地元中部の軸となるのはもちろん若きエース・深谷知広だ。3月の日本選手権では初出走となった熊本バンクに苦しんでいた印象があり、勝ち星は特選予選の1勝のみだったが、しっかりと決勝へ駒を進めており調子に不安はない。ゴールデンレーサー賞では敗れたものの、平原康多が先導役の関東ラインを豪快に捲り切って、圧倒的なスピードを見せつけていた。
ただ、決勝は後方のまま見せ場をつくれずに5着に終わっており、今後に課題を残す結果になってしまった。昨年10月の共同通信社杯秋本番の決勝も武田豊樹に突っ張られて不発に終わっているだけに、今度こそは地元ファンの前で汚名返上の積極的な攻めを見せてくれるだろう。
42歳のベテラン・小嶋敬二が元気一杯だ。昨年12月の広島記念から6場所連続優勝を達成、日本選手権でも全盛期を彷彿とさせる先行・捲りで決勝進出を果たした。
深谷知広とは別線の単騎戦を選択した決勝は不発で7着に終わってしまったが、今回も太腿74センチの怪力パワーを存分に発揮して勝ち上がっていくだろう。
浅井康太は日本選手権ではまさかの二次予選敗退だったが、5日目特選は捲って1着、6日目優秀も捲って山口幸二とワンツーを決めており、調子自体は悪くない。地元戦だった共同通信社杯秋本番は準優勝に終わっているだけに、今回は得意の自在戦法を駆使して優勝の2文字を狙ってくるだろう。
3月の日本選手権は九州地区での初めての開催だったが、九州からの決勝進出は園田匠ひとりだった。活躍が期待された熊本の松川高大と松岡貴久は地元開催のプレッシャーに押しつぶされたか、ともに二次予選敗退となっている。 しかし、2人とも近況の成績は抜群に良く、日本選手権に向けて練習を積み重ねてきた成果を発揮できずに不完全燃焼で終わってしまった無念さは想像以上に大きかったはずだ。
その無念さを今開催にぶつけ、持てる力を存分に発揮しての九州勢の活躍が大いに期待できるだろう。
武田豊樹は日本選手権では準決敗退となってしまった。準決勝はいつも通りの巧みな捌きで中団を確保しながら、後方の小嶋敬二を意識しすぎて仕掛け遅れたこともあり敗退。だが、もちろん体調面での不安は一切ない。
特選予選では恐ろしく直線の長い熊本バンクをモノともせずに先行して3着に粘り込みラインで上位を独占しており、相変わらず積極性も高い。昨年の共同通信社杯秋本番の決勝では深谷知広相手に突っ張り先行を敢行しており、打倒・深谷の1番手はやはりこの男だ。
4日目のゴールデンレーサー賞では久しぶりの平原康多との連係から1着をもぎとっている。
関東では岡田征陽が絶好調だ。昨年の共同通信社杯秋本番でビッグ初優出を達成した岡田は、今年2月の東王座戦では準優勝と大活躍、日本選手権ではGⅠ初優出を決めた。
一次予選は堂々の逃げ切り、二次予選は4番手からの中割り強襲で2着、準決勝は深谷知広と海老根恵太の争いを尻目に直線外を伸びて1着と文句なしの勝ち上がり。
決勝は番手絶好の展開になりながら、村上義弘の捲りを止めるのに脚を使って直線伸び切れずに4着に終わったが、今回はビッグ初制覇に大きな期待がかかる。
山崎芳仁がようやく復調してきた。昨年の東日本大震災以降、練習環境の激変によって精彩を欠いた走りが続いてしまっていたが、準決勝では8番手からの大捲りを決めて決勝進出を果たした。上がりも13秒7の好タイムで大会の1番時計をマークしており、元祖・大ギアパワーの破壊力を改めて見せつけている。
グランドスラムの懸かっていた決勝は、中団から捲っていったときに長塚智広の後輪と接触して伸びを欠いてしまったが、結果的には内を突いて優勝した成田和也と福島ワンツーが決まっている。
かつてはビッグタイトルを総なめにしていた福島王国も、この1年ばかりは中部や関東に押され気味だったが、山崎の復活やダービー王の誕生によって王国再建が急ピッチで進んでいくだろう。
山崎と同期、同県の成田和也は先行型から追い込み型へとチェンジして、ようやく大輪の花を咲かせることできた。
二次予選では4番手からの中割り強襲で圧勝と差し脚も鋭さを増してきており、今後もダービー王の名に恥じない活躍を見せてくれるだろう。
村上義弘は日本選手権の直前に体調を崩して体重が6キロも減ってしまい、連覇の懸かっていた大会を本調子で臨むことはできなかった。
それでも特選予選は8番手からの大捲りを決めて圧勝、準決勝は脇本雄太の先行を目標に3着で決勝進出を果たしている。
決勝は単騎戦となり、結果は9着に敗れているが、最終バックから捲りを仕掛けて見せ場をつくっている。今回もファンの期待を決して裏切らない魂の走りを披露して、大会を大いに盛り上げてくれるだろう。
脇本雄太が絶好調だ。2月の西王座戦は初日予選で敗退したが、2日目、3日目は捲りと逃げ切りで2連勝している。次場所の大垣FⅠを捲りで優勝を果たし、日本選手権では一次予選と二次予選を逃げ切りの2連勝で準決勝まで勝ち上がった。
準決勝は北津留翼との主導権争いとなって惜しくも4着に沈んだが、村上義弘の優出に貢献して見事に大役を果たした。近況は勢いを失って村上義弘だけが踏ん張っている状態の近畿だが、今回も脇本が近畿勢をぐいぐい引っ張って盛り上げていくだろう。
脇本同様に日本選手権で大活躍だったのが千葉の鈴木裕だ。一次予選は捲りの1着、二次予選は追い込みの2着で勝ち上がった鈴木は、武田豊樹、小嶋敬二を相手の準決勝でも度胸たっぷりのマイペース先行に持ち込んで2着に粘りGⅠ初優出を決めた。
初めて経験した大舞台の決勝でも、8着に敗れはしたが落ち着いた走りでしっかりと主導権を握っており、今回もトップレーサーたちを相手に大金星を挙げてくれそうだ。
共同通信社杯ではスポンサー(共同通信社)の推薦による出場枠が設けられており、今大会では神山雄一郎、村上博幸、竹内雄作の3人が選ばれている。
神山雄一郎は共同通信社杯を5回優勝の実績があり、43歳の今でもトップクラスの実力と人気を堅持、日本選手権の特選予選では武田豊樹を目標に勝ち星を挙げている。
村上博幸は昨年はやや低調だったが、今年1月の京都向日町記念では兄・義弘とワンツーを決めて地元記念を連覇、日本選手権でも2勝を挙げて復調気配だ。
竹内雄作は1月にS級に昇進したばかりの99期の新鋭だ。体格はやや小柄だが、各地のF1戦では徹底先行で善戦しており、ビッグ初出場となる今回も活躍が期待できる。
なお、共同通信社杯は昨年4月の共同通信社杯春一番と同様に一次予選、二次予選の勝ち上がりは自動番組編成で、初日特選レースはなく、初日の番組は選考順位によって編と成される。
共同通信社杯の思い出 |
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小野が7年ぶりのビッグV武田豊樹-飯嶋則之-岡田征 陽、友定祐己-岡部芳幸、松岡貴久-小野俊之、深谷知広-浅井康太の並びで周回。赤板から深谷がゆっくり上昇するが、武田がこれを突っ張りきって主導権を握る。最終3角から浅井が自力に転じて武田を捲り切り、浅井を追って松岡―小野が続く。ゴール寸前で中を鋭く伸びた小野が浅井を捕らえて優勝、浅井が2着、松岡が3着。共同通信社杯の思い出 優勝 小野俊之 11年10月10日決勝・松阪 |
クセがなくて張りやすい高速バンク |
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カントがきつめでスピードのある選手が有利
クセのない軽めの走路で、スピードの出やすい高速バンクとして有名だ。 周長は400m、最大カントは34度01分47秒、見なし直線距離は58.8m。年間を通してバック追い風の日が多いので、捲りは早めに仕掛けて、先行が追い風に乗ってペースを掴んでしまう前に捲り切ってしまうのが条件となる。直線ではとくに伸びるコースはないが、脚をためてきつめのカントをうくま回りきれれば、後方からでも大外を一気に突き抜けることもできる。 名古屋バンク |