レース展望

東西の王座を賭けた最後の戦い

  東日本大震災被災地支援・第11回東西王座戦(GII)が高知競輪場で開催される。東西の精鋭たちが火花を散らすが、近況の勢いから東王座は武田豊樹率いる関東、西王座は深谷知広率いる中部がやや優勢か。東西王座戦は今開催が最後となるが、ビッグ戦線の開幕を飾るにふさわしい激戦が期待される。

充実一途の武田豊樹が3連覇を狙う

武田豊樹 茨城・88期 武田豊樹は現在東王座戦を連覇中で、本大会との相性は抜群だ。昨年はGIの優勝こそなかったが、先行主体に前へ前へと積極的に攻めていく走りは多くのファンに感銘を与え続けた。年末のグランプリも2着に惜敗したが、巧みな組み立てで中団を確保しており、心技体ともに最高の状態にあるといっていい。過去2大会は平原康多を目標にしての優勝で、今回は残念ながら平原は不出場だが、それでも武田が主役の座を譲ることは決してないだろう。
  競輪祭のときと同様に武田との連係からワンツー決着を狙うのが長塚智広だ。グランプリではゴール前で落車、日本選手権決勝、オールスター決勝に続いての大一番での3度目の失格と不名誉な記録を作ってしまっただけに、汚名返上に賭ける意気込みは並々ならぬものがあるはずだ。

佐藤友和 岩手・88期 長塚と同様に本大会での巻き返しを誓って参戦してくるのが佐藤友和だ。グランプリでは一本棒の7番手から仕掛けきれずに終わっているだけに、今回は総力戦で優勝を目指してくるだろう。佐藤は昨年はビッグレースでの優勝はなかったが、どんな戦法でも器用にこなせる自在性をフルに発揮して4大会のGIで優出と大活躍だった。また武田と同様に東王座戦は07年、08年と連覇しており、本大会との相性もいい。
  北日本では渡邉一成のスピードも魅力的だ。今年はオリンピックでの活躍が期待されている渡邉だが、年末のナショナルチームカップでは世界レベルのスピードをまざまざと見せつけ、7番手からの捲りで後続を千切って圧勝、上がり11秒0の好タイムを叩きだしている。昨年は寛仁親王牌で決勝4着と健闘、東王座戦でも優出している。

松坂洋平 神奈川・89期 南関東は機動力の面で苦しい戦いが避けられそうにないが、昨年ブレイクした松坂洋平が北日本や関東の猛攻に対してどこまで抵抗してくれるかが見どころになる。近況の松坂は成績にムラがあり、グランプリシリーズのFIではいいところなしに終わったが、前場所の川崎FIを優勝しており調子は悪くない。11月の四日市記念決勝では稲垣裕之―村上義弘の2段駆けに対して7番手からの捲りで2着に突っ込んでおり、ツボにはまったときの破壊力はやはり侮れない。
  12月の佐世保記念で捲りの2連勝で準決勝まで勝ち上がった鈴木裕やヤンググランプリを制して勢いに乗る柴田竜史の走りにも注目したい。

グランプリラインの中部が強力だ

深谷知広 愛知・96期 西王座戦は超新星・深谷知広の先行力が絶対的な軸となり、近畿や九州の選手たちがいかに深谷を封じ込めるが見どころになる。
 深谷の昨年の活躍ぶりについては改めて述べるまでもないだろう。年末のグランプリでは早めの主導権取りで7着に終わったが、3番手を固めてくれた山口幸二の涙の最年長優勝達成には大きく貢献した。
  今回も深谷、山口、浅井康太のグランプリ戦士3人が出場予定なので、中部ラインはあまりにも強力だ。深谷が主導権を握ってしまえばラインでの上位独占の可能性は高いし、500バンクが舞台であっても、山口、浅井の援護を受ければ深谷の逃げ切り優勝も十分だ。
  近畿も機動力の面では中部に決して引けを取らない。グランプリ戦士は村上義弘ひとりだが、脇本雄太、川村晃司、藤木裕、松岡健介らの近況好調な自力型が出場予定で、うまく連係できれば中部勢を打ち破ることができるだろう。

村上義弘 京都・73期 村上義弘は昨年の前半戦は悲願のダービー王の称号を獲得したが、後半戦に入ってからは落車が続いてしまい、11月の四日市記念での優勝や競輪祭での優出はあったものの大一番のグランプリでは、最後の直線でまたもや落車の不運に見舞われてしまった。昨年からの悪い流れを断ち切るためにも本大会までにしっかりと立て直しを図ってくるだろうし、村上が魂の走りで近畿の若手を牽引していけば、中部ラインにも負けない強い絆が生まれることだろう。

松川高大 熊本・94期 九州では新鋭・松川高大が快進撃を続けている。10月の青森FIで完全優勝を達成して勢いに乗ると、11月の四日市記念では3連勝の勝ち上がりで優出、村上義弘、伏見俊昭、海老根恵太らのトップレーサーたちを倒しての3連勝だけにその価値は大きい。競輪祭でも優出こそならなかったが、2着、1着の勝ち上がりで準決勝へ駒を進めており、今回も中部や近畿の強力ラインを相手に金星を挙げてくれるシーンが期待できる。
  地元ファンの期待を背負って参戦するのが小倉竜二だ。四国からの参戦は小倉と溪飛雄馬の2人だけなので戦いは厳しいものになるだろうが、連係実績豊富な中国の三宅達也を目標に勝ち上がりを狙ってくるだろう。
  小倉はビッグレースの優勝からは遠ざかっているが、昨年は高松宮記念杯で優出と調子はまずまずだ。11月の観音寺記念決勝では深谷知広と村上義弘の叩き合いの間隙を縫って2着に突っ込んでおり、今回も中部と近畿が叩き合って混戦になれば小倉の出番が出てくるだろう。

語り継がれる名勝負 東王座戦の思い出

武田豊樹が捲りで連覇を達成

 海老根恵太―兵藤一也、平原康多―武田豊樹―神山雄一郎―飯嶋則之、新田祐大―渡邉一成―岡部芳幸の並びで周回。赤板前から新田が上昇して海老根を抑えるが、海老根は引かず、誘導後位で並走が続く。打鐘前に新田が誘導を交わして先頭に立つと、同時に平原も仕掛けて両者でもがき合いになる。先行争いは新田が勝利するが、武田が2角から自力に転じてスパート、3角で新田を捲り切り、そのまま後続を千切って優勝、海老根が2着、飯嶋が3着。
第10回 東王座戦 平成21年2月6日
優勝:(7)武田豊樹

第10回 東王座戦 平成21年2月6日

優勝:(7)武田豊樹

語り継がれる名勝負 西王座戦の思い出

兄の捲りに乗って村上博幸が初優勝

 小川勇介―園田匠、坂本亮馬―坂本健太郎、村上義弘―村上博幸、吉田敏洋―加藤慎平、最後尾に単騎の小嶋敬二の並びで周回。赤板前から吉田が上昇開始、赤板2角で誘導を下ろすが、打鐘で村上義が吉田を抑えると、坂本亮が8番手から一気にカマして主導権を奪う。3番手で立て直した村上義が捲っていくと、坂本健が3角で牽制してから番手から出ていく。村上博が坂本健に切り替え、ゴール寸前で捕えて優勝、坂本健が2着、加藤が3着に入線した。

第10回 東王座戦 平成21年2月6日
優勝:(1)村上博幸

第10回 東王座戦 平成21年2月6日

優勝:(1)村上博幸

高知競輪場500mバンク特性を知る

カントが緩く直線部分も短いお皿バンク
500バンクの割には先手ラインが健闘

 高知は丸いお皿のようなバンクで、コーナー部分が長くてカントが浅く、直線部分も短くなっている。
  脚質による有利・不利はとくになく、どんな戦法でも十分に力を発揮できるし、500バンクの中では最も直線が短く、カントも緩いため、先行選手も逃げ残りやすい。
  07年に開催されたオールスターの決まり手を見てみると、全59レースのうち1着は逃げが7回、捲りが14回、差しが38回、2着は逃げが3回、捲りが8回、差しが25回(同着1回を含む)、マークが24回となっている。
  さすがにトップスターが集うビッグレースでは先行での連絡みの数字が低くなっているが、それでも全59レースのうち先手ラインの選手が1着になったのが24回で、500バンクの割には先手ラインが健闘していた。
  捲りはカントが緩いのでバックまでに出切っていないと苦しい。また周囲を施設に囲まれていてホーム側で風が舞っていることが多く、捲り追い込みも500バンクにしては決まりにくくなっている。


 周長は500m、見なし直線距離は52.0m、最大カントは24度29分51秒。旧高知競輪場のバンクデータを基に設計され平成11年10月に完成した高知競輪場は、バンク内に陸上競技用の400mトラックが設置されており、競輪場兼陸上競技場となっている。通称は「りょうまスタジアム」。全国の競輪場の中で唯一、打鐘を知らせる合図に銅鑼が使われている。

高知バンク
高知バンク