最初は、「同期の神山くんに追いつこう、負けたくない」という気持ちで走ってきました。その後は、中野浩一さんや滝澤正光さんなど強い先輩方とレースで戦わなくてはならないので、彼らに勝つにはどうしたらよいのかを常に考えていましたね。強い選手と戦い、自分が勝つためには何が必要かを考えて目標を立ててきたことが支えでもあり、プラスになっているのかもしれません。今の自分がここにいられるのは、強さに引っ張られて、強くなってきたことが大きいと思います。
競輪選手になりたいという夢が実現して、プロデビューをすることができました。そこからが本当の始まりで、選手として強くなってS級に昇格したい、特別競輪で走りたい、特別競輪で優勝したいという新たな目標が次々と出てくる。目標があるからこそ、努力することができるんです。
たとえば、優勝したかったら努力をすることは当たり前です。強い選手が出場するレースで優勝するためには、ひたすら練習するしかないですし、そのための努力は必要不可欠で苦にはなりません。何もしないで勝てる選手なんていないですからね。だからこそ、目標があるうちは、自分を維持しながら強い気持ちでレースにも臨むことができるし、結果も出せる。もっと強くなりたいし、まだまだ強くなれるはずなんです。
反対に僕が恐れているのは、目標を見失ってしまったときのことですね。もし、それがなくなってしまったら気持ちも弱くなり、ダラダラとした選手生活を送ってしまいそうな気がしています。
馬主も経営者も、競輪選手になれたおかげでできたことです。道楽のように思われるかもしれませんが、決してそんなことはなく、それぞれに共通項もあり、僕の中ではすべてを真面目にやっているつもりです。
馬主は、馬好きが高じて牧場を巡って馬や人と触れ合うことで決めたことですが、中央競馬会の馬主登録は審査基準も厳しくて、生半可な気持ちでなれるものではありません。想像以上に大変なことで、いろいろ勉強しながら真剣に取り組んでいますが、やはり馬主はステータスシンボルですからね。競輪選手でも馬主になれるというアピールもありますし、本業をがんばろうという気持ちにもなります。
経営者としては学んだことも多く、自分本位ではなく、お客さまが喜ぶサービスを提供する必要があるということを知りました。経営は人を動かし、売り上げを上げて、お客さまが喜んでくれる状況を生み出さなくてはいけないわけですから、サービスの奥深さと難しさを痛感していますね。
一人でも多くのお客さまにレースを見ていただき、楽しんでもらいたいという気持ちは、競輪にもつながっている。そのために僕たち選手ができることは、朝から晩まできっちり練習をして、レースで結果を残すしかないのです。
S級S班になれたことで、自分自身が変わらないとだめだし、変わるべきだと僕は思っています。以前、KEIRINグランプリで優勝したときに、真っ赤なグランプリジャージを着たことがあるのですが、負けられないという気持ちでレースを戦っていました。だって、トップ中のトップ選手であり、横綱なんですよ。どんなレースでも正々堂々と戦い、下手な駆け引きをするくらいなら、勝負を受けて立つべきですよね。赤いパンツを履くのは強さの証明でもあるわけですから、勝ちにいくというのが真情です。