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INTERVIEW S級S班独占インタビュー

神山 雄一郎

トップを走り続ける神山選手ですが、スランプの時期はありましたか?

成績がふるわない時はありますし、人間なので身体の調子が良くない時はありますが、それをスランプとは感じていないですね。というよりも、「スランプ」という言葉に自分が逃げないようにしているところがあるかもしれません。結果がよくないことがあってもスランプだとは思わずに「何かが足りない」と考えるんですね。そしてすぐに問題点をみつけ、それを改善していくために行動する。なので、課題解決に力を入れる時期、というのはありますが、スランプの状態だとは認識していないです。そして、繰り返し同じ間違いをしないように気をつけています

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普段からあまり落ちこまないタイプなのでしょうか?

そうですね。多分もともと前向きなんだと思います。何かあってもポジティブに捉えがちです。もちろん、機械ではないから、負けて悔しいとか恥ずかしいという感情はあります。むしろ上の立場に立てば立つほど、悔しさや恥ずかしさは強くなっていると思います。でも、何かあった時にはそれを課題にして、自分の中で処理して次に繋げようと言う気持ちの方がすごく強い。ずっとそうやってきました。

前向きであるために、メンタルトレーニングに力を入れたりしているのですか?

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意識してメンタルトレーニングを取り入れることはないですね。競輪の世界では、大舞台の機会が多い。あるレースに向けてメンタルを鍛えてベストを目指しても、その次の月にはまた同じような大舞台があったりする。その度に、メンタルをいい状態に持っていこうと頑張るのは大変そうだなと思って。オリンピックだったら、4年に1度とか目標を絞って練習するということが有り得ると思いますが、競輪はそうじゃないですからね。僕は平常心を保つことを心がけるぐらいです。メンタルの波をコントロールし続けようとしたら大変だけど、平常心を維持することは比較的意識しやすいですからね。ビジネス社会においても、それは共通しているのではないでしょうか。

平常心を持ち続ける難しさもありそうですが、どのように意識していますか?

いい意味で、適当にやることじゃないですか(笑)。構え過ぎずに自然体でいることが一番。自然な状態で、力を発揮できることが一番ですよね。それで勝てればもちろんいいけど、勝つことだけにこだわるわけでもないんです。自分の中で「あのコースであのタイムが出せた」とか「あの状況で自分の力をすべて出し切れた」など、自分で納得できる基準を設けています。でも納得はするけど、満足するわけではない。ゴールした後に考えるのは、どうしたら次に優勝できるかとういうこと。例えば周囲の選手がいいタイムなら、それを抜かないと優勝できないから抜くためにはどうした方がいいのか。そうやって課題をみつけて、すぐそれに取り組むんです。次につなげないと素早く成長できない。のんびりしてたらどんどん歳をとってしまうからね。

デビュー後20年以上経った今も上位で活躍されている強さの秘訣はありますか?

気持ちを切らさないことですね。トップにのぼってからちょっとでも下がると、そのままどんどん落ちてしまったりする。成績も気持ちもね。落ちてきている自分を見せるのは恥ずかしいとかカッコ悪いとか思ってしまうから、頑張る姿も見せられなくなってしまう。最高地点にいた過去の自分と、今の自分を比べてしまっているんです。でもそれじゃダメですよね。過去とは比べず、今の自分にできる最高を目指す。そうすればまだまだやれることがあるんです。自分だって、過去に比べたら落ちている部分が確実にある。でも今の自分の最大限を目指そうと思っているんです。こういう気持ちでいられるのは、山口幸二選手がいることも大きいですね。同じ世代で頑張ってるヤツがいることが、今の俺にはとても大きいです。

戦法を変えるという挑戦もされていますね

僕は先行から追い込みという戦法に変えました。やはりモチベーションが変わってきますね。サラリーマンでいうなら、今までとまったく違う仕事に取り組んで頑張らなくちゃいけない、という状況。リスクもある。出来ないことを後輩に教えてもらわなくちゃいけない恥ずかしさもある。それを乗り越えるためには素直になるしかない。そして、プライドは捨てないけど、とりあえず置いておくことにしています。仲間や後輩に教えてもらう中で、やっつけられて恥ずかしかったり悔しい思いもする。でもその気持ちもとりあえず置いて、またトライする。その繰り返し。結局、繰り返し頑張るだけなんです。どこかで諦めたらどんどん弱っていくから、そうならないためにどうすべきかを考えて生き抜いていきたい。勝って生き残るためにはなんでもやってみます。そのためには戦法を変えて闘うのもひとつの戦略。ただ、頑張るけど頑張り過ぎないように、とも思います。挫折しない程度の頑張りを維持したいですね。

お話を伺っていると、振り返らず常に前を見ているのだなと感じます

そうですね。常に先を見ています。何年後かにはこういう動きができるようになりたい、と思って行動しているんです。体力的な問題である程度後退するのはしょうがないけど、その分、技術力でカバーして多少なりとも結果プラスになるようにしていきたいなと思っています。例えば、自分の課題として、ぺダリングはもう6年ぐらいずっと研究し続けている。そして最近、やっといい感覚を掴み始めました。まだまだ満足はしていないし、ずっとゴールはないと思う。でも、ぺダリングの技術を下げることは今後ないだろうし、まだ成長していけるという自信がついた。これからも探求し続けるだろうと思います。

そうやって先を考えている中、引退のことも頭の片隅には一応あります。必ずいつかは引退するものだからね。でも、いつ頃やめようとかは全く考えてないです。自分が完ぺきな状態でレースに臨んだのにまったくできなかった、という事があったら、その時は引退を具体的に考えるかもしれない。でもそんな時でも自分の中で「こうすれば勝てたかもしれない」という課題をみつけることさえできれば、諦めないで頑張り続けますね。

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神山 雄一郎選手・2011年のキーワード

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「力強さ」
ぺダリングなどを通して、力強さを身につけたいんです。それがすべてに通じると思う。その先に安定感や成績がついてくると信じています。精神的な力強さ、身体の力強さ、それらを身につけて進化し続けることを意識しながら頑張っています。