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INTERVIEW S級S班独占インタビュー

大塚 健一郎

自転車をはじめたきっかけは?

うちの母の実家が、師匠の山田文俊さんの家の隣だったんです。母の実家に帰った時に競輪選手と話す機会をもったことで、競輪の存在を知り、その時から少しずつ興味を持ち始めました。進路を考える頃の中学校の後半ぐらいですかね、競輪選手になろうって思い始めたのは。

うちでは、オヤジには「目的もなく高校には行かせられないぞ」と言われてたんです。「今やりたいことがなくて高校に行ってから見つけるくらいだったら、家の仕事手伝え」って言うんです。それで、自分でやりたいことは何かって必死で考えました。家の手伝いをする気はなかったんですよね。その時、以前自転車のおじちゃんが何か言ってたなって思いだして、競輪選手を目指そうと思いました。だから、競輪選手は職業として意識して選びました。

そこで自転車競技部がある高校を受験し、練習を始めました。当時自分にとって、その高校に行って選手になるというという選択肢しかありませんでした。

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自転車以外で夢中になったことは?

小学校では6年間野球をやってました。オヤジが、「こいつはほっとくと余計なことするから野球でもやらせておけ」的な感じで僕に野球をやらせたんですよね。でも楽しさ半分苦しさ半分でした。結局、中学に入学してからやめて、中学では遊ぶために(笑)陸上部に入りました。小学校時代の野球仲間はみんな続けて、やめたのは僕だけ。練習してうまくなることやレギュラーになることは嬉しかったんですけど、当時はとにかく遊びたかったんです。陸上部はそれほど厳しくなかったですからね(笑)。

自転車を始めてからご家族はどんな反応でしたか?

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両親は何も言いませんでした。特に、選手になってからはほとんど口を出さないようになってきましたね。お酒を飲んでる時にはいろいろと言ってきたりもしますけど、その時は酔ってると思って聞き流してます。僕もお酒を飲むのは大好きなんですけど、普段は敢えてあまり一緒に飲まないようにしてるんですよ。親が飲んでる時は、自分は飲まないようにしたりして。というのも、家族と一緒に飲むとケンカになっちゃうんです。お互いに飲んで酔っ払うと、言いたい事を言い合ってヒートアップしちゃうんですよね。酔い方が似てるんです(笑)。酔ってない時も、改めて家族と話をする時間はほとんどないです。でも、両親に感謝はしてます。普段は何もしないけど、何かあった時は僕が支えようって思ってるんです。

自転車を始めて苦労したことはありましたか?

職業として考えていたので、すべて前向きに捉えていました。でも、プロをめざすのは厳しいなぁっていうのは感じましたよね。それでもとにかく、競輪選手になるんだっていう目標のために我慢もしたし、全てが自分のためになるって思って取り組みました。

そのときの師匠(山田文俊選手)には本当に感謝しています。自分が競輪選手を目指した時に大変お世話になりました。当時の自分は本当にダメなヤツで、もし自分が同じ立場だったら同じように出来なかったでしょうし。今でも尊敬する師匠です。

ただ、競輪学校に入る前は辛かったですね。競輪学校の入学試験は4回目でやっと合格したんです。何度も落ちて、果たしてプロになれるのかなっていう時期が本当に辛かったですね。だから、競輪学校の試験に合格してからは、もうよっぽどのことがなければプロになれるって思って、精神的にだいぶ楽になりました。競輪学校入学後も怒られたり、集団生活の大変さはありましたけど、そういうのは流れに身を任せてうまくこなしてました。

競輪学校時代、苦労を共にした同期は今も一番身近なライバルです。同期がレースに出てると、自然に注目したりしてますね。やっぱり、どうしても意識する相手だと思います。同期の兵藤(一也選手)など、ライバルでもあり刺激し合える仲間。彼も淡々としてて(笑)、お互いマイペースで過ごせる相手ですね。

プロデビュー後を振り返っていかがですか?

自分が思っていた以上に順調だったと思いますね。ただ、怪我やいろいろなアクシデントはちょっときつかった。自分が動きたくても動けない時が精神的につらかったですね。でも挫折感っていうのはそれほど感じないです。ある程度、自分の中で常に挑戦する気持ちを持ち続けるようにしているんです。だから歯痒さを感じることはあってもそれで終わらず、そこからどうするかというところに気持ちを持っていって楽しむようにしています。その時の流れに任せてみる。そうしていると、それほど落ち込まないです。あとから、もっと意識を高くもっていればよかったかなあと思う事はあります。でも、あとから振り返っても楽しんでやれたことの方を思いだすんです。その記憶が今につながって、また頑張ろうと思える。仕事で苦しいのは当たり前だと思わないとやっていけないと思うんです。苦労して練習してきて、選手になれるかなれないかわからない時期がとにかく苦しかった。だからそれに比べれば今は本当に、選手としてやれてる事が嬉しいんです。だから、引退なんて考えたこともありません。自転車を取り上げられそうになっても失いたくない。競輪選手として、好きなことを仕事にしている幸せを感じています。

S級S班に選出されてからはどうですか?

階段を一歩一歩上がってきてるとは思うので、凄く嬉しいです。でもそこで満足するというのではないかな、と。今まで目指してきたところにきて、正直精神的にキツイしプレッシャーもあります。でも、とにかくやるしかない。「トップとしてのプレッシャーだなんていい悩みじゃないですか」って弟子に言われた時に気がついたんです。プレッシャーに負けてしまってはそれぐらいの選手だったってことだろうし。楽しむって言い方はおかしいかもしれないですけど、自分の中ではプレッシャーを重荷に感じることなく、改めて目標を立てて頑張っていこうと思っています。そう思うようになって、気分もちょっと楽になりましたね。自分のできるパフォーマンスは、とにかく努力すること。やることは以前から変わらないので、今まで通りぶれずにコツコツ頑張っていこうと思います。目指すはGIのタイトルです。

大塚 健一郎選手・2011年のキーワード

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「再起」
今年前半は怪我が多かったので、とにかくゼロからの再起。怪我をしてゼロになってしまったかもしれないけど、自分の出発点から改めてスタートできると思って前向きに取り組んでいこうと思っています。ここからの頑張りが大切だし、その結果もちゃんと見せていきたい。今の目標は、GIタイトルのみ。プロセスや足場をきちんと固めてそのタイトルを掴みたい。それだけですね。