レース展望

 東日本大震災被災地支援・第54回オールスター競輪が岐阜競輪場で開催される。魂の走りで2年連続2回目のファン投票第1位に選出された村上義弘と、地元地区での開催に意気上がる深谷知広の新旧先行型の激突が一番の見所になりそうだが、選手層の厚い関東勢や北日本勢の猛攻からも目が離せない。

村上義弘がファンの熱き思いに応える!
ヤングパワーの大躍進で中部王国が復活

ファン投票連続1位!
村上義弘(京都・73期)  今年は3月に念願のダービー王の称号を獲得した村上義弘。その後も5月の豊橋記念では深谷知広を捲り切って優勝、高松宮記念杯では準優勝と安定した強さで競輪界をリードし続けており、2年連続2回目のファン投票第1位は納得の結果といえる。
  昨年のオールスターでは2着権利の準決勝で3着となり優出を逃しているだけに、今年こそはの意気込みでファンの熱い支持に応える走りを見せてくれるだろう。
 村上博幸はこのところ目立った活躍は見られず、寛仁親王牌やサマーナイトフェスティバルでも決勝進出を逃している。しかし、寛仁親王牌の準決勝では最終バック8番手、サマーナイトの初日予選では最終バック9番手と不運な展開に泣かされているのが一番の原因であり、調子自体は決して悪くない。寛仁親王牌の初日・日本競輪選手会理事長杯では兄・義弘の2角捲りを上がり11秒1で鋭く差し切っており、今回も兄弟連係があればGP覇者の底力を見せつけてくれるはずだ。

新星の快進撃は続く
深谷知広(愛知・96期)  高松宮記念杯ではデビューから684日目となる史上最速のGⅠ初制覇を達成した深谷知広は、ファン投票でも第9位でベストナインに選出され、名実ともに超一流の仲間入りを果たした。
 寛仁親王牌では調整不足のせいもあってか準決勝4着と敗れたが、続くサマーナイトの初日予選では加倉正義に2度、3度と張られながらも豪快に捲り切った。決勝では長塚智広―神山雄一郎の関東コンビに番手に入られながらも2着に粘り込んでおり、今回も比類なき先行パワーで地元・中部勢をぐいぐい引っ張っていく。
 深谷に続いて浅井康太が寛仁親王牌でGⅠ初優勝を達成、渡邉一成の番手を神山雄一郎から奪っての直線一気で、2着の山口幸二、3着の坂上樹大も連れ込んで表彰台を中部勢で独占してみせた。
  そして今回は岐阜競輪場でのGⅠ開催となれば、中部勢躍進を止めることは難しいだろう。深谷や浅井のヤングパワーはもちろん、中部王国を支えてきた山田裕仁、濱口高彰、山口幸二らのベテラン勢にも復活優勝のチャンスが広がるだろう。

安定感抜群の武田豊樹が優勝を狙う!
渡邉一成と新田祐大が北日本勢を引っ張る

 選手層の厚さで他地区を一歩リードしているのが関東勢だ。エース格の武田豊樹は今年はまだGⅠの優勝こそないが、GⅡの東王座戦をはじめとして優勝が4回を数えており、相変わらずの高い安定感をキープしている。
  一昨年の松山のオールスターでは平原康多の先行に乗って優勝しており、今回も平原との好連係を決めてくるだろうし、もちろん自力勝負でも平原に負けない積極的な仕掛けで順調に勝ち上がっていく。

GⅠ初優勝なるか?
長塚智広(茨城・81期)  長塚智広が復調してきた。3連勝で優出した日本選手権のあとは徐々に下降線をたどっていったが、寛仁親王牌では二次予選Aで敗れたもののシリーズ3勝を挙げ、復活の手応えをつかんだ。
  次場所のサマーナイトフェスティバルの初日予選では松坂洋平の先行を目標に村上義弘の捲りをきっちり止める捌きを見せ、決勝では自身は3着に終わったが、神山雄一郎の優勝に貢献しており、今回も展開に応じた巧みな組み立てでチャンスをつかみ取っていくだろう。

復調具合が鍵を握る
渡邉一成(福島・88期)  北日本は昨年のオールスター覇者である山崎芳仁が低空飛行を続けていたが、渡邉一成や新田祐大の急成長を遂げて地区的な勢いを取り戻してきている。
 特に渡邉一成のスピードが素晴らしく、寛仁親王牌の準決勝では武田豊樹の先行を8番手から捲り切って後続をぶっちぎり上がりタイムが10秒7、渡邉をゴール前で差し切った成田和也の上がりタイムが10秒6と完勝している。
 2日目ローズカップでは渡邉が主導権を握り、最終バックから新田祐大が番手捲りを打つとともに伏見俊昭が捲り上げてきた村上義弘を止める完璧な連係プレイで、1着新田、2着伏見の福島ワンツーを決めている。負傷具合は気になるところだが、復調なれば今回も新田とともに先頭で連係を決めて福島勢での上位独占を狙う。

2年連続のドリーム戦!
坂本亮馬(福岡・90期) 九州では坂本亮馬が復調してきた。坂本は高松宮記念杯の初日に落車して1カ月の欠場を余儀なくされ、復帰戦となった寛仁親王牌は準決勝で敗れている。しかし、二次予選Bでは7番手からの捲りで2着、4日目優秀では8番手の展開から小嶋敬二の捲りに乗って2着と意地を見せた。
 そしてサマーナイトでは決勝で8着と敗れたが、初日予選は新田祐大の先行を4番手から捲って後続を突き放し、上がりタイムは10秒9をマークと本来のスピードが戻ってきていた。現時点はまだ本調子ではないために位置取りにやや難があるが、今回までには必ずや完全復活を果たしているだろう。

ド先行でブレイク中
松坂洋平(神奈川・89期)  南関東の注目選手は松坂洋平だ。GⅠ初出場だった日本選手権で2連勝で準決勝まで駒を進めた松坂は、5月に記念を連覇してその名を全国に轟かせた。サマーナイトの初日予選では村上義弘を相手に先行して2着に粘り込んでおり、今回もトップクラスの選手を相手に得意のカマシ先行での勝ち上がりが期待できる。

推薦枠で出場する10名に注目!
地元期待の松岡篤哉が大逃走を見せる

新鋭が地元で魅せるか!?
松岡篤哉(岐阜・97期) オールスターはファン投票により出場選手が選抜されるが、09年からは選手選考委員が推薦した10名が特別枠で出場できるようになった。
  09年の松山大会では推薦枠で出場の千葉・87期の山賀雅仁が2回目のGⅠ出走で準決勝Aまで勝ち上がる活躍を見せ、昨年のいわき平大会では福島・83期の佐々木雄一が準決勝を1着で突破して決勝進出を果たしている。今年も推薦枠の10名の中から大金星を挙げる選手が出てくるだろう。
  松岡篤哉は地元期待の若手選手でオールスターがGⅠ初出場となる。松岡は昨年9月に岐阜で実施されたルーキーチャンピオンレースでは8番手からの捲り追い込みで優勝、脚質的には捲りを得意にしているが、今年1月にS級に昇進してからは徹底先行で奮闘している。
  4月の別府記念の二次予選では萩原操を連れて逃げて萩原1着、松岡2着のワンツーを決め、木暮安由の捲りをよせつけなかった。7月の岐阜FⅠの準決勝では松岡が逃げ切り、朝日勇が2着のワンツーで岐阜バンクとの相性も良く、今回も地元勢を連れて逃げまくってくれるだろう。
  松川高大は4月の別府FⅠで完全優勝でS級初優勝を達成してから上昇気流に乗っている。6月の高知記念では準決勝を捲りの1着で突破して優出、7月の松戸記念では準決勝で敗れたが、初日特選と4日目特別優秀で2勝している。ビッグ初出場のサマーナイトフェスティバルでは力を出し切れなかったが、その反省も含めて今回は連日の積極的な仕掛けが期待できる。

オールスター名勝負
神山雄一郎が4度目のオールスターVを達成
 神山雄一郎がスタートを取り、後閑信一が続いての関東2車が前受け、伏見俊昭―佐藤慎太郎―齋藤登志信―榊枝輝文の北日本4車が中団、稲垣裕之―市田佳寿浩―横田努が後攻めで周回を重ねる。赤板前から稲垣がゆっくり上昇して先頭に立つと、続いて榊枝が上昇してきてイン切りに出るが、伏見は稲垣にうまく牽制されて主導権を奪えず、後退する。打鐘3角過ぎから稲垣が榊枝を交わして先行態勢に入ると、神山はインに切り込んで横田をどかして3番手を奪取、伏見が6番手の並びで最終ホームを通過する。最終バックから伏見が捲っていくが、合わせて市田が2センターから番手捲りを打ち、伏見の捲りは4角手前で不発に終わる。市田―神山―後閑の並びで4角を通過するが、直線鋭く伸びた神山が4度目のオールスター制覇を達成、2着には後閑が入り、市田が3着となった。
第47回大会
04年9月23日決勝・西武園
優勝 神山雄一郎
第47回大会
04年9月23日決勝・西武園
優勝 神山雄一郎
カントがきつめで捲り追い込みが有効

直線が長く、先行も捲りも差し込まれやすい

 これといったクセのない走りやすいバンクで、どの脚質でも存分に力を発揮できる。しかし、400バンクにしては直線がやや長く、カントもきついほうなので先行選手は苦しい。
  06年10月に開催された共同通信社杯の決まり手を見てみると、全47レースのうち1着は逃げが3回、捲りが16回、差しが28回、2着は逃げが8回、捲りが12回。差しが16回、マークが11回となっている。
  逃げ切りはわずかに3回だけで、差しが圧倒的に有利となっている。ちなみに逃げ切りの3回は、一次予選の吉田敏洋、二次予選Aの平原康多、準決勝の山崎芳仁の3人で、ビッグレースともなると、トップクラスの先行力を持っていないとやはり逃げ切りは難しい。先手ラインの選手が1着を取ったのも47レースのうち16回だけで、先手ラインの苦戦は明らかだった。
  捲りは早めに仕掛けていって3角までに捲り切ってしまうのがベストだが、先行のペースが緩んだところから捲り追い込みの感じで仕掛けていってもよく伸びる。
  直線では中バンクから少し外側のコースがよく伸びるので、捲りに乗っていった選手も2、3番手でじっと我慢していてコーナーをきれいに回れると、直線に入ってからの追い込みが決まりやすい。
  そのため早めに捲り切ってしまった選手が後ろからズブリと差されることも多く、差し―捲りの決まり手の出現率が高くなっている。06年の共同通信社杯の決勝でも、岡部芳幸の捲りをゴール前で差し切った合志正臣がビッグ初優勝を飾っている。
  ただ、追い込みが断然有利のバンクであるが、ライン違いの選手同士での決着はそれほど多くはない。逃げた選手、捲った選手もまずまず粘り込めているので別線の選手同士で決着したのは47レースのうち15回だけだった。


 周長は400m、最大カントは32度15分07秒、見なし直線距離は59.3m。年間を通してバック追い風、ホーム向かい風の日が多い。先行選手はホームから思いきりよくカマして向かい風を乗り切っていけば、バックで追い風を味方にできるのでスピードに乗っていける。ただホーム側にスタンドがあるため、1日のうちでも風向きが複雑に変わることもある。走路自体は走りやすいが、走路の内側に大きな池があり、その影響でバンクを重く感じる選手もいる。最高上がりタイムは04年8月に伊勢崎彰大がマークした10秒7。

岐阜バンク
岐阜バンク

ファン投票(1位~18位)

          ★ドリームレース★                 ★オリオン賞レース★
1位
村上 義弘(京都・73期)
10位
神山雄一郎(栃木・61期)
2位
武田 豊樹(茨城・88期)
11位
新田 祐大(福島・90期)
3位
海老根恵太(千葉・86期)
12位
山口 幸二(岐阜・62期)
4位
平原 康多(埼玉・87期)
13位
市田佳寿浩(福井・76期)
5位
坂本 亮馬(福岡・90期)
14位
大塚健一郎(大分・82期)
6位
伏見 俊昭(福島・75期)
15位
長塚 智広(茨城・81期)
7位
村上 博幸(京都・86期)
16位
佐藤 友和(岩手・88期)
8位
山崎 芳仁(福島・88期)
17位
成田 和也(福島・88期)
9位
深谷 知広(愛知・96期)
18位
加藤 慎平(岐阜・81期)
【推薦選手一覧】
萩原  操(三重・51期) 山口 泰生 (岐阜・89期)
高谷 雅彦(青森・67期) 谷田 泰平 (岐阜・93期)
佐野 梅一 (京都・78期) 松川 高大 (熊本・94期)
松岡 健介 (兵庫・87期) 上原  龍 (長野・95期)
石橋慎太郎 (静岡・88期) 松岡 篤哉 (岐阜・97期)
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