体格とその瞬発的な走りで「ポケットロケット」の異名をとるアワン。力をつけてきたアジアのニューロケットに我々も注目せざるを得なくなってきた。
 一方、渡邉の5位はアンラッキーと言わざるを得ない。ボリカキスの走行がなければもっと上の着が獲れたかもしれないと思うと残念だが、これもケイリンと思うしかないだろう。
ボリカキスが進路に進入してきた瞬間。これがなければ・・・
ボリカキスが進路に進入してきた瞬間。
これがなければ・・・

  渡邉のコメント
 「今日は、とりこぼしたくなかったですね。自分で全体をトップスピードに上げさせる力がまだないんで、ああいう競走にならざるを得ないんですよね。もっとパワーをつけていかないと・・・本当は今日は“個人種目でメダルを”と狙ってたんですけど。
同じアジアのアワンにやられたのは悔しいですね」


 一方、新田祐大は1kmタイムトライアルに出場。
14人出走で1′02秒台が2人。その下は03秒台に8人がひしめくなか、新田のタイムは1′03秒972。ギリギリ3秒台に食い込んだ形で10位。しかし、板張りの250であまり経験のないなかでの3秒台達成だけに新田の伸びしろはまだまだありそう。今後が楽しみだ。
ちなみに優勝は1′02秒238のフランス、ミカエル・ダルメイダ。
「世界選までに2秒台を」と語った新田。がんばれ!!
「世界選までに2秒台を」と語った新田。
がんばれ!!

  新田のコメント
 「僕、何番ですか?10番?ハァ・・・マンチェスターで1キロ出てたとして、このタイムだったらどうですか?5番?うわーぁ!(くやしそう)
今回のタイムは自己ベストです。でも、やっぱ3秒でも前半ださないとダメだってことですね。こういう板張りで1kmを走るのはジュニアの世界選以来なので・・・ちょっとフラついちゃいました。速い人は全くブレないですよね。でも、今回ベストが出て、頑張る励みにはなりました。次はペース配分も考えて、練習でもっと力つけて、欲を言えば世界選までに2秒台を出したいです」
自己ベスト更新。さらに上を目指したい
自己ベスト更新。さらに上を目指したい


 かわって今度は盛一大のスクラッチ。
 序盤から、香港のホー・ティン・クォクが積極的に逃げを繰り出すが、先頭はめまぐるしく変わっている。
 残り50周、盛が動いた。スペインのトニ・タウラルルやアルゼンチンのアンゲル・ダリオ・コラなどとともに逃げを開始。3周も逃げたころ、クォクがその逃げを追って集団に連結。6人で先頭後退を繰り返しながら、メイン集団を追いかける。
 残り45周、逃げ集団は差が縮まらないように見えたメイン集団をじりじりと追い詰め始める。
 残り42周でついにラップ達成。さらにロシアのアレクセイ・マルコフや韓国のスン・ジャエ・ジャンのふたりがメイン集団を抜け出し、盛のいる先頭集団を追っていたがこちらもほどなくラップ。昨日「残り10周で後ろにいたら、今日の盛はダメだと思ってください」と言っていた盛は早い段階でアドバンテージを奪い、ダメではないことを示した。
 残り34周、前方を見ると、先ほどラップを達成したクォクがさらなるラップを狙ってオーストラリアのクリストファー・サットン、ウクライナのセルゲイ・ラグティなどとともに逃げ体制。
 残り32周、一緒に逃げそうなライダーを探して、モーションをかける盛。しかしあまりよいライダーがついて来ず、集団に戻る。
 残り29周、逃げ集団がラップ。クォクはここで2ラップとなり単独トップとなっている。
 残り25周では展開は一本棒。盛はやや後方に陣取っている。多くのライダーが横にらみで単調な展開がつづいていた残り13周、業を煮やしたように盛が一本棒の外をじりじり上がっていく。残り7周には先頭に立つもずっと前にはいられず徐々に後退。
 残り2周ごろから、このときを待っていたとばかりにライダーたちが動きはじめ残り1周ではものすごいスプリントとなる。盛もこれに加わるが、先ほどの逃げ誘発アクションでかなり脚をつかっており、上位には絡めずに、ダンゴ状態のなかをゴール通過。8位となった。優勝は2ラップしていた香港のクォク。
スクラッチは、道中の駆け引きもかなり大きな要素
スクラッチは、道中の駆け引きも
かなり大きな要素

 盛のコメント
 「香港にやられちゃいましたね。終盤は香港が2ラップしているんで、皆スプリントに備えてた感じですね。でも、なんとか動かさないといけないと思ってやってみたんですけど、誰も来ませんでした。誰か行かないと・・・と思って自分で行ったんですが、監督には“なんで待たないんだ”と言われちゃうんだろうなぁ」確かに、スプリントに備えて脚をためていれば、もう少し上の着になった可能性はある。
 しかし、常に自分でレースをつくろうとする盛の積極性は、素晴らしく、過去この積極性がプラスに働いたことも多い。
 「ひとつふたつ上の着をとりに行くより、自分で何かを起こしたい」と言いたげな盛の走りに、走りのエンターティナーとしてのプライドを感じるのは私だけだろうか。




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