今年は弱冠21歳の若武者・深谷知広が競輪界に新風を吹き込んだ。深谷は高松宮記念杯でデビュー最速GⅠ優勝の記録を打ち立てると、オールスター、共同通信社杯秋本番でも優出、今年のタイトル争いの中心には常に深谷がいた。もちろん、今年の総決算であるグランプリでもその構図は変わらない。おそらく深谷-浅井-山口で連係するであろう強力な中部ラインを武田や村上がいかに攻略するか、厳しくなるばかりの包囲網を深谷がいかに突破してくるかが最大の見どころになる。
浅井康太は高松宮記念杯を優勝した深谷に続いて寛仁親王牌でGⅠ初優勝を達成した。前受けから捲ってきた渡邉一成の番手に飛びついての差し切りと、自在戦法を得意とする浅井らしい勝利だった。その2カ月後のオールスターで浅井は再びタイトルを獲得、名実共にトップスターの仲間入りを果たした。
山口幸二は09年、10年と2年連続で次点に泣いてグランプリ出場を逃してきたが、今年は深谷と浅井の活躍に引っ張られ、獲得賞金ランキング3位の堂々たる成績で99年以来の出場を決めた。今年はまだ優勝はないが、深谷と浅井をしっかり援護して最後の最後での逆転一発を狙う。
村上義弘は日本選手権を優勝して念願のダービー王に輝いた。その後も高松宮記念杯で準優勝、全日本選抜で決勝3着と健闘しており、競輪祭でも連日の先行策で好調ぶりを見せつけていた。グランプリでは単騎戦となりそうだが、いつもと変わらぬ魂の走りで、昨年の村上博幸に続いての兄弟連覇を目指す。
3月の東日本大震災の影響で今年前半の北日本勢は苦しい戦いが続いたが、後半戦に入ってから震災によってより深くなった絆を武器に反撃を開始、見事グランプリに3人の選手を送り込んだ。グランプリではおそらく佐藤-伏見-成田の並びで結束、8月の全日本選抜でSSシリーズ風光る以来となる2年ぶりのGⅠ制覇を達成した伏見俊昭を司令塔として、「がんばろう東北」の熱い思いを胸に優勝を目指してくる。
佐藤友和は高松宮記念杯、寛仁親王牌、オールスター、競輪祭で優出と安定した成績を残してきた。競輪祭の決勝では完走さえすればグランプリ出場が確定するという状況だったにも関わらず、果敢に近畿ライン分断にいって勝負魂を見せつけていた。昨年のグランプリでは北日本勢を連れて先行して7着だったが、今年は勝てる走りに徹してくるだろう。
成田和也は獲得賞金ランキング9位でうれしいグランプリ初出場を決めた。SSシリーズ風光るでは山崎芳仁の先行を番手捲りした伏見俊昭を差し切って優勝と、ここでも北日本の絆の強さを見せつけていた。グランプリでも成田は3番手を固めそうだが、優勝のチャンスは十分にあるといえる。
武田豊樹は今年は東王座戦と共同通信社杯春一番を優勝している。GⅠの優勝はなかったが、共同通信社杯秋本番は3連勝の勝ち上がりで決勝4着、競輪祭も3連勝の勝ち上がりで準優勝と、秋口からは超がつくほどの絶好調モードに入っており、直近4カ月の勝率は5割7分を超えている。これはもちろん今回の9人の中ではトップの数字で、グランプリでもハイスピードの先行・捲りを見せつけてくれるだろう。
長塚智広は日本選手権では3連勝で勝ち上がりながら決勝で失格、オールスターでも決勝で失格と残念な結果が続いていたが、競輪祭では武田の捲りを差し切ってGⅠ初制覇を飾った。準決勝でも藤木裕-村上義弘の番手捲りを3番手から抜き去って1着を取っており、グランプリでも武田をしっかり援護しながらワンツーを狙う。