09-10ワールド・カップ第3戦 カリ大会
 
配信日:12月15日
 
 
■12月10日(木)開催初日 天候:曇りのち晴れ 気温30度

 いよいよワールド・カップ第3戦がコロンビア・カリで開幕する。標高1,000mほどに位置するカリの人々がわらわらと集まる中心地から車で15分程度の場所にスポーツ・コンプレックスがあり、自転車競技場もその一角をなしている。とはいえ、街中には車が多く、道路も渋滞することから、15分で、というわけにはなかなかいかない。
 初日の今日は女子スプリントの予選の後、男子ケイリンがおこなわれる。日本からは脇本雄太が出場。7名×3ヒート、合計21選手で争われ、上位2名が2回戦に進出することとなる。
   
   
 第1ヒートはスタート後、ポーランドのテクリンスキー、マレーシアのモハマド、コロンビアのナルバエス、メキシコのコントレラス、カナダのスミス、ギリシャのザフェイリオス・ヴォリカキス、スペインのマスキアランでの周回。ペーサーの退避に合わせ後方3番手からカナダのスミスが上昇し、先行。後方のライダーの出方を窺う。残り2周ホームからマスキアランが並びかけてくるがスミスも突っ張り先頭をゆずらない。併走状態が続くが残り1周前の3コーナーでマスキアランが後退し、スミスがスパート。その後ろにナルバエスがはまり、更にヴォリカキスが続く。最終バック・ストレッチから外に出してヴォリカキスがまくるかという場面も不発。粘るスミスをゴール前ナルバエスが捕えて1着。スミスが2着でこの2人が2回戦へ。
ドームではなく風が吹き抜ける競技場。これはこれで悪くない。
ドームではなく風が吹き抜ける競技場。
これはこれで悪くない。
   
   

 第2ヒート、号砲後は大外から飛び出したイタリアのルカ・チェーチ、ロシアのサヴィトスキー、ドイツのレフィ、オランダのファン・デン・ベルグ、ドミニカのヴィダル、トラック・チーム、カラピー・レイノ・デ・ナヴァーラのペラルタ(スペイン)、南アフリカのトムソンという順の並びとなる。ペーサーが退避しても並びは変わらず、2番手のサヴィトスキーが後方をけん制しチェーチとの差が開く。残り2周のホームを迎えようというところで最後方のトムソンが先頭を狙い位置を上げる。徐々にスピードを上げ2コーナーで先頭に立ち更にスピードを上げる。後位にはレフィがつき、3番手にはチェーチが粘る。最終1コーナーから2番手にいたレフィがまくりを打ってバック・ストレッチで先頭。トムソンは飲み込まれ、レフィにチェーチが続く。結局そのままレフィが押し切り1着。2着はチェーチ。

   
   
 3ヒート目には日本の脇本が登場。スタート位置は内からミカエル・ダルメイダ(フランス)、クリストファー・マンシージャ(チリ)、コフィディスのテーン・ムルダー(オランダ)、アレハンドロ・マイナート(キューバ)、脇本、アンドレイ・ヴィノクロフ(ウクライナ)、カタルーニャのへライツ・イトマー・エステバン(スペイン)の順。号砲後脇本は前を狙うが良い位置はとれず、結果最後方まで位置を下げて周回することに。道中の並びはペーサーの後位にダルメイダ、その後にマンシージャ、ムルダー、マイナート、エステバン、ヴィノクロフ、脇本となる。5周目に2番手で周回していたマンシージャが隊列から離れ最後方へと下がり脇本は6番手からのレース。残り2周半、ペーサーの退避に合わせて最後方に下がったマンシージャが一気に先頭へ。脇本もそれを追う。残り2周のホームで脇本がマンシージャを交わして先頭となり先行する展開。マンシージャを交わしてダルメイダ、ムルダーが脇本を追う。残り1周となったホーム、脇本の後位からダルメイダが発進して先行。ムルダーも脇本を交わしてこれを追い、マイナートもこれに続き脇本は4番手で直線へ。ゴール前でかわしたムルダーが1着、差されたダルメイダが2着でこの2人が2回戦へ。3着キューバ、脇本はこれに続く4着で敗者復活戦へ回ることとなった。
アップする脇本
アップする脇本
脇本は終始積極的な走りを見せて他国にも印象付けていた。
脇本は終始積極的な走りを見せて
他国にも印象付けていた。
             
   
   
 敗者復活戦は各ヒート5人で3ヒート。5人中上位2人が2回戦進出となる今回。チャンスは十分あるのでなんとかしたいところ。
第1ヒート、レースは最終周回2コーナーでテクリンスキーとエステバンが接触し落車。これにヴォリカキス、ペラルタが乗り上げ、最後方にいたトムソンを除いた4人が落車してしまい、一人無傷のトムソンが1着。落車後自転車を携えて走ってゴールしたペラルタが2着。
   
   
 第2ヒートに日本の脇本が登場。なんとここで脇本、落車事故後のトラックの整備で発走を待たされているところで鼻血が出るというアクシデント。このアクシデントを乗り越えられるかどうか。スタート位置は内からファン・デン・ベルグ、脇本、ヴィダル、モハマド、マンシージャの順。まずまずのスタートを切った脇本。スタート位置を生かし、最内のファン・デン・ベルグに次いで2番手の位置を取る。3番手にヴィダル、その後にモハマド、マンシージャと続く。ペーサーが退避するもそれぞれの位置取りは変わらない。誰が動くのかと思っていると、残り2周を迎えるホーム・ストレッチで脇本が上昇。後ろを気にしながら段々とスピードを上げる。後ろはファン・デン・ベルグ、ヴィダル、モハマド。マンシージャ。最終周回前回の3コーナーで発進し、もがく脇本。後続もなかなか仕掛けられず、脇本に迫るものはない。結局積極策が功を奏し、脇本が押し切って1着で敗者復活戦を制し2回戦進出が決定。2着は流れ込んだファン・デン・ベルグ。これでメルボルンに続き日本選手の走りを4回見られることとなった。

落車のアクシデント後のトラックの応急処置
落車のアクシデント後のトラックの応急処置
   
   
 第3ヒートは残り1周半の時点で2番手のヴィノクロフが先手を取り、結局スパートをかけたのが最終1コーナーから。これではさすがに力上位のヴィノクロフで決まり。2着に流れ込んだサヴィトスキー。これで2回戦進出の12名が出揃った。

コメント(脇本):「1回戦は初めから先行する気で臨みました。後ろから行ってそこから一気に先行するつもりだったんですが、チリの選手が道中下がってきて後ろから2番手になったんですが、その仕掛けに上手く乗って先行できました。結果的に仕掛けが早くなったのもありますが、足が回らない感じでした。(敗者復活戦はもう少し番手で様子を見るのかと思ったとの質問に)前も緩んでいたので思い切って前に出ました。マークして勝てるとも思ってなかったんで・・・足をためて先行することが出来ましたし足の感じも一回走って良い感じでした。2回戦は胸を借りるつもりで頑張ります。」
   
   

  そして2回戦。脇本は第1ヒートに登場。出場選手はトムソン、脇本、サヴィトスキー、チェーチ、ナルバエス、ダルメイダでスタートは内からこの順となった。好スタートを決めたダルメイダがペーサーの後位を外から奪い、これにチェーチ、脇本、サヴィトスキー、ナルバエス、トムソンと続く。後続をけん制するダルメイダがペーサーとの車間を空けはじめたところでペーサーが退避。少し間をおいてナルバエスが果敢に前へ出る。これにサヴィトスキーが続きダルメイダ、チェーチ、トムソンとなり、やや脇本は立ち遅れる形。しかし2コーナーから脇本も踏み始め、大外をスピードに乗って捲りきって先行体制に入るかと思われた最終周回前回の4コーナーでアクシデント発生。前を行くナルバエスが単独でスリップし落車。これに脇本、サヴィトスキー、ダルメイダ、チェーチと後続が次々と落車。場所は4コーナー。なんとチェーチは外に流されて手すりを超えて場外へ投げ出されてしまう。唯一、間一髪でこの事故をすり抜けたトムソンが残り1周を走り切り1着でゴール。落車後痛々しさを感じさせながらも再乗してゴールしたダルメイダ、脇本が2、3着で決勝へ進出。残る3人は棄権となった。良い展開を作っていた脇本だっただけに、気持ちよく決勝へ進出するところを見たかったところだが、アクシデントがありながらも決勝進出を決めた脇本。最後も積極的なところを見せて欲しい。
   
   
もうひとつの第2ヒート。前からレフィ、ムルダーと行くところ、残り2周半で最後方にいたスミスがすーっと先頭に上がり、レフィはこれを迎え入れる。残り1周半で5番手のペラルタが先頭を窺いこれにヴィノクロフが付き更に先頭を狙う勢い。残り1周のホームはスミスを含め3者併走で先手争いとなる。スミス、ペラルタが脱落した最終周回バック・ストレッチで、今度はファン・デン・ベルグが発進し、ヴィノクロフをかわそうとするところ大外をムルダーが懸命に踏む。最後の直線でムルダーがファン・デン・ベルグを差して1着。2着ファン・デン・ベルグ、3着ヴィノクロフでの入線だったが、最後の3コーナーで内側に急激に斜行し、ヴィノクロフ、レフィの走行妨害をしたとして降着処分。4位入線のレフィが代わって決勝進出となった。

   
   
 そして迎えた決勝戦。スタートは内から南アフリカのトムソン、コフィディスのムルダー、脇本、フランスのダルメイダ、ドイツのレフィ、ウクライナのヴィノクロフとなる。スタートを上手く決めたムルダーがペーサーの後位を取り、外から来たヴィノクロフ、トムソン、脇本、ダルメイダ、レフィでの周回となる。ペーサー退避となる残り2周半となるバック・ストレッチで4番手から脇本が上がる。4コーナーで先頭に立ちレースを引っ張る形となり、ムルダー、ヴィノクロフ、トムソン、ダルメイダ、レフィと続く。スピードを上げた脇本、早めのスパートを見せ、最終周回前回の2コーナーで一時はムルダーを4車身離す。後続もやや立ち遅れ気味で全体に縦長の展開で最終周回へ。必死にもがくムルダーが3コーナーで脇本をとらえて先頭。4コーナーではあわやとも思えたが、後続も一気に詰め寄り直線勝負。内から粘る脇本、ムルダー、ヴィノクロフ、ダルメイダ、レフィとなるが、後続の勢いが上、ダルメイダがなんとか差し切って優勝。わずかに粘れずムルダーが2着。ヴィノクロフ、レフィと続き、脇本は5着、トムソンは見せ場なく6着だった。ワールド・カップの舞台で初のケイリン参戦となった脇本だったが終始積極的なレース運びを見せ、やや小粒な参加メンバーだったことは否めないが、見ていて気持ちのよいレース、そして久しぶりに決勝戦での日本人選手の走りを見せてくれた。
ケイリンの優勝はわずかに差し切ったダルメイダ
ケイリンの優勝はわずかに差し切ったダルメイダ

コメント(脇本):「2回戦は自分が捲りにいったところ4コーナーで先行している選手が一人で落車してそれに巻き込まれてしまいました。アクシデントになりましたが、走っている時も、これはいける、という感じだったので自信はありました。決勝はこういうレースがしたかったので悔いはないです。落車の影響も左足にあったので気にしながら走る格好になりました。緊張でつぶれるかと思いましたが振り返ってみると緊張しすぎず対応できたかな、と思います。自分の中では良い経験を積めたと思っているのでこれをまた今後に繋げていきたいと思います。」
   
   
 ケイリンの1回戦の後に行われたのが個人追抜き。ワールド・カップ初参加となる佐々木龍がこの種目に登場となる。自己ベストの4分46秒の更新、そして目標の30秒台での走りとなるかどうか。この種目には14人がエントリー。佐々木は7組中6組目での出走で対戦相手はロコモーティヴのカイコフ(ロシア)。スタート後の佐々木、淡々と周回を重ねるがカイコフとの差がどんどんと縮んでしまう。最初の1,000mは佐々木1分13秒181に対し、カイコフは1分9秒764。そして中盤早々には早くもカイコフに追い抜かれてしまう苦しい展開。その後も再度差を詰められる展開となり、カイコフがゴールした4分27秒103に大きく遅れての4分52秒681でゴール。残念ながら目標の30秒台はおろか、自己ベストにも大きく遅れる成績で厳しいワールド・カップデビューとなった。優勝はウクライナのポプコフでタイムは4分23秒182。

コメント(佐々木):「全然ダメでした・・・実力がそのまま出てしまったということだと思います。前半の1kmは理想のラップを踏めたんですが後半はいっぱいになってしまいました。コンディションは良かったんですが・・・良い経験は積めたと思うので、今後に生かしたいと思いますが、呼んでもらえなくなってしまうので、一生懸命練習してまたこういった舞台に立ちたいと思います。」

出走前の佐々木
出走前の佐々木
まだまだ力不足は否めない佐々木だったがまだまだこれからだ。
まだまだ力不足は否めない佐々木だったが
まだまだこれからだ。
   
   
 夜のセッション、最初の種目は新田が出場する1kmタイム・トライアル。20名のエントリーに1名出走せず、19名での争い。メンバーを見渡しても目標の2秒台が出ればメダルも夢ではないという状況。どのような走りを見せてくれるのか。新田は10組中9組目での登場でバック・ストレッチ側からのスタート。この時点で3位のアロンソのタイムが1分3秒220。スタート後最初の1周250mの入りは19秒033で全体の7位。その後1周毎のスプリット・タイムは33秒460の9位(ラップ・タイム14秒427・13位)、48秒200・10位(14秒740・8位)でゴールのタイムは1分3秒529(15秒329)。今年3月のポーランドでの世界選手権で出した1分3秒655の自己ベスト更新となった。同組だったボリブルクが1分2秒665、最終組のバべク(チェコ)が1分2秒978で新田は6位となった。

コメント(新田):「自己ベストではあるんですが、目標だった2秒台が出せませんでしたし、特に最初の入りがいつもより全然遅かったのでその辺りは不満が残ります。今までとはギアを変えて臨んだんですがもっとそのギアで踏めるようになるよう練習しないとダメですね。踏めるようになってトップ・スピードに乗るまでの時間を早めないといけないですね。今年のワールド・カップは3秒台でこれてはいるのでやはり早く2秒台を出せるように頑張りたいと思います。」

明日2日目は男子スプリント。新田、脇本が出場の予定。
      
   
   


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